財産分与請求調停(申立人)及び不貞慰謝料請求訴訟(原告):配偶者の不倫からの出奔に続く長期別居で婚姻関係が完全に破綻していた御依頼者様が配偶者に対して求めた財産分与、慰謝料が最終的に認められた事例
小杉 和
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
配偶者が不倫をした挙げ句家を出奔して以来20年以上別居し、その間、配偶者が生活費を入れなかったことから苦労して子供達を1人で育てあげた御依頼者様でした。
長期間の別居により婚姻関係は既に破綻しており、御依頼者様は相手配偶者に対してこれまでにかかった婚姻費用(婚姻期間中の生活費)と長年住み暮らした配偶者名義の自宅の財産分与を求めたいとの御希望を持たれて相談にいらっしゃいました。
相談の時点ではまだ離婚は正式には成立していませんでした。
【相談後】
婚姻費用についてはあくまで請求時点からの費用のみが認められるという原則の下、認められませんでした。財産分与については、調停の内容として、配偶者名義の自宅(配偶者の財産)と御依頼者様の配偶者に対する不貞慰謝料請求債権を同額とみなして相殺する形で、お互いに支払なしという内容の調停案が最終的に裁判官からなされました。
自宅については、そのローン支払について御依頼者様が多額の支援をしており、購入当初御依頼者様のお父様がその頭金を出したりしていた事情もあり、このような机上での数字の帳尻合わせだけの、当事者の真の利益の在り方について何らの配慮もない調停案は、御依頼者様には到底受け入れ難く、この調停案を飲むことはせず、事件は審判に移行しました。
なお、この調停案を提示するにあたり、裁判官からは、この調停案を受け入れない場合には、調停案で認めている不貞行為の賠償金については今後自ら訴訟を起こして回収するようにとの、調停案受諾への圧力ともとれる発言がありました。御依頼者様は納得していなかったので、その圧力に屈することはありませんでした。後述しますが、これが結果として吉と出ました。
審判では、話合いによる合意で結果を作り出す調停とは異なり、裁判官が資料を基に一方的に裁断することになります。過去に配偶者が、自宅については御依頼者様に渡す旨の出奔前の約束の書面が残されていて、それについて配偶者も自ら作成したものであることを審判期日で認めたことから、この書面が決め手となり、結果的に審判において、自宅については御依頼者様が取得する旨の判断が出され、めでたく自宅は御依頼者様のものとなりました。
そして、最後に元配偶者の不倫について元配偶者と不倫相手両名に対して不貞慰謝料請求訴訟を提起しました。
この元配偶者及び不倫相手を被告とした不貞慰謝料請求訴訟においては、配偶者が不倫相手と結婚していることや、御依頼者様の主張が具体的であり事実の経過にも沿ったもので信用性があり、また他の人間の証言などもあったことから、御依頼者様の主張が認められ、不倫の存在自体を否認していた配偶者らの反論は一切認められない形で、御依頼者様の完全勝訴という形で第一審が終わりました。
その後、配偶者らは控訴したものの、控訴審でもその主張は認められず、最終的に御依頼者様の勝訴で事件は終わりました。
【先生のコメント】
長期間の別居期間がある場合には、離婚が認められることになります。今回の事例では、別居期間が長く、既に関係が冷めており、離婚について合意済みでした。
婚姻費用についてはそれを配偶者に払ってもらえることを知らない方も多く、これまで生活費を入れてもらえず困っている場合は、直ちに支払を求めることをお勧めします。
なお、本事例では、お子様が既に成人していたことから、離婚後の養育費は問題になりませんでしたが、小さなお子様がいらっしゃり、その子を養育監護されている方は相手方に対して子が成人するまでの養育費を請求することができます。
調停ではお互いの譲歩を求めて合意成立を目指しますが、無理な(受け入れ難い)調停案を示す裁判官、調停委員もいます。人間ですから相性もあるかと思います。当時の調停委員との相性が悪く、その影響で裁判官がこちらの意向を十分反映しない案が出たのではないかと思われます。
調停では、感情や肩入れが影響することもあるとご認識いただくと有益です。
最終的に自宅を財産分与で手にできた御依頼者様でしたが、その決め手となったのは配偶者が作成していた約束の手紙でした。裁判官は証拠がなければ事実の認定ができず、結果として有利な認定をしてもらえないことになります。証拠を意識して調停に臨むことの大切さを御理解いただけたらと思います。役に立ちそうなものは必ず証拠化して保存し(写真・コピー・動画・音声等)、大切に保管しておいてください。後日必ず役に立つ時がきます。
慰謝料請求については長くかかりましたが最終的に認められることになりました。しかし、配偶者らが破産を選択したことで、結局御依頼者様が裁判で認められた賠償金を手にすることはできない見通しです。破産は国の制度ですが、すっきりしない決着となりました。