著作人格権を行使しないことを求められた場合

著作人格権についての相談です。

個人でイラストなどの案件を請け負っております。
とある法人様にキャラクターの製作依頼をいただき、内容や金額、納期など調整しておりました。
そこで本依頼の前に依頼者様から業務委託契約書を交わしたいとのお申し出がありました。
その内容に疑問点があります。(以下箇条書きいたします)

・そもそも仲介サイトを通しており、通常そのサイトを通して案件を受ける場合は個別の契約書は不要(サイト運営側に確認済)
・契約書には著作権譲渡および著作人格権を行使しないことと明記されているが、今回平均よりもかなり低価格(1キャラ3ポーズ1万円ほど)での販売であることもあり、著作権譲渡はサイトでの取り決めなので仕方ないとしても、人格権まで行使不可というのはこちらの負担が大きすぎる気がする
・さらに、納品後に成果物が第三者により権利侵害などの訴えを起こされた場合の損害賠償責任も私が負うことと記載があり、正直そこまでして請け負うのはこちら側のリスクが高い気がしています。

以上を踏まえた上での質問ですが、

①このような契約内容は一般的であり、多くのクリエーターはこのような条件を飲んで仕事しているのでしょうか?
そうだとするとクリエーター側の負担が大きくはないでしょうか。

②こちらからの対応として、

・人格権の行使をしないという文言は削除してもらう
・金額を上げてもらう

といった提案をすることは法的には問題ないでしょうか?

何卒よろしくお願いいたします。

①企業側からそうした要求があるのはよくあることだと思いますが、不当すぎるように見受けられます。
②そのようにご交渉されて良いと思います。企業が折れなければ今回は機会がなかったと割り切るのも一つの道かと思います。

①このような契約内容は一般的であり、多くのクリエーターはこのような条件を飲んで仕事しているのでしょうか?
そうだとするとクリエーター側の負担が大きくはないでしょうか
←著作者による著作者人格権の行使を恐れてそのような条項を設けるケースが多いと思います。
②こちらからの対応として、
・人格権の行使をしないという文言は削除してもらう
・金額を上げてもらう
といった提案をすることは法的には問題ないでしょうか?
←解釈に争いはありますが、一般的に著作者人格権の放棄はできないと解されていますので、文言の削除を交渉することは可能でしょう。しかし、その場合、相手方は
著作者人格権行使のリスクを負いますので、契約を白紙にするか、代金をより低額にすることを要求する可能性があります。
最終的には、メリットとデメリットを天秤にかけて判断された方がよいと思います。

お二人の先生方、ありがとうございます。

もう一度よく契約書を読んでみたのですが、新たに気になる文言を見つけてしまいました。

(期間内解約)
・委託者は、受託者に対して、書面又は電磁的方法により通知することにより、いつでも本契約を解約することができる。
・委託者は、受託者に対して、解約を理由に受託者が被った損害について、損害賠償責任を負わない。

他の部分ではすべての損害賠償責任はこちらに課されると明記されており、その上限額の記載もありません。

やはりこの案件は見送った方が良いでしょうか。。。?

一発目の契約案文としては、企業側は自社にとことん有利な内容を提示してくるのがほとんどなので、交渉の余地はあると思います。著作権譲渡や賠償責任の問題と併せて、たとえば解除の場合のクリエーター側への補償を設けさせるといった修正要望は出してみる価値があります(実際、民法の原則では一方的な委任契約の解除には、必要に応じて損害の補償をしなければならないと定められています。)
ただ、そこで「これはうちの定型書式なので変更できない」といった趣旨の回答があれば、今後の信頼関係の構築を考えても、ご縁がなかったとして契約を見送られた方が良いように思います。

佐山先生、再度のご回答ありがとうございます。
やはり専門家のご意見を聞かなければ分からないことだらけですね。
修正要望を出すこともでき、中途解約での委任側の補償義務も民法で規定されていると知ることができて良かったです。
分かりやすく丁寧にご回答いただき、ありがとうございました。