【裁判】【損害賠償請求された側】動画の違法アップロードを疑われたもののこちらがアップロードした証拠が不十分として訴えの取下げに至った事例
村木 孝太郎
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
数年前に、インターネット上に動画を違法アップロードしたとして、その動画の制作会社から損害賠償請求訴訟が提起されました。
依頼者本人と相手方の代理人は、訴訟提起前の段階で連絡を取っていたようですが、なぜかいきなり訴訟を提起されてしまったという経緯がありました。
依頼者本人としては、だいぶ昔のことでもあり、自分がアップロードしたことの明確な記憶はないとのことでした。
【相談後】
代理人として訴訟の対応をすることとなりました。
アップロードしたのが依頼者とされている根拠は、動画のアップロードに使われたアカウントの登録情報に依頼者の住所と氏名が登録されていたということでした。ただ、その動画をアップロードするサービスを利用するために、住所や氏名を登録する必要もないし、住所と氏名を知っていれば誰でも登録できるようなシステムでした。
依頼者本人が登録したという根拠はないようでしたし、依頼者本人としても登録した覚えがないとのことでした。
また、アップロードしたとされる当時のプロバイダが分かっていたので、被告からそのプロバイダに照会をかけて依頼者との契約関係があったか確認してもらったところ、プロバイダと依頼者との間には契約関係がなかったことが分かりました。
そのため、依頼者がアップロードしたことの根拠がないことから、訴えが取り下げられる形で終了することができました。
【コメント】
訴訟対応については、和解の可能性も視野に入れた対応をしたいとのことだったため、書面等ではあまり攻撃的な表現を避けました。
当初は、何かしら依頼者がアップロードした具体的な根拠が出てくれば一定の金銭を支払って和解をすることを考えていました。
しかし、ふたを開けてみれば、請求の根拠は、アカウントの登録情報に依頼者の住所と氏名が登録されていたということだけでした。
アップロードに使われたプロバイダからも、契約関係がないという回答があったので、これは依頼者がアップロードした根拠が薄いというしかなく、依頼者も和解する気になれないようでした。
実際に、自分がアップロードしたということが分かれば、証拠上明確でなくても和解を勧めることは考えますが、今回はむしろ依頼者はアップロードしていないというような印象を受ける証拠関係だったので、何も支払う必要はないと考えて対応しました。
結果的に、訴えの取下げという形で早めに終了できたので、依頼者への精神的負担も少なくて済み良かったと思います。