相手方より申し立てられた遺産分割調停において要望通りに金融資産を取得する旨の調停を成立させることができた事例
堀井 実
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
相談者のお母様が亡くなりましたが、兄弟間での遺産分割協議がまとまらず、弟様より遺産分割審判を申し立てられました。審判を申し立てられた裁判所は、亡くなられたお母様の最終の住所地ではありましたが、相談者の住所地とは異なる県の裁判所でした。
また、相手方は、お母様の不動産の一部について、相談者が取得すべきである旨を主張していました。
審判を申し立てられた後に、ご相談者様から、ウェブサイトを通じてご依頼をいただき、私が代理人として審判、調停に対応することになりました。
【相談後】
相手方である弟様は弁護士を代理人として亡くなられたお母様の住所地を管轄する家庭裁判所に審判を申し立てていましたが、これは調停に付されたときに自らの住所地に近い裁判所で手続が行われることを目的とするものであることは明白でした。
私は、裁判所に対し、相手方が自らの住所地に近い裁判所を狙って審判を申し立ててきたものであること、調停の原則通りに、申し立てられたご相談者様の住所地を管轄する裁判所で審理されるのが相当である旨の移送の意見書を提出し、裁判所を説得したところ、ご相談者様の住所地の家庭裁判所に事件が移送され、そこで調停が行われることになりました。調停では、相手方が、ご相談者様に不動産の一部を相続するのが相当であるという意見を述べていましたが、相手方の方が当該不動産には近い場所に住んでおり、家を継ぐ約束もしていたことなどを主張し、最終的にはご相談者様の希望通りに、不動産ではなく、法定相続分に相当する金融資産を取得するという調停を成立させることができました。
【コメント】
遺産分割調停における裁判所は原則として調停を申し立てられた側(専門用語で「相手方」といいます)の住所地を管轄する裁判所になります。
ところが、調停ではなく審判は、亡くなった被相続人の住所地を管轄する裁判所に申し立てることができます。
調停を経ることなく申し立てられた審判は、裁判所によって調停に付されるところ、本件においては、相手方が自分の住所地に近い場所で遺産分割調停を進めようとして、最初に管轄のある裁判所に遺産分割審判を申し立てたことは明白でした。
ご相談者の方が、弁護士に相談しなければ、自分の住所地よりもかなり遠い裁判所に毎回赴かなければならない事態に追い込まれるところでした(なお、新しく制定された家事事件手続法においては電話会議という手段で裁判所に赴くことなく調停に出席することもできます)。
弁護士に依頼したことで、相談者の近くの住所地を管轄する裁判所に事件が移送され、遠くの裁判所に赴かなければならないとう負担はなくなりました。
不動産の価格が右肩上がりのバブル期であればともかく、一部の地域を除いて地価が徐々に下落している現在では、遺産分割においては、不動産よりも換価しやすい金融資産の取得を希望される方がほとんどです。
誰がどの遺産を取得するのかについては、まずは相続人の希望を聞き、それが一致せず、審判まで手続が進めば、裁判所が決定することになりますが、今回の場合は、相手方の方が不動産全てに近い住所地に住んでおり、審判になった場合には不動産は相手方所有とされる可能性が高いことをアピールし、ご相談者が希望するとおり、不動産は相手方に取得させ、ご相談者は金融資産を取得するとの調停を成立させることができ、ご相談者に喜んでいただくことができました。