工事途中で契約解除を通知された案件について、迅速な出来高回収に成功した事例
川崎 仁寛
弁護士
【ご相談内容】相談前
収益物件の改修工事を請け負った建設会社から、着工後しばらくして発注者から一方的に契約解除を通知され、未施工部分のやり直しと、搬入済み資材の撤去まで求められているとのご相談を受けました。
工事はすでに相当程度進んでおり、設備機器や部材も現場に搬入済みでしたが、打合せ記録や変更合意の残し方が十分でなく、発注者からは「当初の説明と違う」「別業者に引き継ぐ」との強い主張が出ていました。
会社としては、少なくとも施工済み部分や搬入済み資材相当分について出来高請求をしたい一方、相手方からは原状回復を求められており、何をどこまで請求できるのか、また、相手方が現場を先に改変してしまった場合に証拠が失われてしまわないか、大きな不安を抱えている状況でした。
相談後
まず、請負代金の回収を考える前提として、出来高の立証責任は施工会社側にあることを明確にし、概算や感覚的な割合ではなく、施工済み部分、搬入済み設備、作業工程、現場写真、作業報告、納品記録などに基づいて、客観的に積み上げた出来高算定資料を作成すべきことを助言しました。そのうえで、契約解除に対する初動としては、感情的に争うのではなく、契約約款上の出来高精算の根拠を明示しつつ、出来高請求と引渡し・後片付け等の扱いを切り分けて協議する方針を提案しました。
後の紛争で極めて重要になるため、「立入りを試みたが、施主都合により現状確認や撤去準備ができないこと」を、電話ではなくメール等の記録に残る形で直ちに通知するよう求めました。
これは、証拠の散逸防止だけでなく、相手方が資材などの撤去期限徒過を主張してきた場合に、施工会社側に帰責性がないことを示すためにも重要だからです。
結果として、出来高請求、原状回復、現場引渡し、証拠保全という複数の論点を混同せずに整理し、何を先に主張し、どの資料を準備し、どのような表現で相手方に通知するべきかを明確にすることで問題解決への道筋を立てることができました。
コメント
建設・リフォーム工事では、工事途中で発注者との関係が悪化し、契約解除や業者交代に発展することがあります。
しかし、その場で慌てて「いくら請求するか」だけを考えると、出来高、原状回復、資材の扱い、現場の立入り、証拠保全といった論点が混線し、かえって不利になることがあります。
契約上の根拠を押さえつつ、現場写真や日報などの証拠整理、通知文の出し方、相手方の妨害行為への記録化まで含めて、戦略的に対応することが重要です。
弁護士が早い段階で関与することで、感情論ではなく、法的紛争も見据えたうえで現実的な回収可能性と立証可能性を踏まえた交渉方針を立てやすくなります。