発注書出していないから、注文していない。
令和5年1月頃、D社より連絡があり打ち合わせに伺いました。内容は、D社製品に殺菌灯を搭載したいとの事。
設計・試作を繰り返しD社との連絡も密にして、完成形に近づいてまいりました。
D社担当は社長で、月産1万台とのお話。部品の供給体制など当社も関係各社と連絡を取り合い進めています。
とんとん拍子に話が進み、試作品も気に入って頂き、同年3月にD社が工場見学にも来て頂き、生産開始時期の話に成りました。当社からは、部品関係が1.5ヶ月掛かるので6月から生産開始と要望いたしました。
D社からは「7月が繁忙期なので、5月から生産開始して欲しい」との要望。
同年3月末にメールで「5月、6月で5千台で調整してください。」D社製品の生産体制が追い付かなく当初の予定より少なくなったそうです。このメールを受けて当社では、部品の調達、人員の確保など直ぐに始めました。
4月末に、最終系サンプル(営業活動開始の為)を10台納品しました。
メールだけですと不安ですので「発注書」下さいと何度も催促し、また部品も納品間近、人員も確保で給与が発生します。「このままだと困ります。」とD社に連絡を入れていました。
6月に入り「発注書を出していないので、注文していない。当社(D社)に責任はない。」との連絡があり逃げられた感じです。
1台8.500円の見積りで5千台ですので、仕入れ3千万円以上と人件費の負担が出来ず困っています。
「発注書が無いから注文していない。」は法的に通るのでしょうか?弊社としては損害賠償請求したいのですが、如何でしょうか?請求(訴訟を起こす)は出来ても何割くらいが判決に成るのか?
宜しくお願いいたします。
契約は口頭でも成立するので相手の発注書がないという主張は通らないでしょうね。
請求は売買代金全体というのが普通でしょう。
実際の見通しはメールの内容を検討する必要があります。
金額も大きいので弁護士に相談、依頼するのを推奨します。
寺岡先生、早々のご回答ありがとうございます。
当初の予定通り、D社に購入して頂き、販売して頂ければベストなのですが。
まずは、①契約が既に成立していたと主張し、仮に契約が成立していないとしても、以下のような参考判例のように、②契約準備段階における信義則上の注意義務違反に基づく損害賠償請求を相手会社にして行くことが考えられます。
(参考)
【最判平成19年2月27日の裁判要旨】
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=34183
「XがAの意向を受けて開発,製造したゲーム機を順次XからY,YからAに継続的に販売する旨の契約が,締結の直前にAが突然ゲーム機の改良要求をしたことによって締結に至らなかった場合において,Yが,開発等の続行に難色を示すXに対し,Aから具体的な発注を受けていないにもかかわらず,ゲーム機200台を発注する旨を口頭で約したり,具体的な発注内容を記載した発注書及び条件提示書を交付するなどし,ゲーム機の売買契約が確実に締結されるとの過大な期待を抱かせてゲーム機の開発,製造に至らせたなど判示の事情の下では,Yは,Xに対する契約準備段階における信義則上の注意義務に違反したものとして,これによりXに生じた損害を賠償する責任を負う。」
また、施主と下請業者との間の関係に関するものですが、下請業者が下請契約を確実に締結できるものと信頼したことを保護する判例も参考になるかと思います。
いずれにしても、損害賠償請求を検討されるのであれば、弁護士に個別に問い合わせ、契約締結上の過失(契約交渉段階の過失)の判例も意識しつつ、適切なアドバイス•サポートを受けるのが望ましいご事案かと思います。
(参考)
【最判平成18年9月4日の裁判要旨】
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=33487
「建物の建具の納入等についての下請業者が施工業者との間で下請契約を締結する前に下請の仕事の準備作業を開始した場合において,(1)竣工予定時期に間に合うよう下請の仕事を完成するためには,施主が施工業者を決定する前に上記準備作業を開始する必要があったこと,(2)施主は,設計監理者の説明を受けて,下請業者に上記準備作業の開始を依頼すること及び依頼後は別の業者を選ぶことができなくなることを了承していたこと,(3)下請業者は,設計監理者から,上記のとおり施主の了承があった旨の説明を受けるとともに,直ちに上記準備作業を開始するよう依頼を受けたことから,上記準備作業を開始したことなど判示の事実関係の下では,下請業者が上記準備作業に要した費用等について設計監理者で負担するとの説明を受けていたなどの特段の事情のない限り,施主が,下請業者において下請契約を確実に締結できるものと信頼して支出した費用を補てんするなどの代償的措置を講ずることなく,将来の収支に不安定な要因があることを理由として施工計画を中止することは,下請業者の上記信頼を不当に損なうものとして,不法行為に当たる。」
清水先生、判例まで記載頂き、ありがとうございます。
リンク先見ましたが、素人では探すのが苦労しそうです。