玉掛け作業中の労災で過失相殺と損害分担交渉により和解成立した事例
上遠野 鉄也
弁護士
【ご相談内容】<相談前>
運送業を営む会社において、ドライバーが配送先での玉掛け作業中に負傷する労働災害が発生しました。玉掛け作業はクレーン等による荷の吊り上げに伴う危険性の高い業務であり、本件でも安全管理上の問題が疑われる状況でした。
本件は、被災したドライバー本人だけでなく、配送先の荷主や元請事業者も関与する複雑な事案であり、会社としては、被災者への補償や損害賠償の対応方針、関係者間の責任分担、労災保険と民事責任の関係整理など、多くの課題を抱えていました。さらに、損害賠償請求が訴訟に発展する可能性への不安もあり、適切な初動対応がわからないまま時間が経過することへの危機感からご相談に至りました。
<相談後>
当事務所では、事故発生直後から関与し、まず労災保険手続や労働基準監督署への対応について助言するとともに、現場状況や作業記録、関係者の証言などの証拠保全を徹底しました。初動段階での証拠確保により、その後の交渉を有利に進める基盤を整えました。
次に、本件の重要な争点である過失割合について、事故状況や作業手順を詳細に分析し、被災者側にも一定の過失が認められること、さらに荷主や元請事業者にも安全配慮義務上の問題がある可能性を整理しました。その上で、過失相殺を前提とした損害額の見通しを提示し、会社としての対応方針を明確化しました。
被災者からの損害賠償請求に対しては、治療費・休業損害・慰謝料等の内容を精査し、労災保険給付との関係も踏まえた適正な賠償額を算定したうえで交渉を実施。その結果、過失相殺を反映した金額で和解が成立しました。
さらに、荷主および元請事業者に対しても、事故への関与や責任の所在を踏まえた損害分担を求める交渉および訴訟対応を行い、最終的には各当事者間で合理的な分担による和解が成立しました。
<弁護士からのコメント>
労働災害対応においては、事故発生直後の初動がその後の解決を大きく左右します。現場の証拠や関係者の記憶は時間の経過とともに失われるため、早期に証拠保全を行うことが、過失相殺の主張や責任分担交渉の前提となります。
また、労災保険による給付があっても、民事上の損害賠償責任が当然に消滅するわけではなく、慰謝料などについては別途対応が必要です。さらに、複数の事業者が関与する場合には、自社のみが全責任を負うのではなく、関係者間で適切な損害分担を図る視点が重要です。
本件のように、早期から法的観点に基づいた整理と交渉を行うことで、過度な負担を回避しつつ、紛争の長期化を防ぐことが可能となります。労働災害が発生した際には、速やかに専門家へ相談することが、適正かつ円満な解決につながります。