アパートの退去日よりも前に、出て行く必要があるの？？？（原状回復工事が必要の為、との事です）

Question

借りていたアパートを退去します。退去日（解約日）は決まりました。
賃貸借契約書には、特約で「原状回復は、クロスを退去時に全面張替する」事と、その後の別のページの、沢山の条項があげられている文章の中で、「明け渡し・原状回復；①契約終了までに本物件を明け渡す　②物件内の造作・間仕切り・建具などを撤去する。また本物件を乙の費用で原状に回復してから甲に明け渡す」と記載があります。
不動産会社からは、「特約と条項に記載があるので、退去日までに原状回復工事が必要です。つまり、退去日の２週間前には鍵を渡して出て行ってください」と言われました。
１年も住んでいないワンルームで、クロス全面張替、また、それにかかる原状回復工事の為に２週間も前に出て行けと言われて不信感を覚えています。
向こうは「契約書に書いてあるから」の一点張りです。
契約時には「退去日の２週間前に出ろ」とは言われていませんし、聞いていません。
今まで、退去後に原状回復工事をする物件しか住んだことがなかったので、実際の解約日よりも前に工事をすると聞いて驚いています。
また、特約にあるからとの事で、クロス全面張替と言われておりますが、１年も住んでいないのに天井まで張り替える意味がわかりません。

西谷 拓哉 弁護士 · Accepted Answer

はい、消費者契約法の適用がないため、原状回復について特約を設けているとそれが優先適用されます。
その結果、民法の定める以上の原状回復…具体的には通常損耗をも含めて事業者である賃借人が原状に復するというような特約も有効となり得ます。
当該特約が暴利行為である等の立証ができない限りはなかなか有効性を争うのは難しい印象を受けます。

西谷 拓哉 弁護士 · Answer

アパートの賃借が消費者　対　事業者であることを前提に回答します（事業者として借りている場合は、消費者契約法に関する記述は妥当しません。）

公益社団法人全日本不動産協会のコラムにて、弁護士の江口先生の解説を引用しますが、
ポイントは、いつ「明け渡し」となるかです。
原状回復義務を尽くしていなくても、鍵の返還等があれば、法的にはそれは「明け渡し」と評価されます。
そのため、原状回復義務が定められているからといって、２週間も前に退去する必要はありません。
https://www.zennichi.or.jp/law_faq/%E5%8E%9F%E7%8A%B6%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E7%BE%A9%E5%8B%99%E3%81%AE%E4%B8%8D%E5%B1%A5%E8%A1%8C%E3%81%A8%E6%98%8E%E6%B8%A1%E3%81%97%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82/

そして、原状回復義務の程度について、通常損耗の賠償は不要です。
新民法６２１条ではこれが明確に定められています。
具体的には、国交省の原状回復ガイドラインを参照してください。
なお、クロスを退去時に全面張替すると、一切の留保なく定められているとすれば、通常損耗含めて張替費用を強制されることになり消費者に不利ですので、
消費者契約法等で無効になる余地があります。

消費生活センターへの相談も検討してください。