外国裁判所における不法行為を認定した確定判決について、日本での強制執行をするための要件(間接管轄の問題)についての最高裁判例(最判平成26年4月24日)
豊島 秀郎
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
眉型とワックスを使った眉のトリートメントに関する事案です。
A社の眉型とワックスを使用した眉トリートメントは、アメリカのビバリーヒルズで大変な人気を得ていました。
そこで、日本のB社が5億円を支払い、A社のブランド及び技術を導入し、各地のデパートにサロンを開設しました。ところが、その導入に関わった担当者甲・乙が、B社に対する不満などでB社を退社し、自ら、C社を設立し、眉型とワックスを使った眉のトリートメントのサロンを開業しました。
B社は、C社及びその取締役甲・乙らに対し、大阪地裁に、営業秘密侵害を理由に、損害賠償と技術使用の差止めの訴訟を起こし、また、A社も、アメリカで、B社及びB社の取締役らに同様の裁判を起こしました。
本件では、A社が提起したアメリカでの訴訟の帰趨が問題になりました。
同訴訟については、B社らは、弊所の前任者のアドバイスの下、欠席し、判決が確定しました。
A社は、アメリカの確定判決の執行を東京地裁に求めてきました。
【相談後】
外国にいる者を被告として、不法行為を請求原因とする訴訟をわが国の裁判所に提起する要件(直接管轄)が何かについては、最高裁平成13年6月8日判決が判断を示しており、不法行為の客観的事実関係、つまり、①原告の被侵害利益の存在、②原告の被侵害利益に対する被告の行為、③損害の発生、④②と③との事実的因果関係の主張・立証が必要であるとの趣旨の判断をしました。
A社が提起した執行認容訴訟事件の前までは、最高裁は、直接管轄と間接管轄の要件について、別に考えているとの理解が一般的で、明確な学説もなく、下級審レベルでは、ほぼ無条件で外国判決の執行を認容しているものが散見されました。相手方の主張も同様のものでした。
弊職は、一審の東京地裁の当時から、間接管轄においても、直接管轄についての上記最判平成13年6月8日が採用した考え方を採用すべきだと主張していました。国際裁判管轄についての第一人者である東京大学名誉教授(当時)も弊職の見解に賛同して下さり、意見書を提出して頂きました。
このこともあり、東京地裁、東京高裁、最高裁(最判平成26年4月24日)、いずれの裁判所も、弊職の考え方に沿った判決となりました。
(もっとも、上記最高裁判決は、不法行為を請求原因とする差止めを認めたアメリカ判決の執行要件については、損害の発生は要件ではなく、「損害発生のおそれ」で足るところ、原審はその点について判断を示していないとして、破棄差戻しをしています。
差戻し後の東京高裁判決でも、弊職の見解が全面的に採用され、弊職が勝訴しました。この勝訴判決は、相手方の上告受理申立が、最高裁によって退けられて、確定しています)
【先生のコメント】
本判決以前は、上記最判平成13年6月8日の調査官の解説でも「間接管轄に関して、不法行為地の裁判籍が問題となる場合の管轄の証明の対象及び程度について、本判決が直接妥当するわけではなく、当該外国判決をわが国が承認するのが適当か否かの観点から、不法行為地の裁判籍により管轄を認めるため証明すべき事項等を検討する必要がある」とされており、本判決は、外国裁判所における不法行為を認定した確定判決について、日本での強制執行をするための要件を最高裁が初めて示した極めて重要な判決です。
本判決については、多数の文献で解説・批評がなされています。
判例タイムズ1401号157頁、判例時報2221号35頁、廣瀨孝・最高裁判所判例解説民事篇(平成26年度)180頁、 金融・商事判例1457号31頁、増刊ジュリスト平成26年度重要判例解説1479号300頁等。