販売後の食品の品質保証責任はどこまでですか

食品製造業をしています。
魚の総菜を真空パックで常温保管90日の賞味期限で販売しています。
通販では、「商品到着時の検品のお願い」と「不具合があった場合は到着から7日間以内に連絡をしてくれれば交換する」旨の説明書きをサイトに掲載しています。

11月に通販で購入したお客様から、1月中旬に「中身が変質している」と交換の要請がありました。
現物はお客様側で捨ててしまったとのことで原因は特定できていませんが、「開封時に真空パックの袋が緩んでいた、パンパンに膨れたりはしていない」とのお客様の説明から、購入後のお客様保管中に、真空パックにピンホール等の小さな穴が開き、真空状態ではなくなったことで普通の空気が侵入し、中身が腐敗したものかと思われます。(出荷時に真空状態になっているかの確認は弊社出荷担当が箱詰めする際に1個1個の商品を目視と触診で確認しているので、出荷時は問題なかったと考えていますが、目視&触診での確認漏れの可能性もなくはないです)
ピンホールは、中身の魚の骨や鰭が袋を突いて空いてしまうこともあり(=商品自体に原因がある)、一方でお客様が雑な保管をしたり想定外に冷凍保存したり飼い猫が引っ搔いたなどで空いてしまうこともあり(=お客様側の保管方法に原因がある)、現物を直接確認しない限り、何が原因かわからないことが多いです。
この原因が特定できないという場合は、法的な責任は製造者にありますか?保管者であるお客様にありますか?
代金を受け取り商品を手渡した時点で、商品の所有権はお客様に移転し、商品を適切に保管する責任はお客様側にあると考えましたが、一方で、製造物責任(PL法)とかの法律があることを思うと賞味期限内の品質保証責任は製造メーカーにあるような気もします(そう考えているお客様が多いです)。

原因が特定できない場合の、商品変質の法的責任は誰が負うのか教えてください。
「お客様は神様だからクレームが来たらすべて自主的に交換に応じるべき」というマーケティング的な視点は除いて、純粋に法的にはどう考えるべきかという点でご教示ください。
ちなみに本件は、すみやかに新品交換をしてお客様対応は完了しています。今後のために法的見解を知りたいものです。

この掲示板では回答に限度があるため、以下の消費者庁のサイトを参考になさるとよいかと思います(関係しそうな箇所をいくつか指摘しておきます)。

【参考】消費者庁サイト「製造物責任法の概要Q&A」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/other/pl_qa.html#q10

「Q1 製造物責任(PL)法とは、どのような法律ですか。A この法律は、製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定した法律です。この法律は、不法行為責任(民法第709条)の特則であり、不法行為責任に基づく損害賠償請求の場合には、加害者の過失を立証しなければならないところ、製造物責任については、製造物の欠陥を立証することが求められます。」

「Q3 この法律の対象となる製造物とはどのようなものですか。A この法律では、製造物を「製造又は加工された動産」と定義しています(本法第2条第1項)。人為的な操作や処理が加えられ、引き渡された動産を対象としており、このため、不動産、電気、ソフトウェア、未加工農林畜水産物などは、この法律の対象にはなりません。」

「Q19 この法律により損害賠償を請求することができるのはどのような場合ですか。A この法律により損害賠償を請求することができるのは、製造物の欠陥によって、人の生命、身体に被害をもたらした場合や、欠陥のある製造物以外の財産に損害が発生したとき(拡大損害が生じたとき)です。このため、欠陥による被害が、その製造物自体の損害にとどまった場合(例えば、走行中の自動二輪車から煙が上がり走行不能となったが、当該自動二輪車以外には人的又は物的被害が生じなかった場合)は、この法律の対象になりません。このような損害については、民法に基づく不法行為責任、契約不適合責任、債務不履行責任等の要件を満たす場合には、被害者はそれぞれの責任を追及することができます。」

続きです。

「Q20 この法律は免責についての規定はありますか。A 本法第4条は、本法第3条により製造業者等が製造物責任を負う場合に、当該製造業者等が一定の事項を立証することによって、賠償責任が免責されることを規定しています。
具体的な免責事由として、次の2つを規定しています。
【1】製造物を引き渡した時点における科学・技術知識の水準によっては、欠陥があることを認識することが不可能であったこと(本法第4条第1号、開発危険の抗弁)
【2】部品・原材料の欠陥が、専ら当該部品・原材料を組み込んだ他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示のみに起因し、欠陥の発生について過失がなかったこと(本法第4条第2号、部品・原材料製造業者の抗弁)」

「Q21 この法律により損害賠償請求をすることができる期間について規定はありますか。A この法律による損害賠償請求権は、原則として、損害及び賠償義務者を知った時から3年間行使しないとき、又は、製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年を経過したときは、時効によって消滅します(本法第5条第1項)。なお、人の生命又は身体を侵害した場合(本法第5条第2項)や製造物の使用開始後一定の期間の経過後に損害を生じる場合(本法第5条第3項)については、特則があります。」

「Q22 この法律の長期の消滅時効は、製造物を引き渡してから10年とされていますが、それは消費者の手に渡ってから10年ということですか。A この法律では、長期の消滅時効の起算点を、消費者の手に渡った時ではなく、製造業者等が製造物を引き渡した時、すなわち、製造物を流通させた時から10年としています。」

「Q25 製造業者の製品保証について教えてください。A 製造業者による製品保証は、製造業者が自主的に行っているものであり、保証の有無・期間について、この法律において規定されているものではありません。また、製造業者による製品保証と製造物責任は別のものですので、製品保証の有無にかかわらず、製造物責任の要件を満たす場合には、この法律により損害賠償を請求することは可能です。」

補足です。

Q19の回答で出てくる契約不適合責任の
期間制限は、民法566条で、以下のとおり、不適合を知ってから一年以内に売主に通知する必要があることが定められています。

【参考】民法
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第五百六十六条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

製造物自体の損害は適用対象外であり、また、製品保証は製造物責任とは別の製造業者による自主的な対応のため、今回のクレームについては、そもそも製造物責任法の適用はなかったケースである可能性があります。

 また、製造物自体の損害については、民法に基づく不法行為責任、契約不適合責任、債務不履行責任等の問題が生じる可能性が、ありますが、そのためには、被害者側で加害者の過失や品質の契約不適合等を立証する必要があります。
 今回のケースのように、販売(11月)からクレーム(翌年1月中旬)までの間に2ヶ月程度の期間があり、しかも、現物はお客様側で捨ててしまっとのことで原因が特定できていなかった等の事情がある場合には、立証のための証拠がない状態であり、果たしてお客様側で貴社の過失や商品の品質の契約不適合を立証できたのか疑義があるように思います。

 貴社は、製造及び通販等での販売をなされているようであり、購入するお客様(消費者)の層•範囲も県内に留まらない全国規模の可能性もあるのではないかとご推察致します。
 今後、同様•類似のケースやさらなるハードケースが生じる可能性に備え、①法務体制の整備•拡充(顧問弁護士の導入、社内法務担当の育成、専門家等による研修•勉強会の実施など)、②製造工程、製品表示、通販サイトの内容等のリーガルチェック等の予防法務も心掛けてみて下さい。

丁寧なご説明をいただきありがとうございます。
法的な責任所在について理解できました。