要介護者の誤嚥死亡事故における、介護者の法的責任について

倫理的に問題のある質問であるため、回答を拒否なされても結構です。

「ファミリー☆ウォーズ」という映画があります。
その映画において、とある問題の抱えた痴呆症の父親を、家族総出で餅を食べさせて間接的に殺人を画策するシーンがありました。極めて倫理観の欠如している映画で不快な気分になりましたが、同時に一つの疑問が生じました。

すなわち、例えば痴呆症の父親と息子が同居している場合において、父親へ餅などの誤嚥させやすいものを息子が毎食準備。その結果として父親が窒息死した場合において、息子が何らかの罪に問われる可能性が現実的に発生しうるか否かです。

息子も同様の料理を食べていた場合は悪意の証明が難しいでしょうから、保護責任者遺棄罪に当たるとも考えづらいです。また、救助義務を怠ったか否かの問題においても、誤嚥状態になった対象者を救助出来なかった場合に罪に問われた、ということは寡聞ながら聞いたことがありません。無論、介護施設に預けた両親が誤嚥事故で死亡し、遺族が介護施設を訴えた、という事例は相当数あるかと思いますが、今回のケースでは訴える可能性がある人は現実的にいない状況です。

もし有罪となる可能性がある場合は判例なども示していただければ幸いです。

あくまでも思考実験的な内容かと思いますが、回答させていただきます。
論ずるべき点は多く、かならずしも網羅的な回答ではありませんがご容赦ください。

殺人罪の成立を検討するとして、犯罪の客観面には、実行行為・結果・因果関係というものがあります。
結果(父親が死亡したこと)、因果関係(餅を喉に詰まらせて窒息死したこと)は問題ないとして、餅を出すことが殺人罪の実行行為に当たるかという問題があります。
殺人罪の実行行為とは、「人を死亡させる現実的危険性がある行為」と理解されています。
餅については誤嚥の可能性はそれなりに広く知られていると思いますから、例えば砂糖で人を殺そうとするような場合に比べて危険性は高く、更に誤嚥事故を狙って毎食繰り返していた事情があるのであれば、現実的危険性とまで言える余地はあると思われます。

また、犯罪は不作為によっても成立する可能性があります。
事故で誤嚥になったとして、自分しか救護する者がいない状況で、救急車を手配するなどの救護が容易であり、救急車を呼べば救命が可能であったにも関わらず救護しなかったケースでは、殺意があれば不作為での殺人罪が、殺意がなければ保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性はあります。

殺人罪については親告罪ではありませんので、告訴等する人がいなかったとしても警察が捜査をする可能性はあります。
当然、殺意の立証などは容易ではありませんから、検察官が最終的に起訴するかどうかは証拠次第ということにもなります。

ご回答ありがとうございます。
餅という古来より日本で親しまれた食品であれば、こんにゃくゼリーのように規制されにくく、かつ主食として出しても不自然では無いものです。

厚生労働省の人口動態調査によると、「不慮の事故」による死因のうち、食物が原因となった窒息による65歳以上の高齢者の死亡者数は、年間3,500人以上にのぼっているとのことです。当然、この死亡した高齢者の方々が独居老人ばかりでは無く、ご家族がいた場合においても、ご不幸ながら亡くなられるケースも多々あるかと思います。そして、そのような状況において家族が何らかの罪で起訴されたという事例は、調査してみたところ見つかりませんでした。

上記の事項を加味した場合、今回のケースでは可能性の観点からは完全に否定し切れないものの、法的に有責になる可能性は極めて低いとの結論が得られました。
思考実験として大変興味深いものでした。

非倫理的な質問にも関わらず、迅速にご回答いただきありがとうございました。