婚姻費用•養育費の義務者に失職•無職•低収入等の事情がある場合において、義務者の潜在的稼働能力に基づく収入の認定については、近時、参考になる高等裁判所の裁判例が出されています。
「婚姻費用を分担すべき義務者の収入は,現に得ている実収入によるのが原則であるところ,失職した義務者の収入について,潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが婚姻費用の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される特段の事情がある場合でなければならないものと解される」(東京高裁令和3年4月21日決定 判例時報2515号9頁,判例タイムズ1496号121頁)
「養育費は,当事者が現に得ている実収入に基づき算定するのが原則であり,義務者が無職であったり,低額の収入しか得ていないときは,就労が制限される客観的,合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると評価される場合に初めて,義務者が本来の稼働能力(潜在的稼働能力)を発揮したとしたら得られるであろう収入を諸般の事情から推認し,これを養育費算定の基礎とすることが許される」(東京高裁平成28年1月19日決定 判例時報2311号19頁、判例タイムズ1429号129頁)
これらの裁判例を踏まえると、婚姻費用•養育費の支払義務者が就労が制限される客観的,合理的事情がないのに単に労働意欲を欠いているなどの主観的な事情によって本来の稼働能力を発揮しておらず,そのことが養育費の分担における権利者との関係で公平に反すると認めれる場合には、義務者の潜在的稼働能力に基づく収入認定がなされることになります。
あなたのご事案では、自己都合退職の経緯が現在勤務している会社が破産予定との事ですが、破産予定を裏付ける資料の提出等がないというご事情からすると、就労が制限される客観的,合理的事情を立証できているのか疑義があるところであり、退職前の収入同等程度の潜在的稼働能力が認められる可能性があるように思われます。
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