普通借家から定期借家への切り替え及び、賃料値上げについて
現在普通借家の家に数年住んでおり、2月末更新なのですが、先日(11月初旬)オーナーが使用したいため更新をしないで退居してほしいと、仲介業者のケン・コーポレーションから連絡がきました。
契約書には6か月前の通知とあり、また、子供の学校の都合などですぐに対応出来ない状況だとお伝えしたところ、「次回の更新から半年間の定期借家契約に切り替え、更新料は不要で、月額賃料を5万値上げ」と提示してきました。
借りてる側も守られる制度があるかと思いますが、上記のような提案は違法にはあたりませんか?
引っ越しにあたって費用もかかること、子供の通学範囲などすぐに条件にあった物件が見つかるかわからず、とても困っています。
お力お借り出来ますと幸いです。
借地借家法に基づき対抗できる可能性が高いです。
おそらくご自身だけで対抗することが難しいと思いますので、ぜひ具体的な事情をお話ししたうえで弁護士に相談してください。
匿名A様
素早いご回答をありがとうございます。
このような条件提示は通常よくあるものなのでしょうか。
普通借家から定期借家に合意なく切り替えることは違法と認識しておりますが、このように更新料不要で月額料金を上げるなど通る話なのでしょうか。
逆に、退居を拒否した場合、今後どのような問題が起きるかご教示頂けたらと思います。
1 賃貸借の更新について
借地借家法という法律で建物賃貸借契約の更新拒絶の要件が定められています。
①期間満了の六月前までに更新拒絶通知
②また、更新拒絶の通知には、正当の事由が認められる必要があります。この正当の事由は、賃貸人の建物使用を必要とする事情•賃借人の建物使用を必要とする事情のほか、従前の経過,建物の利用状況,建物の現況,いわゆる立退料の申出を考慮して判断するものとされています。
③更新拒絶通知がされた場合でも、賃貸借期間満了満了後も賃借人が建物の使用を継続する場合には、賃借人に対し遅滞なく異議を述べる
大家側(賃貸人側)に正当の事由が認めらるか疑問のあるご事案かと思います。更新拒絶に正当の事由がない場合、大家側(賃貸人側)が、更新の予定されている普通賃貸借契約から更新のない定期借家契約に一方的に切り替えることはできません。ただし、正当の事由がない場合でも、賃借人側の同意があれば、定期借家契約への切り替えも可能です。そのため、仲介会社側は、何とか、賃借人側(あなた側)から同意を取り付けようとしているものと思われます。
(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
2 賃料の増額請求について
次に、賃料の増額請求は理由もなしに一方的に行うことはできません。賃料の増額請求が認められる事情については、借地借家法で以下のように定められています。賃貸人側と賃借人側で見解に対立がある場合には、調停や裁判を経る必要があります(なお、賃貸借契約書に賃料の増額に関する定めがあるかもしれませんので、賃貸借契約書の確認もしてみて下さい)。
(借賃増減請求権)
第32条
1 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3 おわりに
いずれにしても、お子様の通学のこと等もあるかと思いますので、賃貸借契約書等を持参の上、弁護士に直接相談された方がよろしい事案かと思います(この掲示板での簡易な相談と回答の守備範囲を超えたご相談のように思われますので)。