子らに遺産を相続させる遺言を作成した10年後に亡くなり、遺言執行者として海外に住む子らなどに遺産を相続させたケース
髙塚 真希
弁護士
【ご相談内容】【事案概要】
高齢のご依頼者さまは、自らが亡くなったときに備え、不動産と預貯金等の財産を、それまでの事情も踏まえて、複数のお子さまらにそれぞれ相続させる遺言を作成することを望んでおられました。お子さまはそれぞれご依頼者さまへの関与が異なっていたので、ご依頼者さまは単に平等にするのではない分け方を希望しておられました。また、お子さまはそれぞれに多忙で、海外に住んでおられる方もあり、お子さまたちに迷惑をかけない方法がご希望でした。
【解決内容】
遺言は後に争いを避けるため、公正証書で作成することにしました。特定の人に多くの遺産を渡す内容にすると、死後に相続人間で遺留分侵害額請求の争いが発生する可能性があるので、死後のお子さま同士の紛争を防止するため、遺留分を侵害しない内容としました。また、円滑な相続手続が実現するよう、弁護士を遺言執行者に指定しました。
その10年後、ご依頼者さまが亡くなられ、公正証書遺言に従って、遺言執行者として、遺産をお子さまたちに相続させる手続をとりました。お子さま間の争いも生じず、円滑にご依頼者さまのご意思の通りに相続を実現することができました。
【髙塚弁護士のコメント】
初めてお子さまたちにお会いして公正証書遺言の説明をさせていただいたとき、お子さまたちは、亡くなったお母様がお子さまたちのことをよく考えて遺言を残してくださったことに感無量となり、涙を流しておられました。
もし遺言がなければ、評価の難しい不動産を誰が取得し、いくらの代償金を払うべきか争いになったかもしれません。その場合、遺産分割協議や調停で費用や時間、手間がかかるだけでなく、兄弟姉妹間の関係性も悪化したかもしれません。特に、海外に居住されているお子さまもいらっしゃったので、争いになれば、そのご負担は相当なものだったと思われます。しかし、しっかりと考えられた遺言内容で、そのような争いを避けることができました。
また、遺言で弁護士を遺言執行者と指定し、報酬内容もきちんと決めてあったことから、弁護士費用は遺産の中から、ご依頼者さまによって決められた分のみいただくだけであり、お子さまたちに初期費用のご負担が生じることもありませんでした。
ご依頼者さまのお子さまたちに対する温かい言葉を遺せたことも、ご依頼者さまが亡くなって間もない、悲しみのどん底にあったお子さまたちの心を救ってくれました。
誰にも死は訪れるのですが、自分の死に向き合い、遺言を作ろうという気持ちにはなかなかならないものです。しかし、思い切って少しの手間をかけて遺言を作ることで、大切な人たちを守ることができます。弁護士は紛争の渦中に入るだけでなく、紛争を予防する場面でもお力になれますが、遺言の作成・執行はまさにそのような仕事です。