民法第891条(相続人に被相続人への殺人未遂歴有の場合の相続除外)は、相続人の意思に反して強制適用?

民法第891条では、

次に掲げる者は、相続人となることができない。
一  故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

と規定されています。

これはつまり、過去に被相続人に対して殺人未遂事件を起こして刑に処された者は、相続人になる事が出来ないということですね。

それでは、例えば、次のような事例の場合も、この規定が適用されるのでしょうか?

何十年も昔に、父(A)に対して息子(B)が殺人未遂事件を起こして刑に処されたが、現在は両者とも和解しており、仲は良好である。
そして現在、父(A)は息子(B)に対して、自らの財産を相続させたい意思を示している。

このような場合であっても、民法第891条の規定により、父(A)の意思に反して、息子(B)は、Aの被相続人になる事は出来ないのですか?

AがBを許したとしても、AにB以外の別の相続人がいれば、891条を適用し、Bの相続権を否定してくる可能性があります。
そのような場合に備えて、Aは、Bに生前贈与をするか、相続権が無い者に対する遺贈という形で遺言を残しておく必要があります。

他に、Bの相続権を否定するような利害関係人がいなければ、Bは相続権に基づいて、遺産を取得できてしまいます。

ご回答ありがとうございます。

そうなのですね。
これについて疑問に思ったのですが、本件のように、被相続人の意思に反して特定の相続人に財産を相続できなくさせる規定というのは、その被相続人の財産権を侵害するものであり憲法違反である、という考え方は出来ないのでしょうか?
財産権というのは、自らの財産を誰に相続させるのかは、基本的に本人自身に決定権を与えているものだと思いましたから。

財産権というのは、広く制限されやすいですからね。被相続人の財産処分権を制約することになる遺留分制度が、憲法違反と判断してもらうのも困難であるのと同様です。
具体的事案で、宥恕により相続権を回復するという主張をすること自体は、興味深いと思います(学説上では対立があるのでしょう)。

ご回答ありがとうございました。
理解できました。

なお、質問本文の最後の
<このような場合であっても、民法第891条の規定により、父(A)の意思に反して、息子(B)は、Aの被相続人になる事は出来ないのですか?>
という文内の「息子(B)は、Aの被相続人になる事は出来ないのですか?」という箇所は、「息子(B)は、Aの相続人になる事は出来ないのですか?」の間違いでした。失礼いたしました。