【残業代】【労働災害】長時間労働で脳梗塞を発症した被災者が会社からは残業代、損害賠償金を回収し、国(労働基準監督)からは労災保険給付金の増額を勝ち取った事例
若月 彰
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
プログラミングの仕事で毎月100時間を超える時間外労働に従事した結果、脳梗塞を発症してしまいました。
労災申請は既に被災者自身で行ったので、残業代請求のみを弁護士に依頼したいとのことでした。
給与明細を見ると基本給(13万円)の他に固定残業代(15万円から20万円へ毎年少しずつ増加)が支払われていました。
【相談後】
結果的に、①残業代請求訴訟、②損害賠償請求訴訟、③行政処分取消訴訟の3つの訴訟を次々に提起しました。
①残業代請求訴訟
裁判所は、毎年定期的に固定残業代が昇給していることから、会社は固定残業代の項目で定期昇給させていた、定期昇給となると固定残業代は時間外労働の対価ではなく通常賃金に該当すると心証を開示しました。裁判所の心証に従い、被告会社とは500万円で和解することになりました。
②損害賠償請求訴訟
被災者は休業して療養してきましたが、後遺障害等級9級の後遺症が残りました。
休業したことによる損害や後遺症が残ったことによる損害は、脳梗塞になる前の収入を基礎に算出します。
訴訟では、収入を「基本給+固定残業代」のみとするのか、「基本給+固定残業代+追加で支払われるべき残業代」とするのかが争点となりました。
裁判所は「基本給+固定残業代+追加で支払われるべき残業代の一部」を減収前の収入と認定し、2000万円の支払いを命じました。
③行政処分取消訴訟
労働基準監督署は、脳梗塞について労災認定をしましたが、保険給付金については、裁判所とは異なり、「基本給+固定残業代」を基礎に支給しました。
そこで、「基本給+固定残業代+追加で支払われるべき残業代」を基礎に保険給付金を計算し直せという訴訟を提起しました。
裁判所は、①事件と同様に固定残業代は時間外労働の対価ではなく通常賃金に該当すると心証を開示しました。
これを受け、国(労働基準監督署)が処分を見直し、既に支払われた保険給付金に追加で約700万円の保険給付金が支払われることになりました。
【弁護士のコメント】
長時間労働で脳・心臓疾患や精神障害を患った方に固定残業代が支払われていることがあります。
労働基準監督署は固定残業代は有効であるとして保険給付することが多く、そうなると、③のような訴訟で争う必要があります。
弁護士が労災申請段階から関与すれば、裁判所に提出したのと同レベルと意見書を労働基準監督署へ提出して、「基本給+固定残業代+追加で支払われるべき残業代」を基礎に保険給付金を計算するよう促すことが可能です。これは絶対ではありませんが、③の訴訟を提起する手間を省ける可能性が高まります。
固定残業代の有効無効は残業代請求の金額のみならず、損害賠償の金額にも、労災から支給される保険給付金にも影響します。このように多方面に波及する問題に的確に対応するのが簡単なことではなりません。労働問題専門の弁護士へご相談下さい。