精神科への通院履歴はないものの長時間労働等が原因で自殺した夫の労災が認定され、会社への損害賠償を行った事例。 同時に、生前の残業代の請求も行った事例。
中川 匡亮
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
毎日帰りが遅く、土曜も仕事をしていたご主人が、会社内で首を吊って亡くなってしまいました。お亡くなりになったご主人は生前に精神科に通院している履歴はなく、精神疾患を発病していたか、不明でした。会社には、労働時間の管理シートこそあるものの、ご主人の正確な労働時間を反映したものではなく、実態よりも短い労働時間が記録されていました。ご主人は、毎日奥さんに仕事が終わったときにLINEをしていました。相談前の段階でご遺族が労災申請をしていましたが、結果が出る前の段階でした。
【相談後】
ご主人のLINEを基に、実態に即した労働時間を計算し、過労死基準を上回る残業が存在する旨の意見書を作成し、労基署に提出をしました。
また、ご主人には通院の履歴がなかったので、奥様からご主人の様子の変化などを聴き取り、過労自殺の原因となる精神障害に発病していた旨の主張も意見書の中に盛り込みました。
その結果、無事に労災が認定されました。
意見書作成と同時に、会社に対して、生前の残業代の請求をしていましたが、労基署が認定した残業時間を基にした未払残業代を支払う旨の示談が成立しました。
この残業代に関する示談成立を労基署に報告し、遺族補償給付の金額を増額する旨の決定を受けました。
さらに、その後、会社に対して、労働者を過労死させことについての安全配慮義務に基づく損害賠償を請求し、約5400万円の解決金を払う旨の示談が成立しました。
これとは別に、会社が入っていた使用者賠償責任保険から2000万円がご遺族に支給されています。
【コメント】
ご主人が送っていたLINEが長時間労働の立証の決め手になりました。これが労災認定、残業代支給の決め手にもなりました。
生前の残業代の支給を受けた場合には、本件のように、労基署に報告をすることが重要です。
労災認定がされた場合に支給される遺族補償給付の算定基礎となる給付基礎日額には、残業代も含まれるため、増額決定を受けることができるからです。
会社に対する損害賠償については、既に支給されている遺族補償年金や遺族厚生年金等は、賠償額から差し引かれてしまいます(損益相殺といいます。)。
一方、将来支給される未支給分については、賠償額から引かれません。
そのため、会社との間で、賠償額等に大きな争いがないのであれば、できる限り早期の解決を図るべきです。