逮捕・勾留された社員に対し除外認定を経て懲戒解雇を適正実施した事例
上遠野 鉄也
弁護士
【ご相談内容】<相談前>
製造業を営む会社において、正社員の男性社員による複数の女性社員へのセクシャルハラスメント行為が発覚しました。さらに社内調査を進める中で横領の疑いも浮上し、当該社員は横領を理由に逮捕・勾留され、刑事手続が開始される事態となりました。
会社としては、重大な非違行為であることから懲戒解雇を検討していましたが、逮捕・勾留という状況下でどのように対応すべきか判断がつかず、また手続に不備があった場合に後日「解雇無効」と争われるリスクへの不安を抱えていました。加えて、セクシャルハラスメントの被害を受けた女性社員への対応を誤れば、二次被害や職場環境の悪化につながるおそれもあり、迅速かつ適切な対応が求められていました。こうした中、事案発覚当日にご相談を受けました。
<相談後>
当事務所では、まずセクシャルハラスメントと横領という複数の非違行為について、事実関係と証拠の整理を行い、刑事手続との関係を踏まえた対応方針を策定しました。その上で、刑事処分の結果を待たずに会社として進めるべき懲戒手続と、慎重に見極めるべき事項を切り分け、全体の対応ロードマップを明確化しました。
並行して、ハラスメント被害を受けた女性社員に対するヒアリング方法や配慮事項、記録の残し方について具体的に助言し、安心して就労を継続できる環境整備を支援しました。
さらに、即時解雇を適法に行うため、労働基準監督署への除外認定申請を実施。非違行為の重大性・悪質性を裏付ける証拠を整理した上で申請書類を作成し、結果として除外認定を取得しました。
その後、就業規則および懲戒規程に基づき、弁明の機会付与など適正手続を履践したうえで、懲戒解雇(予備的に普通解雇)を実施。解雇通知書や関連書面の整備も含めて一貫してサポートしました。
これにより、手続上の瑕疵なく迅速に処分を完了するとともに、被害者対応も適切に行われ、職場環境の維持にもつながりました。
<弁護士からのコメント>
社員が逮捕・勾留されるような重大事案であっても、懲戒手続は刑事手続とは独立して進めることが可能です。「刑事処分の結果を待つべき」との誤解から対応が遅れると、懲戒処分の適時性を欠き、後に解雇無効と判断されるリスクが高まります。
また、懲戒解雇を有効とするためには、就業規則の根拠だけでなく、除外認定の取得や弁明の機会付与といった適正手続を確実に踏むことが不可欠です。特にハラスメント事案では、被害者対応の適否が企業責任にも直結するため、慎重かつ迅速な対応が求められます。
本件のように、事案発覚直後から専門家が関与し、証拠整理・手続設計・被害者対応を並行して進めることで、法的リスクを抑えつつ早期解決を実現することができます。重大な非違行為が疑われる場合には、初動段階での相談が極めて重要です。