ぬまくら ゆう
沼倉 悠弁護士
あらた国際法律事務所
千葉中央駅
千葉県千葉市中央区新宿2-7-10 エレル新宿ビル6階
インタビュー | 沼倉 悠弁護士 あらた国際法律事務所
ジェネラリストでありスペシャリスト。弁護士として成長し続ける姿勢に迫る
あらた国際法律事務所の代表弁護士として、所属弁護士とともに、多種多様な案件に真摯に向き合う沼倉 悠(ぬまくら ゆう)弁護士。
常に前を見据えるその視線の先にある、自身と事務所の現在、過去、未来に迫ります。
常に前を見据えるその視線の先にある、自身と事務所の現在、過去、未来に迫ります。
01 現在の弁護士業務
多種多様な分野を取り扱いながら、専門分野を深めていく
――沼倉先生は、現在、どのような案件を取り扱っていますか?
基本的にはあらゆる分野の案件を取り扱っています。
ただ、比較的取扱いが多く、力を入れてきた分野としては、民事事件では消費者被害と建築・不動産、家事事件では離婚・男女問題や相続です。
また、企業に関係する分野で言うと、債権回収、労働、契約書作成、知的財産権、国際取引、インターネットの分野などを多く取り扱っています。
――かなり幅広く取り扱っているのですね。
はい。
弁護士人口が増えてきたとはいえ、弁護士の知人や親族がいるなど、弁護士へのアクセスを有している方はまだまだ少数です。
相談者の中には、必死の思いで弁護士を探し、法律事務所に電話をかけてくる方も多いです。
そのため、仮に弁護士が分野や採算性を理由に相談や依頼をお断りした場合、相談者は途方に暮れてしまうこともあります。
そのような考えの下、極力依頼をお受けするようにしてきた結果、自然と多種多様な分野の案件を取り扱うようになりました。
――そのお考えは立派だと思います。ただ、事務所経営とのバランスが難しいのではありませんか?
確かにそのとおりです。
私も事務所のスタッフに対して雇用主としての責任を有していますので、採算性を完全に度外視することはできません。
そこで、両者のバランスを取るのが報酬基準です。
私は着手金定額制の報酬基準を採用していますが、これは事務所経営を安定的に行うため、経験に基づいて必要となる金額を定めたものです。
――なるほど。ところで、先生の目指す弁護士像は、ジェネラリストですか?それともスペシャリストですか?
ジェネラリストであるとともに、スペシャリストでもありたいと考えています。
私の取り扱っている分野の中で言うと、建築訴訟や国際取引法務、知的財産権、法人の破産申立てといった分野は、比較的専門性が高く、これらを取り扱っていない弁護士も多いです。
私も独立した2015年当初は未経験だったのですが、「初めの一件目」を少し背伸びして受任し、結果を出すために必死に勉強して食らいついていく中で、今は自信を持って対応できますと言えます。
そのような過程を今後も続けて、単なる「何でも屋」ではない、ジェネラリストかつスペシャリストな弁護士でありたいと思っています。
02 弁護士としての心構え
目の前の依頼者の安心と、法による公平な問題解決の図られる社会づくりのために
――ところで、先生はなぜ弁護士を志したのでしょうか?
ありきたりなのかもしれませんが、中学生の頃に観たテレビドラマに触発されたのがきっかけです。
私が観たのは『最後の弁護人』という刑事弁護人のドラマだったのですが、そのドラマは、被告人、つまり主人公の依頼者のことを、「善い」部分と「悪い」部分とを併せ持つリアルな人間として描くものだったんです。
当時、思春期の真っ只中にあった私は、人間の多面性というものに非常に敏感になっていたのですが、だからなのか、そのような多面性に対して肯定的に関わっていく弁護士という仕事に強い憧れを抱きました。
そこからは、法学部一本に絞って勉強をし、中央大学法学部、中央大学法科大学院に現役で進学し、2012年に受けた初めての司法試験で一発合格しました。
――とても順調な経歴ですね。
そんなこともないんですよ。
実は私はロースクール時代に科目の一つの単位を落とし、下級生と一緒に授業を受けるという屈辱的な思いをしています。
その原因は、司法試験受験生あるあるなのですが、当時の私が独りよがりの答案ばかり書いていたためです。
ですが、そのような屈辱的な経験を経て気付きました。
それは、試験には必ず「出題の趣旨」があり、これに沿った答案こそが優秀な答案だということです。
本物の優等生は、そんなこととうの昔に知っているわけですが、平凡な私は失敗をするまで気付くことができませんでした。
――なるほど。ところで、その考え方は弁護士実務にも通ずるのではありませんか。
はい。
裁判においては、最終的に裁判官が判決を下すことになるのですが、その思考過程には判例や法解釈、事実認定過程、証拠法則といった法律家の共通言語があります。
そのような法律家の共通言語は、試験の「出題の趣旨」に似ていると思います。
つまり、法律家の共通言語を踏まえた主張・立証は判決を動かし得るものであるのに対し、そうでない主張・立証は一顧だにされません。
だからこそ、弁護士の仕事は、依頼者の生の主張を法律家の共通言語に合わせて翻訳したり、法律家の共通言語に照らした評価についてわかりやすく解説したりすることにあるのかなと考えています。
――明快なたとえですね。ほかに先生の心構えに影響を与えた出来事はありますか?
弁護士登録後に師事した先生の姿勢には強く影響を受けています。
先生は、弁護士は偉い存在ではない、君が今その地位にあるのは環境や運、一定の才能に恵まれたからであって、そうなったことは偶然だということを決して忘れてはいけないということを強くおっしゃっていました。
また、先生は、私たちの授かった僥倖は他人や社会のために用いるべきだともおっしゃっていました。
以後「何のために弁護士の仕事をするのか」ということを強く意識するようになったのは、そのような先生の指導があったからです。
――沼倉先生は、現在、何のために弁護士の仕事をするのだと考えていますか。
まずは、目の前にいる相談者・依頼者が抱える問題を解決し、安心を提供するためだと考えています。
弁護士の仕事は、最終的にお金で解決されることが多いのですが、依頼者が真に求めているのはお金というよりも安心した生活であることが多いように感じています。
したがって、我々弁護士の仕事は、法律相談や受任を通じて、顧客に安心を提供することが第一の目的だといえると思います。
しかし、それだけにとどまらず、我々はより良い社会づくりをも担っているのだと考えています。
その社会とは、「法の支配」の貫かれた社会、私なりの解釈で言えば、法による公平な問題解決の図られる社会です。
そのような社会で暮らすことによって、人々は不当に権利を侵害されることがなく、真に安心して生活を営むことができます。
また、そもそも、我々弁護士が仕事をし、顧客に安心を提供することができるのも、「法の支配」があってこそのことです。
そのため、顧客に安心を提供するという第一の目的と「法の支配」を推進するという第二の目的とは、有機的に結び付いているのだと考えています。
03 今後の目標
専門性、後進の育成、そして弁護士会へのコミットメント
――さて、今後の目標についても伺いたいと思います。先生が弁護士として思い描く将来像をお聞かせください。
3つあります。
まず、専門分野をより磨いていきたいと思っています。
特に、国際法務の分野については、少子高齢化に伴う人口減少によって、日本企業はますます海外で収益を上げる必要に迫られていますし、日本国内で生活する外国人の人口も増えています。
その意味で、望むと望まざるとにかかわらず、今後の弁護士は多かれ少なかれ国際法務に関わらざるを得なくなると考えています。
私はその時代を先取りしたい。
だから事務所名に「国際」の文字を付けました。
――なるほど。2つ目の将来像は何ですか?
2つ目は、後進を育成することです。
私は、これまで自分自身が第一線のプレーヤーとして仕事をしてきたのですが、私がそのような働き方をいつまでも続けてしまうと、部下である勤務弁護士の成長の機会を奪ってしまうことになります。
そこで、今後は徐々に第一線を部下に譲るとともに、私は彼らの仕事をマネジメントし、育成する役割に移っていかなければならないと考えています。
思い返してみれば、私の師事した先生もそのようにして勤務弁護士を育てていました。
私はまだ先生には遠く及ばない若輩者なのですが、部下を持った以上、彼らを育てる責任が巡ってきたのだと思います。
後進の育成とは、業界の未来づくりそのものですから。
――わかりました。3つ目の将来像は何ですか?
3つ目は、弁護士会へのコミットメントです。
私は2020年度、千葉県弁護士会の副会長を務め、会の抱える課題の解決に取り組んだのですが、まだまだ課題は山積しています。
巷では「弁護士会不要論」もささやかれているのですが、事態はむしろ逆で、弁護士人口の増加に伴って弁護士会に求められる役割は急拡大しています。
私は、そのような時代の要請に、旧態依然とした弁護士会組織が対応できていないことこそが、弁護士会の抱える根源的な課題だと考えています。
したがって、今後は、ゼロベースで弁護士会のあり方を見つめ直し、必要な組織改革を行っていく柔軟な視点が求められます。
私が現在取り組んでいる男女共同参画推進や事務局改革はその一環です。
弁護士会は単なる職業団体にとどまらず、人権擁護の最後の砦とも呼ぶべき存在です。
だからこそ、私は、弁護士会を時代に合わせてアップデートしていく役割を今後も担っていきたいと考えています。