【事務所の事例】家庭裁判所の遺産分割調停に不満があり、即時抗告することで解決できた事例
松枝 弘樹
弁護士
【ご相談内容】法定相続人は、ご依頼者様、妹、姉の3人で、遺産は、複数の不動産と預貯金約1000万円という事案で、相談者様、妹と姉との間で、どの不動産を誰が取得するかが最大の争点となっておりました。
3人での話し合いは平行線を辿ったところ、相手方である姉が家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。
ご依頼者様は、調停委員に自分の意見を伝えれば理解してもらえると思い、調停段階で、弁護士に相談にするまでには至りませんでした。
その後、何回かの調停期日を重ね、ご依頼者様は、ご自身名義の建物が建っている土地を取得したいという希望を何度も調停委員に伝えたつもりでいました。
そして、相手方である姉が取得した不動産よりもご依頼者様が取得する不動産の価値が高ければ、その差額を支払う気持ちがあることも伝えたつもりでした。
結局、調停でも姉との話し合いは平行線のままで、審判手続きに移行することになりました。ご依頼者様としては、調停委員に何度も自分の意見を伝え、その意見も決して不合理な内容ではないため、ご自身の意見が反映された内容の審判が出るはずだと思っておられました。
しかし、蓋を開けると、ご依頼者様名義の建物が建っている土地を相手方である姉が取得するという審判が出されました。
そこで、ご依頼者様は、慌てて、当事務所を訪れました。
当事務所の方針としては、高等裁判所に対して、即時抗告手続きを行うことにしました。
ここで、相続開始から即時抗告が行われるまでの流れをもう一度確認しておきたいと思います。
まず、被相続人がお亡くなりになられて、相続が開始したら、法定相続人間で遺産分割協議を行います。
しかし、遺産分割の内容について合意が法定相続人間で合意ができなければ、遺産分割協議は成立しません。
そこで、当事者間での合意形成が難しい場合には、法定相続人のうちの誰かが、家庭裁判所に対して、遺産分割調停を申し立てることになります。
もっとも、遺産分割調停も話合いの手続きですので、いくら期日を重ねても調停が成立しないこともあります。
そのような場合、遺産分割調停から遺産分割審判に移行します。遺産分割審判においては、裁判所が最終的に審判を下すことにより、結論を出します。
しかし、審判を受けた当事者は、審判に対して、不服申し立てを行うことができます。これが「即時抗告」です。
本件では、即時抗告審において、弁護士があらためて、ご依頼者様のご意向を主張書面と証拠の形で提出し、ご自身名義の建物が建っている土地をご依頼者様が取得することが合理的であること、不動産の取得金額に差が出た場合には、代償金を支払う準備があることを丁寧に説明しました。
そうしたところ、ご依頼者様名義の建物が建っている土地をご依頼者様が取得し、不動産の取得金額の調整を預貯金で行うという決定が下されました。
【先生のコメント】
調停手続きや審判手続きは、弁護士に依頼せずに、ご本人様が行うことも可能な手続きになっております。
もっとも、法律的な論点で争いとなっている場合や相手方に弁護士が就いている場合などには、ご本人様のご意向が十分に裁判所に伝わっていないのではないかと思われるケースが見受けられます。
そのような場合、弁護士が代理人であれば、主張を整理し、どの部分を強調すべきか、そのために証拠は何かを考えながら、調停手続きを進めることができます。
本件においても、ご本人様のご意向が十分に裁判所に伝わっておらず、その結果、意に反する審判が下されてしまいました。
その後、私たちが代理人となり、即時抗告審で判断が覆りましたが、できることであれば、少しでもご不安を感じた際には、すぐに弁護士に相談されることをおすすめします。