長期別居・生活費未払いで夫婦関係が破綻した50代女性の協議離婚案件〜早期に離婚を成立させた事例〜
川波 晃生
弁護士
【ご相談内容】**相談前の悩み**
ご相談者様は、婚姻期間約30年、別居期間約6年以上の50代女性です。夫の転職を機に別居状態となり、最も深刻な問題は、婚姻期間中約20年以上にわたり夫が生活費を全く負担しなかったことです。ご相談者様が家賃、食費、光熱費など生活費の全てを負担し、夫から金銭をせびられることもありました。
以前から、離婚の意思を伝えましたが、夫は「考えるね」と返答するのみで話し合いの機会を持たず、離婚届を勤務先宛に送付しても返答がありませんでした。夫は現在の住所を教えず、住民票も変更しておらず、自宅には夫宛の郵便物が届き続け、私物も残されたままでした。早期に離婚を成立させたいものの、相手が非協力的で連絡もつきにくく、どのように進めればよいのか分からず、弁護士に相談されました。
**相談後の解決内容**
当職が受任後、相手方の携帯電話とメールアドレスに連絡を取り、離婚協議に応じる意向を確認しました。相手方は当初、住所を明かすことに消極的でしたが、弁護士が介入したことで態度が変わり、勤務先を送付先として指定してくれました。
ご相談者様の希望は「財産分与も慰謝料も求めないので、早期に離婚に応じてほしい」というものでしたが、当職としては、本来であれば金銭的に有利な条件を主張できる可能性がある事案であることをご説明しました。しかし、「早く離婚して新しい生活を始めたい」との強い意向を示されたため、その意向を最大限尊重し、「早期に離婚に応じるのであれば、経済的な条件については求めない。ただし、応じない場合には調停に移行し、これらの点も含めて主張する」という方針で交渉を進めました。
その結果、相手方も早期離婚の利点を理解し、双方が経済的な条件を相互に請求しないことで合意することができました。
さらに、自宅に残された私物については、離婚協議書及び離婚届の到着後1ヶ月以内に相手方の勤務先宛に送付すること、それ以外の所有物については依頼者が処分しても相手方は異議を述べないことを合意しました。また、相手方宛の郵便物の問題を解決するため、本協議書締結後に住民票の住所変更、郵便局での転送届、公的機関等への住所変更を行う義務を明記しました。
しかし、口頭合意したにもかかわらず、離婚届等の到着が遅れていたため、当職から相手方に対し、然るべき措置を取らざるを得ないと述べました。弁護士が介入している以上、放置すれば裁判手続きになり金銭請求される恐れがあることを理解されたのか、無事離婚届等が到着しました。
**解決のポイント**
本件の最大のポイントは、依頼者にとって有利な事実がありながらも、依頼者の「早期解決」という意向を最優先し、それを交渉カードとして効果的に使ったことです。
長期間の別居と生活費未払いの事実があれば、離婚自体は認められる可能性が高く、財産請求もできる事案でした。しかし、調停や訴訟に移行すれば時間と費用がかかります。そこで当職は、相手方に対して「早期に応じれば財産関係の条件は互いにない」という明確な選択肢を示しました。これにより、相手方は早期離婚のメリットを理解し、協議離婚に応じる姿勢を見せました。
また、所有物や郵便物の問題についても、離婚協議書に具体的な処理方法と期限を明記することで、離婚後のトラブルを未然に防ぎました。結果として、依頼者は調停や訴訟に移行することなく、協議離婚という最も迅速かつ負担の少ない方法で離婚を成立させることができました。
**まとめ**
離婚問題では、法律的に有利な立場にあるからといって、必ずしも徹底的に争うことが最善とは限りません。依頼者の真の希望が「早期解決」であれば、それを実現するための戦略的な交渉が重要です。
本件では、依頼者に有利な事実を交渉カードとして効果的に使いつつ、相手方にもメリットのある早期解決を提案することで、双方が納得できる協議離婚を実現しました。また、所有物の処理、郵便物の取り扱いなど、離婚後の生活に関わる細かな点まで協議書に明記することで、後のトラブルを防止措置を講じました。
長期別居、相手方の非協力的な態度などでお悩みの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。あなたの真の希望を実現するための最適な方法をご提案いたします。