懲戒事由に相当するセクシャルハラスメントや不法行為に対する会社の対応と損害賠償請求について

2019年より1年ほど、同僚男性より「上司と体の関係を持って契約社員から社員に登用されたんだろう」「○○さんや○○さんとも肉体関係を持ってるんだろう」などと事実無根の事を執拗に聞かれ、中には他従業員にも吹聴されているものもあり、
その他身体的特徴を揶揄する悪口や根拠のない私の社内評価に関する悪口(全くの無根拠、むしろ真逆)を他同僚に吹聴されるなどして長期間苦しめられました。

その事を本人に止めていただくよう何度か注意しましたがなかなかやめていただけず、
2020年1月には「今後必要最低限以外の接触をしないこと」「損害賠償請求や民事訴訟も考えている」といった旨の文書を差し出し、やっとのことで暴言や噂話をやめてくれました。

その後、相手は昇進したので他部署に異動したのですが、同じ職場で働いているため顔を合わせる機会もあり、私が居ることもわかっているはずなのに私の部署に顔を出すなどするため仕事の日は気が気でなく、
私は精神的に参ってしまい、職場で動けなくなってしまうこともあり、夜も眠れない日が増え、食事が喉を通らない日も増え体重は10kgほど減り、心療内科を受診するに至りました。現在は朝昼晩と精神安定剤を飲み、不眠もあるので睡眠薬も服用しています。


2021年10月、本件について会社のハラスメント相談窓口に相談し、その後人事係より私へのヒアリング、加害者への事実確認がなされ、相手は事実を認め「加害者の行った行為は就業規則上の懲戒事由に相当し、重く受け止めている」と説明を受けました。
私は相談ならびにヒアリングの際、「相手と顔を合わせてしまう就業環境では、いつまでたっても心療内科の通院や精神安定剤の服薬もやめられないし、最悪の場合退職せねばならないのではと不安で仕方がない。できる事ならば相手の顔を見なくて済むよう相手を配置転換してほしい」とお願いしたのですが、
会社の見解として「事案発生から年数が経っており、またあなた自身が注意勧告してからはそういった言動がないことを加味して、加害者へは厳重注意を行うにとどめている。職場で顔を合わせてしまうのは仕方ないことと思ってほしい」とのことでした。
ハッキリと「懲戒事由に相当する言動」だと認めているのにも関わらず、部署の人事からの厳重注意(懲戒処分ではなく単なる勧告)のみで懲戒処分も何もなく、被害者である私への不利益回復措置(加害者の配置転換等)もなんら行なわれないという結果となってしまいました。

【質問1】
懲戒事由に相当するセクシャルハラスメントや不法行為があったと会社が認めたにもかかわらず、会社は懲戒処分を行わず厳重注意にとどめ、私への不利益回復措置も講じないそうですが、妥当な対応でしょうか?

【質問2】
質問1に記載した会社の対応では被害者である私に対する不利益回復がなされていないと思いますので、加害者には改めて損害賠償請求を行おうと思います。金額としてはどのくらいが妥当でしょうか?

セクハラや暴言は2018年末から2019年末頃にかけてのもので、
「上司と肉体関係を持った」は1年間何度も言われ続け、同僚の前で「口臭いぞ!喋るな!くっさ!」「死んだら?」「人生で何一つ正しい事してない」「上司からも嫌われて評価も低い」等言われました。
スマホで発言をメモしたものを印刷し2020年にそれを見せ相手は「間違いなく俺が言った」と認めたLINEが送られてきて、スクショも残っています。

【質問1に対する回答】
事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)において、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合には、「被害者と行為者を引き離すための配置転換」等の措置を講ずることが挙げられておりますので、容易に配置転換ができるような場合には、会社の安全配慮義務違反が認められることもあります。

国家公務員のケースではありますが、加害者を別の部署に配置するなど適切に配慮すべき安全配慮義務を怠ったとして、国の安全配慮義務違反を認めた裁判例もございます(静岡地裁令和3年3月5日判決)。

【質問2に対する回答】
慰謝料については、加害者の行為態様や、通院状況、後遺障害の有無等の具体的な事情によって変わってきますので、一度、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

ご回答ありがとうございます。
本件はパワーハラスメントではなくあくまでセクシャルハラスメントとして取り上げられたものであり、
また、パワハラ的な言動もありましたが、同じ部署で働く同僚であった加害者と私の間には優越的な関係はなく(寧ろ私の方が年齢や勤続年数は上)、パワーハラスメントとは認定されにくいと心得ています。

セクハラにしても今回の会社の対応は安全配慮義務違反を問うことは出来そうとは見受けられるのですが、
①安全配慮義務違反として訴訟を提起
②加害者の配置転換を要求
③加害者への懲戒処分を要求
どれが妥当でしょうか?

パワーハラスメントに関する指針を挙げさせていただきましたが(なお、勤続年数が下の者からのパワハラもあり得ます。)、セクシャルハラスメントについても、同様の指針が定められており、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成18年厚生労働省告示第615号)において、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合には、「事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること」等が適正な措置として挙げられております。

①会社の安全配慮義務違反の主張については、配置転換を容易にできる状態にあったか否かにもよりますが、容易に配置転換できる状態であったにもかかわらずこれを行わなかったのであれば、安全配慮義務違反が認められる余地はあるかと思います。

②加害者の配置転換の要求については、従業員の配置は会社に決定権がありますので、配置転換を法的に求めることはできないものと考えます。
こちらは、事実上、配置転換等の措置をとるよう求めるほかないかと思います。

③加害者の懲戒処分の要求についても同様で、懲戒権は会社にありますので、懲戒委員会などに懲戒処分を求めることしかないかと思います。
また、本件が厳重注意処分で終わっているとのことですが、戒告などの懲戒処分がなされているのであれば、二重処罰に該当するおそれがありますので、会社としては更なる懲戒処分は行わないものと考えられます。

ありがとうございます。
①について、
これまで会社は加害者と同役職の従業員を「社内恋愛で当人同士が親密すぎるから」等下らない理由でも配置転換(役職は同じに、支店を変える)などを頻繁に行なっているので、配置転換が難しいとは考えにくいと思われます。
③について、弊社の就業規則では、懲戒処分を「譴責、減給、謹慎、降格または転職、諭旨解雇、懲戒解雇」の6つに分けており、今回の厳重注意はそのどれにも該当せず、
所属課の人事係長が自らの名前で「厳重注意書」なるものを発出し、加害者に署名捺印を求め「次はないぞ」と戒めたにすぎなく、懲戒処分には至っていないと明言しておりました。

弁護士に相談すれば、会社の安全配慮義務違反の指摘、加害者の配置転換の要求、懲罰委員会の開催を要求する
上記の事ができますでしょうか?

弁護士に相談したからといって、必ずしも上記のことが実現できるわけではありませんが、会社としても、訴訟等の法的手続に移行する前に解決したいと考える可能性も相当程度あります。

会社の安全配慮義務違反について主張することは考えられますが、この場合に求める内容としては、損害賠償や加害者の配置転換になるものと考えられます。

懲罰委員会の開催については、懲戒処分ではないにしても、事実上注意を行って一度終了させていることからしますと、会社としては、二重処分をおそれて懲戒処分を行わない可能性も高いかと思われます。