遺留分請求:遺言により全財産を特定の相続人に相続させるとされていた事案
安藤 良平
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
被相続人には子が3名おり、遺言によりすべての財産を長男に相続させる旨が定められていました。長男は遺言執行者にも指定されていました。
依頼者は、生前、被相続人から生命保険についての話を聞いており、自身にも一定の財産が遺されるものと理解していました。しかし、相続開始後に開示された財産内容にはその説明がなく、遺言の内容とあわせて強い違和感を抱き、ご相談に至りました。
【相談後】
財産状況を確認したところ、
・生前に高額の保険契約が解約されていたこと
・相続人の一人に対する多額の送金が存在すること
・財産管理を特定の相続人が担っていたこと
などが判明しました。
生命保険は原則として受取人固有の財産とされますが、財産の流れや契約の経緯によっては、遺留分算定において検討の対象となる余地があります。
本件では、特定の保険契約について特別受益に準じた評価を行うべきであるとの主張を行い、最終的には、金銭の支払いによる調停成立に至りました。
【先生のコメント】
生命保険金は、受取人固有の財産とみなされるため、原則として遺留分(最低限の相続財産)を計算する際の算定対象とはなりませんが、保険金額が相続財産と比較して高額であるため、公平の観点から例外的に遺留分の対象となった事例です。
当初は「遺言がある以上、何もできないのではないか」と考えられていた事案でしたが、財産の実態を整理し、法的枠組みに沿って主張することで、一定の解決に至ることができました。
遺言が存在する場合でも、遺留分の問題が生じることがあります。また、生命保険や生前の資金移動については、形式だけで判断できない場合もあります。
何よりも、本件で印象に残っているのは、依頼者が抱えていた感情です。
「争いたいわけではないが、納得できない。」
相続は、法的問題であると同時に、家族関係の問題でもあります。その双方を丁寧に整理することが、解決への第一歩になります。