長時間労働により心筋梗塞を発症したトラック運転手について,勤務先に損害賠償を請求し,1200万円を支払う内容の裁判上の和解が成立した事例
津田 和之
弁護士
【ご相談内容】★相談内容
相談者は,運送会社で長年トラック運転手として勤務し,配送のほか,荷物の積込みや荷崩れを防ぐための作業などに従事していました。長時間労働に加え,早朝からの勤務や長い拘束時間が続く中,勤務中に心筋梗塞を発症しました。
入院治療とリハビリを受けましたが,心機能の低下による運動耐容能の低下などの後遺障害が残り,労災認定と障害等級11級の認定を受けました。発症前と同じように働くことが難しくなったことから,勤務先に対する損害賠償の請求についてご相談を受けました。
★解決の方針・結果
1 長時間労働と会社の対応の立証
労働基準監督署の調査資料などを確認し,発症前3か月の時間外労働が月平均80時間を超えていると認定されていることに加え,拘束時間の長さや勤務時間の不規則さなど,労働時間の数字だけでは表れない業務の負担も具体的に主張しました。
また,発症前に相談者が勤務時間や拘束時間の改善を求めていたことを示すLINEのやり取りを提出し,会社が改善に向けた対応をしていなかったことを指摘しました。
2 持病や後遺障害に関する会社の主張への反論
会社は,高血圧などの持病や生活習慣の影響を主張していました。これに対し,相談者がかかりつけ医に定期的に通院し,投薬治療を受けていたことや,会社が健康診断結果を把握しながら労働時間の短縮などの措置を講じていなかったことを主張しました。
さらに,診断書や心肺運動負荷試験の結果などに基づき,心筋梗塞後の身体の状態や就労上の制限を説明しました。相談者が復職を希望していたにもかかわらず,復職予定日の前日に会社が従前の合意を覆し,身体の状態に応じた具体的な勤務を提示しなかった経緯も明らかにしました。
3 1200万円での和解成立
勤務先に対して損害賠償請求訴訟を提起し,業務の過重性,持病等による減額の可否・程度,休業損害や後遺障害による逸失利益などについて主張・立証を行いました。
その結果,既に受給した労災保険給付とは別に,会社が相談者に解決金1200万円を支払う内容で,裁判上の和解が成立しました。
★解決のポイント
本件では,労基署の調査資料,勤務改善を求めたやり取り,医療資料を用い,業務の負担と会社の対応,発症後の就労制限を具体的に説明しました。持病等の影響に対しても,通院・治療の実態を踏まえて反論したことが,解決につながりました。
長時間労働による脳・心臓疾患の労災事件では,労働時間や業務の負担を具体的に立証するとともに,医学的な資料を踏まえて発症との関係や後遺障害の影響を検討する必要があり,労災認定基準や損害賠償に関する専門的な知識が求められます。当事務所では,これまで,こうした事件を数多く取り扱ってきた経験を有しており,その知識と経験を活かして対応しています。