社会的な評価を低下させるとは?
社会的評価を低下させる、とは具体的にどのようなことでしょうか?例えば
「〇〇という行動をするなんて、Aはまるで犯罪者のようで、見ているだけでもどうかと思う」
という文が投稿されたとします。
仮にAが顔を出さない、本名でもない形で活動している方の場合、社会的評価を低下させる投稿に当てはまるのでしょうか? そもそも本人が見なければ、当てはまらないのでしょうか?
また、上記の投稿をAに対して直接送ったり、Twitterなど不特定多数が目に見える範囲で投稿するのと、元々アンチコメントなどが多い掲示板に投稿するのとでは何か違いがあるのでしょうか?
>仮にAが顔を出さない、本名でもない形で活動している方の場合、社会的評価を低下させる投稿に当てはまるのでしょうか? そもそも本人が見なければ、当てはまらないの>でしょうか?
まだ裁判例上それほど明確ではありません。Aの活動が特定人と結びついていると一般的に評価できる場合は社会的評価を低下させる投稿に当たり得ますが(理論的には別の問題で、これは同定可能性の問題と言われます)、そうでなければ特定人の社会的評価を低下させるとは言えないとされているようです。
また、本人が見ているかどうかは、社会的評価の低下の問題にも、同定可能性の問題にも関係ありません。
>また、上記の投稿をAに対して直接送ったり、Twitterなど不特定多数が目に見える範囲で投稿するのと、元々アンチコメントなどが多い掲示板に投稿するのとでは何か違いがあるのでしょうか?
違いはあります。基本的に不特定・多数人が目に触れる可能性がある状態に置かれないと、社会的評価の低下があるとされません。だから直接送った場合、社会的評価の低下があるとは普通されません。
ツイッターの場合とアンチコメントが多い掲示板で投稿する場合、理論的には社会的評価の低下の度合いに差があるはずですが、裁判例はあまりそこを区別していないように見受けられます。
仮にAが顔を出さない、本名でもない形で活動している方の場合、社会的評価を低下させる投稿に当てはまるのでしょうか? そもそも本人が見なければ、当てはまらないのでしょうか?
→社会的評価を低下させる、というのは、示された事実が社会的評価を低下させるに足りるということです。「〇〇という行動をするなんて、Aはまるで犯罪者のようで、見ているだけでもどうかと思う」という記事であれば、「〇〇という行動をする」という部分が事実摘示にあたりますので、これが対象者の社会的評価を低下させるに足りるかどうかが問題となります。「Aはまるで犯罪者のようで、」の部分は、事実を前提とした評価の部分なので、社会的評価を低下させるに足りるかどうかが問題となるというより、名誉感情を侵害するかどうかとか、侮辱になるかどうかとかが、問題となるでしょう。
「Aが顔を出さない、本名でもない形で活動している方」であれば、そもそも、低下させる対象としての社会的評価が観念できず、何か事実を示しても社会的評価の低下も観念できない可能性もあるでしょう。一方で、Aが、筆名を利用して社会的又は経済的活動を行なっている場合、その筆名に社会的評価が観念できる場合があり、その筆名の人に対して、社会的評価を低下させるに足りる事実を示したのであれば、名誉毀損(または名誉権侵害)が成立する可能性があるでしょう。
本人が見る、見ないは関係がありません。
また、上記の投稿をAに対して直接送ったり、Twitterなど不特定多数が目に見える範囲で投稿するのと、元々アンチコメントなどが多い掲示板に投稿するのとでは何か違いがあるのでしょうか?
→掲示板であれSNSであれリプライ欄であれ、不特定又は多数が閲覧できる場所で投稿されたものであれば、名誉毀損における公然性の要件が満たされることとなるでしょう。
お二人ともお答えいただき、ありがとうございます。
上記内容をもとに開示請求や民事訴訟するかどうかに関しては、相手方次第と思われますが、実際この内容で社会的な評価を低下させた、また、名誉感情を傷つけた、侮辱にあたるかどうかに関しては、どのように調べるのでしょうか?
上記内容をもとに開示請求や民事訴訟するかどうかに関しては、相手方次第と思われますが、実際この内容で社会的な評価を低下させた、また、名誉感情を傷つけた、侮辱にあたるかどうかに関しては、どのように調べるのでしょうか?
→裁判官の判断となります。過去の裁判例も参考にされるでしょう。
ありがとうございます。
再度質問させていただきたいです。
上記の「〇〇という行動をするなんて、Aはまるで犯罪者のようで、見ているだけでもどうかと思う」という投稿が、それ単体で突然投稿されたものなのか、それとも直前の投稿の流れや全体の投稿の流れの中で出されたものなのかで、名誉毀損や名誉感情侵害、侮辱罪にあたるかどうかと変わるのでしょうか?
変わります。そもそも誰に向けられたものであるかを判断する際の資料となります(本件ではAと明示されているのでこの点は関係ないでしょう)。また、スレッドの流れとして、既に〇〇がずっと話題になっていたのであれば、「〇〇という行動をするなんて」と記載したとしてもそれがそもそも社会的評価を低下させるに足りるのか疑問であるという方向の解釈にも繋がる可能性があるでしょう。
ありがとうございます。
〇〇という行為が比喩表現だとしたら、また変わるのでしょうか?
例えば、元々は「人を騙す奴なんて思わなかった」「嘘ついてまで友人に飯をおごってほしいのか」という批判の流れに続き、「詐欺に近い行動するなんて、犯罪者のようだ」と投稿した場合です。
また、自身の投稿その1回以降、それ以外の方が「Aは詐欺をしている」という誹謗中傷が定着してしまった場合は自身も罪に問われることになるのでしょうか?
〇〇という行為が比喩表現だとしたら、また変わるのでしょうか?
例えば、元々は「人を騙す奴なんて思わなかった」「嘘ついてまで友人に飯をおごってほしいのか」という批判の流れに続き、「詐欺に近い行動するなんて、犯罪者のようだ」と投稿した場合です。
→裁判官の判断と言わざるを得ないでしょう。
一般論として、比喩表現であってそれが純粋に侮辱行為なのであれば侮辱や名誉感情侵害の問題でしょうし、比喩表現に見えるがよく読むと社会的評価の低下につながる事実の存在を前提としているのであれば、名誉毀損や名誉権侵害の問題となるでしょう。
自身の投稿その1回以降、それ以外の方が「Aは詐欺をしている」という誹謗中傷が定着してしまった場合は自身も罪に問われることになるのでしょうか?
→結果として定着したしないというのはあまり関係がなく、あくまで投稿時を基準に全て判断されるものです。
ありがとうございます。
不法行為として取り上げられたとしても、投稿された経緯や社会的な評価を低下させたかどうかの根拠のある理由があるうえで、裁判官の判断に任せるということなんですね。
何度も質問に答えていただき、ありがとうございました。