突然の家賃値上げ。協議も合意もなしに支払わなければダメでしょうか?
1年前に今の賃貸マンションに引っ越してきたのですが、「家賃を10%賃上げしたいので覚書に押印し返送しろ」という連絡が貸主(の代行業者)から来ました。
ここ1年での物価・類似物件価格の上昇を見ても納得感がなかったので協議を持ちかけたものの受け入れてもらえず、「覚書を返送しなくても賃上げ後の家賃を請求する」と言い渡された状況です。
賃貸の契約書には「家賃を変更は貸主・借主間の合意の上で行う」とあるので契約違反だと思うのですが、賃上げ後の家賃を支払うしかないのでしょうか...
家主の主張は認めらえませんね、従前どおりの家賃を支払い続ければ大丈夫です。
なお、家主から強制的に賃料を上げるためには賃料増額請求訴訟というものを提起する必要がありますがこれも簡単には認められません。
一方的な貸主ですね。匿名A弁護士先生の回答のように、これまでの賃料を支払い続けることで問題ありません。
補足しますと、法律上(借地借家法32条)、賃料が土地・建物の価格の上昇などの経済事情の変動や、近隣の同種建物の賃料と比較して「不相当となったとき」は、「契約条件にかかわらず」、当事者は賃料の増減を請求できる、とされています。
「不相当」かどうかは、貸主から、近隣相場の上昇を示す同種賃貸物件の根拠資料などを提示してもらわないと判断できませんよね。ご相談者様のケースでは、こうした資料が示されていないと思われることと、10%が相当がどうかが分からないので、「不相当」という判断ができないから賃料増額には応じないという主張ができます。
なお、賃貸借契約書には「家賃の変更は貸主・借主間の合意の上で行う」という特約があるとのことですが、最高裁判例(S56.4.20)では、このような特約があっても協議を経ない増額請求も有効とされているため(本当に賃料が不相当であれば特約に拘束されるのは不合理だからという考え方です。「契約条件にかかわらず」とはそういう意味です。)、契約違反だから増額には応じないという理論ではなく、上記のとおり、「不相当」かどうかが判断できないから、という理論になると思います。
そして、法律上、増額協議が整わない場合、増額を正当とする判決が確定するまでは相当な賃料(※現在の賃料)を支払えば足りる、とされています。
もし、貸主が「現在の賃料なら受け取らない」などと言った場合は、最寄りの法務局に現在の賃料を供託してください。賃料を支払わないと契約が解除される可能性がありますので、注意が必要です。
みなさまご回答ありがとうございます。
>法律上、増額協議が整わない場合、増額を正当とする判決が確定するまでは相当な賃料(※現在の賃料)を支払えば足りる
こちらですが、仮に「増額を正当とする判決」が確定した場合、賃料の増額分を遡って請求されるのでしょうか...?
追加のご質問に回答します。
仮に「増額を正当とする判決」が確定した場合、支払っていなかった賃料の増額分に年1割の支払期後の利息を付して支払わなければならない、というのが法律上のルールです(借地借家法32条2項)。