夫が遠くの実家に子供を連れ帰ったケース(監護者指定、子の引渡しと離婚)
山﨑 倫樹
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
相談者Aさんが、あわただしい様子で相談に来られました。
お話をうかがうと、離婚協議をしていた夫が、娘を保育園に送っていくと言って家を出たまま帰らず、娘も保育園にも登園していない、さらに夫からは遠方にある実家に娘を連れて帰るというメールが届いたということでした。
夫は病気を抱えていましたし、実家といっても、夫の老母がいるだけであり、娘さんの安全を危惧していました。
【相談後】
お話をうかがい即座の対応が必要と判断しました。
ご相談の2日後には、現地の家庭裁判所に向けて手続の申立てを行いました。
その内容は、
①娘の監護者をAさんに指定する審判(監護者指定)
②Aさんに娘を引渡すよう命じる審判(子の引渡し)
さらに、娘さんの健康が危惧されたことから、
③正式な審判の前にでも仮に引渡しを命じるよう求めました(仮処分申立て)。
審判の審理の中では、夫の病状が娘を養育するのに耐えられないこと、夫から送られてくる写真から娘さんの体調に異変が生じているおそれがあること、Aさん側で娘を養育する環境が万全であること、そもそも娘さんを突然連れ帰った夫の行為が重大な問題であることなど、Aさんが次々と提供してくださる事実や資料をもとに、考えられる限りの主張を尽くしました。
裁判所の動きは、こちらからすると腰が重くやきもきする毎日でしたが、数か月間の審判を経て、Aさんへの監護者指定、子の引渡し審判をいただきました。
そして、審判から1週間後、飛行機で再び現地を訪れ、裁判所の執行官とともに、夫の実家近くで娘さんを引き取ることができました。
また、娘さんの引取りが落ち着いたころ、離婚訴訟についても本格的に手続を進め、Aさんが親権者となり夫が養育費を支払うことを定めるとともに、夫が娘と面会交流する場合の詳細な条件を定めて、離婚が成立しました。
【弁護士からのコメント】
相手が夫とはいえお子さんを突然引き離され、数カ月にわたって会えなかったAさんのお気持ちは、毎日張り裂けるばかりだったと思います。
しかし、そんな中Aさんは、審判で役に立ちそうな事実や資料を積極的に提供してくださり、私とまさに二人三脚で解決まで至ることができました。
遠方の地、桜の咲く中で娘さんを引き取ったとき、Aさんが涙を流しながら娘さんを抱きしめていたお姿を、忘れることはありません。
反対に、夫が娘さんに愛情をもっていたことも事実だろうと思います。
それだけに、引渡しの際、執行官の説得を受け入れ、娘さんを抱っこして現れた夫の表情にも、考えさせられるものがありました。