被相続人の死亡から四年以上経過して巧妙な書状を送ってきたサラ金に対応して、被相続人の死亡から四年以上経過しているにも拘わらず相続放棄の申述が認められた事例。
喜多 芳裕
弁護士
【ご相談内容】 Aさんのところに、全く心当たりがない Cという個人名で「親展」で封書が届きましたので、Aさんは開けてしまいました。
開けてみると、D社がBにお金を貸していることを示す書類のコピーが同封してあり、「D社は四年前に死亡したAさんの兄Bにお金を貸しているが、E社がD社を合併しているので、 Aさんが相続しているかどうか2週間以内に返事が欲しい。」というものであり、封書の差出人は個人名のCですが、連絡先はサラ金のE社になっていました。
Bは結婚しておらず、妻子はなく、Aさんは長らくBとは音信不通であり、死亡の事実は親戚を通じて暫く後に聞いたものの、 Bには財産は何もなく、何も相続していません。
しかし、債務があるということも知らなかったので、相続放棄の申述はしていません。
Aさんは相続放棄をしようと考えて裁判所に問い合わせたところ、相続放棄の申述は被相続人の死亡を知った時から原則として3か月以内しかできないということでした。
そこで、私のところに相談に来られたのですです。
Aさんが「 Bには債務はない。」と思って相続放棄をしていなかった場合、その後債務があることがわかってから3か月以内であれば相続放棄ができる可能性があるのですが、この手紙は非常に巧妙に作られています。
差出人が全く心当たりのないサラ金の名前が書いてあれば開封しない可能性がありますが、封筒にはどこにもサラ金の表示はなく、差出人は個人名で「親展」となっているのです。
この手紙が「Bに対する債権の請求書」という形をとっているのであれば、受け取った人は弁護士などと相談して、受け取ってから3か月以内に相続放棄の申述をするでしょう。
しかし、この手紙は「Bに対する債権の請求書」という形ではなく、「ア E社がBに対して債権があること。」を示し、「イ あなたはBの相続をしているかどうか。」と尋ねているだけで、通常これを見た人は「相続していない。」という返事をするでしょう。
Eはそれから三か月以上放置しておき、その後Aさんに対して、「Bの債務の相続人としてBに対する債権を払え。」と請求をしてくるのでしょう。
Aさんがこの時点で相続放棄をしようと思っても、Eは「Aは3ヶ月以上前にBの債務を知っていること(ア)を前提として、イの回答をしており、それから3ヶ月以上経過しているので、相続放棄の申述はできない。」と主張するつもりなのでしょう。
この件については、Bの死亡四年以上経過していましたが、裁判所に詳細な説明をし、 相続放棄の申述は認められました。