離婚後も元夫がローンを支払っている自宅で依頼者さまとお子さまが一緒に生活しているケース
家本 誠
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
依頼者さまは、10年以上前に裁判所で和解による離婚をし、お子さまは依頼者さまが親権者となり育てています。実はその和解条項(裁判所の和解で取り決めた約束です)で、依頼者さまは当面、元夫がローンを支払っている自宅で引き続きお子さまと生活を継続することできるという約束をしました。しかしお子さまが中学校を卒業する時期に前記自宅を明け渡して、元夫に返すという約束が一方で取り交わされていました。
そしてお子さまが中学校を卒業する時期が近づいてきましたが、お子さまの状況や依頼者さまの経済的な状況を考えると、自宅を出てアパートを借りてお子さまと生活をすることは、とてもできませんでした。自宅の明け渡しの時期が近づく中、困った依頼者さまが、相談に来られました。
依頼者さまとしては、裁判でお子さまが中学を卒業する時に自宅を元夫に返すという約束をしたのは事実であり、約束を守らなければならないことも分かっているけど、とても今の生活では自宅を出て、外でアパートを借りて生活をすることはできないと困っていました。
そこで私が、元夫と交渉をして、何とか引き続き自宅で依頼者さまとお子さまが一緒に生活ができないか、話をしてみることになりました。
【相談後】
代理人の弁護士である私から元夫に前述した事情を詳しく書面に書き、家で引き続き生活を続けさせて欲しいとお願いをしました。
夫側としては、既に裁判所で約束が取り交わされていることから、更に明渡の時期を延長することには難色を示しました。元夫が依頼者さまたちが住んでいる自宅のローンを支払っていることを考えれば、元夫の言い分も理解できるところがあります。
しかし元夫には、依頼者さまである元妻とお子さまが自宅を出て、アパートを借りた場合、現在支払っている自宅のローンよりも、場合によっては多くの養育費の支払いをする必要が出てくるかもしれないこと、また何よりお子さまのご事情を考えて、引き続き元妻とお子さまたちが、前述した自宅で生活をすることができるように配慮をして欲しいということをお願いしました。また一生この自宅で生活をさせて欲しいということではなく、あくまでお子さまたちが成長し、独立するまでの期間であることも伝えました。
元夫もお子さまの事情を考えてくれ、4年程度引き続き自宅で生活することを認めてくれました。
【先生のコメント】
離婚後も元妻やお子さまが、元夫名義の自宅(夫は自宅を出て、外でアパートを借りて生活をするなどして)で引き続き生活をすることがあります。お子さまの学校の問題や経済状況など理由は様々であると思います。
本件においては、裁判上の和解で自宅を出る時期が明確に定められているため、元夫が和解の内容に従って手続きを行えば、元妻とお子さまは自宅を出ていかざるを得ない状況に追い込まれます。
しかし一方で元夫はお子さまに対して、養育費の支払い義務があります。お子さまたちが自宅で生活を続けることができない場合、一旦約束で決めた養育費の額についても、改めてその額を増額する調停を申し立てることができます。自宅で引き続き生活ができなくなった場合、改めて養育費を取り決めると、場合によっては住宅ローンの支払いをしている元夫の負担が増える可能性もないとは言えません。
このような事情や一番にはお子さまの事情を一番に考えていただくよう、元夫と交渉をし、その点を理解いただけたことが、本件を円満に解決することができた理由であると思います。