タイムカードの不正打刻をおこなったスタッフへの対応
弊社で勤務するスタッフが約1年にわたり、200回近くタイムカードの不正打刻をおこなっていることが発覚しました。
弊社のタイムカードはスマホから打刻する事が可能でスマホを利用して打刻した場合、打刻場所がGPS機能により、データとして残ります。
事務所内での内勤スタッフなので、営業先で打刻が必要となる場面はなく、社外の住所での打刻はあきらかに不正な状況です。(なおGPSのズレとは判断しにくいほど離れた場所での打刻です。自宅付近で出勤打刻と思われるものが多数。退勤も帰宅途中で打刻していると考えられる位置です。)
まさかこんなことするスタッフがいるとは思いもしなかったので、打刻GPSに関してはあまり見ていませんでした。
しかし、打刻時間と、そのスタッフを社内で見かける時間に違和感を感じ、会社入口の防犯カメラで確認したところ
あきらかに打刻されている時間よりも遅い時間に出社していました。
最初、本人にやんわりと打刻データがおかしい事を伝え、正しいの時間に訂正してほしいと伝えましたが、「これであってます」と認めてくれませんでした。
そのため、GPSの打刻場所の履歴と防犯カメラの事を伝えて、再度正しい時間を教えてほしいと伝えましたが「わかりません」「覚えていません」との回答でした。
有期契約のパートスタッフはこの内容では懲戒解雇や諭旨退職だと、不当解雇と言われてしまう可能性があるかもしれないと思い、懲戒停職にしました。
しかし、停職明けに出社せず、LINEで「残りの有給を消化したのち、退職したい」と連絡がきました。
正しい勤務時間がわからず、給与の返還請求もできず、不正の後処理や急な退職により、社や他のスタッフに多大な迷惑をかけ、その上、有給まで使われるというような状況です。
正しい時間がわからないというタイムカード不正打刻による返還請求はどのようにおこなえばよいでしょうか?
また、返還が難しい場合、損害賠償を請求する事はできますでしょうか?
また、返還請求も損害賠償請求もせず、「詐欺」として、警察に被害届を出す事は可能でしょうか?
ご教授願います。
>正しい時間がわからないというタイムカード不正打刻による返還請求はどのようにおこなえばよいでしょうか?
→ 大変な作業になるかと思いますが、GPSの打刻場所の履歴や防犯カメラ映像等の証拠を基に、会社と打刻場所との移動時間を合理的に推定の上、正しいと思われる出退勤時間•労働時間を算出し、不正受給と思われる金額を算出することが考えられます(なお、勤務時間が何時から何時まで等と決まっている場合には、その時間を目安にしつつ、移動時間を考慮し、正しいと思われる労働時間を算出することも考えられるかと思われます)。
その上で算出された不正受給金額の返還を書面等で求めてみる方法等が考えられます。
>また、返還が難しい場合、損害賠償を請求する事はできますでしょうか?
→ 返還請求と損害賠償請求は実質は同様の請求のため、損害賠償として請求する方法もあるかと思います。
>また、返還請求も損害賠償請求もせず、「詐欺」として、警察に被害届を出す事は可能でしょうか?
→ 民事での返還•損害賠償と刑事事件の被害届は別の手続きですので、被害届を出してみること自体は可能かと思われます。ただし、詐欺罪等のいわるゆ知能犯の類型の場合、警察に被害を理解してもらうのに労力を要する可能性があります(証拠等を整理•用意して被害の存在や被害額を可視的に警察に理解してもらえるような労力を要する場合もあります)。
そのため、上記の合理的に算出した金額の返還がなければ、刑事告訴も検討する旨を伝え、まずは返金を求めてみる方法もあるでしょう(今回の問題のスタッフ自身に不正打刻をしている認識がある場合には、返金に応じる可能性もあるように思われます)。
いずれにしましても、貴社のみでの対応が難しい場合には、弁護士に直接相談し、適切なアドバイスやサポートを受けてみることもご検討下さい。
それが、防犯カメラを設置したのがつい最近でして。
防犯カメラで実際の時間が確認できるのは、ほんの2~3週間分なのです。
(防犯カメラ設置により、出勤時間に違和感を感じ、調べたら、ものすごく前から不正してたという形です。)
出勤の際もGPSを打刻した場所から、そのまままっすぐ出社してない場合もある感じで(途中どこかで寄り道してから出社してる可能性もあり)
あと、この件により、それこそ、200件にもおよぶデータ照合や不正の調査が必要になったり、急遽その人の業務を別のスタッフが肩代わりする事になって残業が増えてしまったりなど、本来必要のない業務を強いられて、小規模の会社なのにそれに人員がさかれてしまったり、必要のない経費が発生してしまっているのですが、それらを損害賠償の中に組み込むことは可能なのでしょうか?
また、弁護士さんに依頼した場合、弁護士費用を損害賠償の中に含める事や、相手に弁護士費用を請求する事は可能でしょうか?
「しかし、停職明けに出社せず、LINEで「残りの有給を消化したのち、退職したい」と連絡がきました。
正しい勤務時間がわからず、給与の返還請求もできず、不正の後処理や急な退職により、社や他のスタッフに多大な迷惑をかけ、その上、有給まで使われるというような状況です。」
大変悪質ですね。打刻場所のデータと、これまでのタイムカードの虚偽を確認し、突き付けて責任を問題にすることになるでしょう。
詐欺もありうるでしょうね。
「正しい時間がわからないというタイムカード不正打刻による返還請求はどのようにおこなえばよいでしょうか?」
想定できる虚偽を前提に、相手と協議して詰めればよいかと思います。
確実な記録があれば、それによるのがよいですが、すべては不可能でしょうので。
相手の言動には早急には返事をせずに弁護士と相談しながら、対応策を検討する方がよいでしょう。
また、返還が難しい場合、損害賠償を請求する事はできますでしょうか?
法的には可能ですが、立証の問題があります。
協議でも問題にできそうですが、調停なども検討できるでしょう。
また、返還請求も損害賠償請求もせず、「詐欺」として、警察に被害届を出す事は可能でしょうか?
内容的には検討できますが、立証は、民事よりさらにワンランク上がります。
警察に相談されてもよい事案だとは思います。
それこそ、200件にもおよぶデータ照合や不正の調査が必要になったり、急遽その人の業務を別のスタッフが肩代わりする事になって残業が増えてしまったりなど、本来必要のない業務を強いられて、小規模の会社なのにそれに人員がさかれてしまったり、必要のない経費が発生してしまっているのですが、それらを損害賠償の中に組み込むことは可能なのでしょうか?
また、弁護士さんに依頼した場合、弁護士費用を損害賠償の中に含める事や、相手に弁護士費用を請求する事は可能でしょうか?
不法行為とすれば弁護士費用相当額として、請求額の一割は請求可能です。
それ以外の証拠確保のための作業の費用は原則として請求できません。
極めて例外的に認めた事案はありますが、そこまで言えるか・・・。
あと、この相手にそこまでの弁済能力があるかという点も気になります。