家庭裁判所から届いた審判書について、「申立てた養育費の額と乖離がある」「提示された親子交流の条件を受け入れがたい」といったお悩みをお持ちではないでしょうか。
そのような場合は、定められた期限内に即時抗告という不服申立ての手続をとることで、高等裁判所にて審理を再度行ってもらうことが可能です。
これにより、審判の基礎となった事実認定や提出資料の精査がやり直され、判断が変更される可能性が開かれます。
この記事では、即時抗告の基本と控訴・上告との違いから、即時抗告ができる主な場面、手続ごとに異なる期限と起算点、抗告状の出し方から抗告審の決定までの流れ、メリットと注意点などについてを解説します。
確定した審判は、原則としてあとから覆すことができません。
審判や決定に納得できないまま何もせずにいると、決められた期限を過ぎた時点でその内容が確定してしまいます。
まずは自分のケースで何日以内に何をすればよいのかをつかみ、納得できる結論に向けて動きましょう。

即時抗告は、裁判所が出した決定や命令、審判に不服があるときに、上級の裁判所へ出す不服申立てのことです。
たとえば、養育費の金額を定めた家庭裁判所の審判に納得できない場合、その審判をした家庭裁判所に抗告状を出すと、事件は高等裁判所へ移り、そこであらためて審理されます。
控訴や上告は、判決に対する不服申立ての方法です。
判決以外の裁判に対して控訴をすることはできませんし、審判に対して上告をすることもできません。
不服を申し立てたい裁判が判決なのか、決定・審判なのかによって、使う手続の名前も、期限も変わります。
即時抗告 |
控訴・上告 |
|
|---|---|---|
対象となる裁判 |
決定・命令・審判 |
判決 |
期限 |
手続ごとに異なる(家事審判は2週間、民事訴訟法上の決定は1週間など) |
判決書の送達を受けた日の翌日から2週間 |
審理の中心 |
提出された書面の検討が中心 |
法廷での口頭弁論 |
申立ての提出先 |
原決定・原審判をした裁判所 |
原判決をした裁判所 |
判断する裁判所 |
上級の裁判所(多くは高等裁判所) |
上級の裁判所(高等裁判所・最高裁判所) |
実務上いちばん大きな違いは期限です。
控訴は一律で2週間ですが、即時抗告は根拠となる法律によって1、2週間の差があります。
まず自分のケースがどの法律に基づく手続なのかを確認することが、最初の一歩になります。
決定や命令に対する不服申立てには、即時抗告のほかに通常抗告と呼ばれるものがあります。
通常抗告は、その決定を取り消してもらう利益がある限り、いつでも申し立てることができる不服申立てです。
これに対して即時抗告は、法律で定められた短い期間内にしなければならないという制約がかかります。
もう一つの違いが、原裁判の執行を止める効力の有無です。
通常抗告には、不服を申し立てただけで手続の進行を止める効力はありません。
一方、民事訴訟法334条1項は、抗告のうち即時抗告に限って執行を停止する効力を認めています。
つまり、即時抗告は「期限が厳しい代わりに、原裁判の効力をいったん止める力を持つ」不服申立てだと整理できます。
すべての決定や審判に対して即時抗告ができるわけではありません。
その審判について「即時抗告をすることができる」と法律に書かれていなければ、この手続を使うことはできません(家事事件手続法の85条1項)。
また、手続にかかった費用の負担を誰にするかという判断部分だけを取り出して即時抗告をすることも、同条2項で認められていません。
自分のケースで即時抗告が可能かどうかは、担当の裁判所書記官か弁護士に確認するのが確実です。

即時抗告は、家庭裁判所の審判だけでなく、民事執行や民事保全、破産手続など、さまざまな場面で用意されています。
ここでは、実際に相談が多い場面を分野ごとに取り上げ、どのような裁判に対して即時抗告ができるのかを具体的に見ていきます。
ご自身の状況に近い項目から読み進めていただいて構いません。
離婚を前提とした話し合いや別居中の生活費(婚姻費用)をめぐって、調停が不成立になると、家庭裁判所は自動的に審判へ移行して金額を決めます。
この審判で決まった月額に納得できないとき、即時抗告をすることができます。
養育費や婚姻費用の審判は、家事事件手続法の別表第二に分類されています。
別表第二の事件では、抗告審でも相手方の言い分を聴く手続が用意されており、双方の主張を突き合わせたうえで判断がされます。
収入資料の評価、私立学校の学費や医療費といった特別な出費の扱い、算定表からの修正が必要かどうかなど、金額を左右する要素は多く、抗告審で見直しの余地があるかは事案によって異なります。
子どもに関する審判も、即時抗告の対象になります。
親子交流の頻度や方法を定めた審判、親権者を変更するかどうかを決めた審判、子の引渡しを命じる審判などが、これにあたります。
これらの事件では、家庭裁判所調査官による調査の結果が判断の土台になっていることが多くあります。
調査報告書の内容と審判の結論のつながりに疑問があるとき、あるいは調査の後に子どもや親の状況が変わったときは、抗告理由として整理できる可能性があります。
どの点を争えば意味があるのかは、審判書の理由部分を読み込まなければ判断できないため、審判書を手元に置いて相談することをおすすめします。
遺産分割調停がまとまらず審判に移った場合も、出された審判に対して即時抗告ができます。
不動産の評価額、特別受益として持ち戻す範囲、寄与分を認めるかどうか、現物で分けるか換価して分けるかといった点が、争いになりやすい部分です。
遺産分割の審判は、確定すると遺産の帰属が決まり、これを前提に不動産の名義変更などが進みます。
いったん確定した後に内容を争うことは難しくなるため、審判書を受け取った段階で内容を精査し、期限内に判断する必要があります。
相続放棄の申述をしたところ、家庭裁判所がこれを受理せず却下する審判を出すことがあります。
家事事件手続法201条9項は、限定承認または相続の放棄の申述を却下する審判について、申述をした本人が即時抗告をすることができると定めています。
却下される典型的な理由は、相続の開始を知った時から3か月という熟慮期間を過ぎていると判断された場合や、相続財産を処分したため単純承認をしたとみなされると判断された場合です。
熟慮期間の起算点をいつと考えるかは、被相続人との交流の有無や、借金の存在をいつ知ったかによって変わり得ます。
却下されたからといって諦めるのではなく、起算点の認定に争う余地がないかを検討する価値があります。
給与や預金の差押え、不動産の競売といった民事執行の手続に関する裁判に対しては、執行抗告という不服申立てが用意されています。
民事執行法10条1項は、民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り執行抗告をすることができる、と定めています。
執行抗告は即時抗告の一種として位置づけられますが、期限も執行を止める効力も家事審判の即時抗告とは異なるため、混同しないよう注意が必要です。
仮差押えや仮処分といった民事保全の手続でも、保全命令の申立てを却下する裁判などに対して即時抗告が認められています。
また、家庭裁判所が審判の前に出す保全処分についても、家事事件手続法110条以下に不服申立ての定めがあります。
自己破産を申し立てたのに、裁判所が借金の支払義務を免除しないという判断をすることがあります。
これが免責不許可の決定です。
破産法252条5項は、免責許可の申立てについての裁判に対して即時抗告をすることができると定めており、免責不許可の決定を受けた本人はこの手続で争うことができます。
反対に、免責許可の決定が出た場合に、債権者の側が即時抗告をすることもあります。
このほか、破産手続開始の申立てを却下する決定など、破産手続に関するいくつかの裁判にも即時抗告の定めが置かれています。
なお、免責許可の決定は確定しなければ効力を生じないと同条7項が定めているため、抗告が出されている間は免責の効果もまだ生じていない状態です。

即時抗告の申し立てまでの期間は不変期間と呼ばれ、裁判所の裁量で延ばしてもらうことができません。
ここでは、手続ごとに異なる期間を一覧で確認したうえで、いつから数え始めるのか、末日が休日だったらどうなるのか、過ぎてしまった場合に手段が残るのかを順に説明します。
自分の受け取った裁判がどの法律に基づくものかを確認したうえで、次の表を参照してください。
期間 |
|
|---|---|
家庭裁判所の審判(養育費・婚姻費用・親子交流・遺産分割・相続放棄の申述却下など) |
2週間 |
民事訴訟法に基づく決定・命令に対する即時抗告 |
1週間 |
民事執行の手続に関する裁判(執行抗告) |
1週間 |
破産手続に関する裁判のうち公告がされるもの |
公告が効力を生じた日から2週間 |
破産手続に関する裁判のうち公告がされないもの(免責不許可の決定など) |
1週間 |
抗告状を不適法として却下する審判に対する即時抗告 |
1週間 |
多くの家事審判は2週間、民事執行や民事訴訟法上の決定は1週間という違いがあります。
しかし家事事件でも、審判ではない裁判に対する即時抗告は1週間とされているものがあるため、ご自身が不服を訴えたい裁判の内容を確認してください。
期間の数え始めは、審判や決定の告知を受けた日(審判書を受け取った日)の翌日です。
仕事が忙しく再配達を後回しにしていると、その分だけ受け取りが遅れることになりますが、受け取ってからは短い期間しか残らない点は変わりません。
また、付郵便送達の場合は、裁判所が審判書を発送した時点で送達が完了したものとみなされ、実際に受け取った日ではなく発送日の翌日から期間を数え始めることになりますので、注意が必要です。
なお、複数の当事者がいる事件では、それぞれが審判書を受け取った日が違うため、期限も人によってずれます。
相手方の期限と自分の期限は別に進むと理解しておいてください。
数えた末日が休日にあたることもあります。
民事訴訟法95条3項は、期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日、1月2日、1月3日、12月29日から12月31日までの日にあたるときは、期間はその翌日に満了すると定めています。
つまり、末日が土曜日であれば、次の平日である月曜日までが期限になります。
ただし、これは末日についてのルールであって、期間そのものが延びるわけではありません。
また、年末年始やゴールデンウィークをはさむと、実際に動ける日数はさらに少なくなります。
「翌営業日まで大丈夫だから」と考えて準備を後ろ倒しにするのではなく、休日をはさむときこそ前倒しで動くという発想に切り替えてください。
期間内に即時抗告をしなかった場合、その審判や決定は確定します。
家事事件手続法74条4項は、審判は即時抗告の期間の満了前には確定しないと定め、同条5項は、期間内にした即時抗告の提起によって確定が遮断されると定めています。
裏を返せば、期間内に何もしなければ、期間の満了とともに確定するということです。
確定した審判の内容を、同じ手続の中でひっくり返すことはできません。
例外として、本人の責任によらない事情で期間を守れなかった場合に、その事情がやんだ後の一定期間内に手続を追加で行うことを認める、追完という制度があります。
もっとも、認められる場面は限られており、単に多忙だった、内容をよく読んでいなかったという事情では通りません。
期限を過ぎてしまった場合でも、別の道が残っていることがあります。
養育費や婚姻費用のように、事情が変われば金額の変更を求める調停や審判をあらためて申し立てられる類型もあります。
すでに確定してしまったからと諦める前に、別の手続で目的を達成できないかを弁護士に確認してみてください。

即時抗告を出せば原裁判の効力が自動的に止まるのかどうかは、手続によって答えが違います。
ここでは、執行が止まる場合、止まらない場合、そして止めたいときに別に何を申し立てる必要があるのかを整理します。
差押えや引渡しが迫っている状況では、この点の判断が結果を大きく左右します。
民事訴訟法334条1項は、抗告のうち即時抗告に限って執行停止の効力があると定めています。
家事審判についても、家事事件手続法74条2項は、即時抗告をすることができる審判は確定しなければ効力を生じないと定めています。
養育費や婚姻費用の支払を命じる審判、親子交流の条件を定める審判、遺産分割の審判などがこれにあたり、期間内に即時抗告をすれば確定が遮断され、その審判に基づく強制執行はできない状態が続きます。
ただし、これは「原審判に基づく強制執行ができない」という意味であって、抗告審が原審判を維持すれば、その時点で確定して執行が可能になります。
時間を稼ぐこと自体を目的に即時抗告をしても、最終的な支払義務がなくなるわけではありません。
執行抗告には、執行手続を当然に止める効力がありません。
給与の差押命令や不動産の売却許可決定などに対して執行抗告をしても、それだけでは手続が進むのを止められないということです。
家庭裁判所が審判の前に出す保全処分についても同じ考え方がとられています。
家事事件手続法111条1項は、即時抗告があった場合に、原審判の取消しの原因となることが明らかな事情と、原審判の執行によって償うことができない損害が生じるおそれがあることの疎明があったときに、抗告裁判所が執行の停止を命じることができると定めています。
言い換えれば、即時抗告をしただけでは止まらず、別に停止を求める必要があるということです。
執行を止める効力がない類型で、実際に手続の進行を止めたいときは、即時抗告とは別に執行停止の申立てをします。
民事訴訟法334条2項は、抗告裁判所または原裁判をした裁判所が、抗告について決定があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命じることができると定めています。
民事執行法10条6項にも同様の仕組みがあり、担保を立てることを条件に停止が認められる場合があります。
この申立てでは、原裁判が取り消される見込みがあることと、そのまま執行されると回復できない損害が生じることを、資料をつけて示す必要があります。
また、担保として一定の金額を法務局に供託するよう求められることがあり、資金面の準備も要ります。
差押えや競売が現実に進んでいる場面では、即時抗告と執行停止の申立てを同時に検討しなければ間に合わないことが多く、早い段階で弁護士に相談する意味が大きい部分です。

即時抗告は、審判書や決定書を受け取ってから抗告審の決定が出るまで、いくつかの段階を踏んで進みます。
ここでは、実際に手を動かす順番に沿って、各段階で何をするのか、誰が何をするのかを一つずつ見ていきます。
全体像をつかんでおくと、いま自分がどこにいるのかが分かり、次に何を準備すればよいかが見えてきます。
手続は、裁判所からの審判書または決定書が届くところから始まります。
受け取ったら、まず主文と呼ばれる結論部分と、その理由を書いた部分を読み分けてください。
そのうえで、次の3点を確認します。
理由部分は読みにくいものですが、抗告理由を組み立てる土台になります。
どの事実認定に納得できないのか、どの資料が評価されていないと感じるのかを、この段階でメモにしておくと後が楽になります。
家事事件手続法87条1項は、即時抗告は抗告状を審判を出した家庭裁判所(原裁判所)に提出してしなければならないと定めています。
提出先を間違えて高等裁判所へ直接送ってしまうと、原裁判所に到達するまでに日数がかかり、期限に間に合わなくなるおそれがあります。
郵送する場合は、期限までに裁判所へ到達している必要がある点にも注意してください。
家事事件手続法87条2項は、抗告状に記載すべき事項として、当事者および法定代理人と、原審判の表示およびその審判に対して即時抗告をする旨を挙げています。
最低限、この2点が書かれていれば抗告状として成り立ちますので、抗告状の段階で詳しい理由まで書き切る必要はありません。
裁判所の申立て等で使う書式のページや、大阪家庭裁判所の書式のページには、認容審判に対する不服の記載例と、却下審判に対する不服の記載例が用意されています。
ご自身の管轄の裁判所でも同様の書式が用意されていることが多いため、確認してみてください。
なお、抗告状には相手方や利害関係参加人の人数分の写しを添付するよう求められます。
必要な通数は事件によって変わるため、提出前に裁判所書記官に確認しておくと確実です。
抗告状を受け取った原裁判所は、まず形式面を点検します。
家事事件手続法87条3項は、即時抗告が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、原裁判所がこれを却下しなければならないと定めています。
期限を過ぎている場合などがこれにあたります。
この却下の審判に対しても、1週間以内であればさらに即時抗告ができます。
形式面に問題がなければ、事件は高等裁判所へ送られます。
このとき、原裁判所自身が抗告に理由があると考えれば、自ら判断を改めることも制度上は認められています。
民事訴訟法333条は、原裁判をした裁判所または裁判長は、抗告を理由があると認めるときはその裁判を更正しなければならないと定めています。
もっとも、実際にこの段階で結論が変わることは多くありません。
高等裁判所は、家事事件手続法88条1項に基づき、即時抗告が不適法であるときや理由がないことが明らかなときを除いて、原審の当事者や利害関係参加人に抗告状の写しを送付します。
相手方は、この送付によって抗告があったことを知ります。
抗告状に理由を詳しく書かなかった場合は、後から抗告理由書を提出します。
家事事件手続規則は、抗告状に抗告の理由の記載がないときは、即時抗告の提起後14日以内に理由書を原裁判所へ提出しなければならないと定めています。
民事訴訟に関する手続でも、抗告後14日以内という同様の定めがあります。
執行抗告については期限がさらに短く、民事執行法10条3項が、抗告状を提出した日から1週間以内に理由書を原裁判所へ提出しなければならないと定めています。
抗告理由書では、原審判のどの判断が、どういう理由で誤っているのかを具体的に書きます。
単に結論に不満だと述べても、判断の見直しにはつながりにくいのが実情です。
争点ごとに、原審判の認定、それに対する反論、裏づけとなる資料、という順で整理すると読み手に伝わりやすくなります。
執行抗告では、理由書の提出期限を守らなかった場合に抗告が却下されることが法律上定められています。
家事事件の抗告理由書については、期限を過ぎたことだけを理由に直ちに却下されるとは限りませんが、審理の進行に影響するため、定められた期間内に出すことを前提に準備してください。
抗告状の写しを受け取った相手方は、答弁書などの形で反論を提出します。
抗告人は、それに対してさらに反論の書面を出すこともあります。
このやり取りが、抗告審の審理の中心です。
抗告審の審理は、書面のやり取りが中心で、当事者が裁判所へ出向く期日が開かれないことも珍しくありません。
ただし、家事事件手続法89条2項は、養育費や遺産分割などの別表第二に掲げる事項についての審判事件では、即時抗告が不適法であるときや理由がないことが明らかなときを除いて、抗告裁判所は原審の当事者の陳述を聴かなければならないと定めています。
同条1項は、原審の当事者などの陳述を聴かなければ原審判を取り消すことができないとも定めており、結論を変える方向の判断をするときには相手方の言い分を聴く仕組みになっています。
審理が尽くされたと判断されると、裁判所は審理終結日を定めて当事者に知らせます。
この日を過ぎてから提出した資料は、判断の材料として扱われません。
出したい資料や主張がある場合は、審理終結の前に提出する必要があります。
高等裁判所は、審理の結果を決定という形で示します。
考えられる結論は次のとおりです。
結論 |
内容 |
|---|---|
却下 |
期限を過ぎているなど、手続の要件を満たしていないため、中身を審理せずに退ける |
棄却 |
中身を審理したうえで、原審判に誤りはないとして退ける。原審判の内容がそのまま維持される |
原審判の取消し・変更(自判) |
原審判を取り消し、または変更して、高等裁判所自身が新たな判断を示す |
原審判の取消し・差戻し |
原審判を取り消したうえで、あらためて審理をするよう家庭裁判所へ事件を戻す |
決定が出るまでの期間は事案によって異なります。
争点が少なく書面だけで判断できる事件と、あらためて調査が必要な事件とでは、かかる時間が大きく変わります。
進行状況については、担当の裁判所書記官に確認することができます。

即時抗告をするには、裁判所に納める費用と、弁護士に依頼する場合の弁護士費用がかかります。
裁判所に納める分は法律で決まっているため事前に把握できますが、弁護士費用は依頼先や事案によって幅があります。
ここでは、それぞれの内訳を確認します。
申立ての手数料は、収入印紙を抗告状に貼って納めます。
裁判所が公開している即時抗告の案内によれば、家事事件手続法別表第一に掲げる事項についての審判に対する即時抗告は1200円、別表第二に掲げる事項についての審判に対する即時抗告は1800円とされています。
別表第一は、相続放棄の申述の受理や名の変更の許可など、当事者が対立する形をとらない事件です。
別表第二は、養育費、婚姻費用、親子交流、遺産分割など、当事者が対立する事件です。
なお、民事執行や破産手続に関する即時抗告では金額が異なるため、提出先の裁判所に確認してください。
裁判所が書類を送るための郵便料金も、あらかじめ納めます。
金額と組み合わせは裁判所ごと、事件ごとに異なります。
最近は郵便切手ではなく電子納付を利用できる裁判所も増えています。
必要額は各裁判所のウェブサイトの一覧表に掲載されているほか、書記官に問い合わせて確認できます。
弁護士に依頼する場合の費用は、着手金と報酬金に分けて設定されていることが多く、事務所や事案の内容によって幅があります。
原審から同じ弁護士に依頼している場合と、抗告審から新たに依頼する場合とでは、資料の読み込みにかかる手間が違うため、金額の設定も変わることがあります。
費用を検討するときは、次の点を依頼前に確認しておくと、後の食い違いを防げます。
期限が短い手続であるため、複数の事務所をゆっくり比較する時間は取りにくいのが実情です。
まずは早めに相談し、見通しと費用の説明を受けたうえで判断してください。

即時抗告は手間も費用もかかる手続ですが、それに見合う意味があります。
ここでは、即時抗告に踏み切ることで何が得られるのかを整理します。
費用や時間との兼ね合いを判断する際の材料としてお使いください。
期間内に即時抗告をすれば、原審判の確定が遮断されます。
養育費や婚姻費用の審判であれば、その金額での支払義務が確定するのを一時的に止めることができます。
遺産分割の審判であれば、その分割内容を前提に手続が進んでしまう事態を避けられます。
納得できない内容がそのまま動き出すのを止められる点は、実務上の意味を持ちます。
抗告審を担当するのは、原審判をした家庭裁判所とは別の高等裁判所です。
同じ資料でも、評価の仕方が変わることがあります。
また、原審では十分に提出できなかった資料を、抗告審で追加して提出することもできます。
収入を示す資料、子どもの生活状況を示す資料、不動産の評価に関する資料など、原審で足りていなかった部分を補える点が、この手続の実質的な価値です。
調停から審判へ移った事件では、主張が十分に整理されないまま審判に至ることがあります。
抗告理由書を作る過程は、自分の言い分を法的な枠組みに沿って組み立て直す作業でもあります。
何が争点で、どの事実が結論を左右するのかがはっきりすると、仮に抗告審で結論が変わらなかったとしても、その後の交渉や別の手続で役立つことがあります。

即時抗告には、知らずに進めると不利益につながりかねない特徴があります。
ここでは、判断する前に知っておいていただきたい点を4つ取り上げます。
民事訴訟の控訴審では、控訴した人にとって原判決より不利な判決を出してはならないという考え方がとられています。
これを不利益変更禁止の原則といいます。
ところが、家事審判の抗告審では、この原則がそのまま当てはまるとは考えられていません。
家庭裁判所や高等裁判所は、当事者の主張に縛られず、子どもの利益や家族関係の実情を踏まえて後見的な立場から判断する役割を担っているためです。
その結果、養育費の増額を求めて即時抗告をしたところ、抗告審で原審判より低い金額が示される、といった可能性も否定できません。
抗告するかどうかは、上振れの期待だけでなく、下振れの可能性も含めて検討する必要があります。
控訴審には、相手方が控訴したことに乗る形で自分も不服を申し立てる、附帯控訴という仕組みがあります。
家事審判の即時抗告には、これに相当する制度が用意されていません。
そのため、自分は抗告しないつもりでいたところ相手方だけが抗告した、という場面で、後から自分の不服を追加することができないと考えられています。
相手方が抗告してくる可能性があると見込まれる事案では、自分も期限内に抗告しておくかどうかを、期間内に判断しておく必要があります。
この判断は期限との関係で急を要するため、審判書を受け取った段階で弁護士に見通しを聞いておくことが有効です。
抗告審は書面のやり取りが中心とはいえ、抗告理由書の提出、相手方の反論、必要に応じた再反論という段階を踏むため、決定までには相応の時間がかかります。
その間、養育費や婚姻費用の支払について、当面の生活をどうするかという問題が続きます。
経済的に苦しい状況が続く見込みであれば、抗告と並行して、当面の生活費をどう確保するかも考えておく必要があります。
印紙代や郵券のほか、弁護士に依頼すればそれ以上の費用がかかります。
そして、抗告審が原審判を維持する棄却の判断をすれば、費やした時間と費用に対して結果は変わりません。
即時抗告をすれば結論が覆るというものではなく、原審判の判断に見直しを求めるだけの具体的な根拠があるかどうかが分かれ目になります。
審判書の理由部分を弁護士に見てもらい、争える点があるかを確認したうえで判断することをおすすめします。

抗告審が却下や棄却の決定を出した場合でも、手段が完全になくなるわけではありません。
ただし、その先に進む道は限られています。
ここでは、最高裁判所への不服申立てである特別抗告と許可抗告、そして別の手続で目的を達成する方法を説明します。
特別抗告は、憲法違反を理由とする場合に限って最高裁判所へ不服を申し立てる手続です。
家事事件手続法94条1項は、家庭裁判所の審判で不服を申し立てることができないものや、高等裁判所の家事審判事件についての決定に対して、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができると定めています。
民事訴訟法336条1項にも同様の定めがあります。
期限は5日と、短く設定されています。
また、理由も憲法違反に限られているため、単に金額や条件に納得できないという内容では要件を満たしません。
実際に認められる場面は限られていると理解しておく必要があります。
また、即時抗告と異なり、特別抗告には確定遮断効がないため、抗告審の決定をもとに強制執行がされる可能性があることに注意が必要です。
許可抗告は、高等裁判所自身が許可した場合に限って、最高裁判所へ抗告できる仕組みです。
家事事件手続法97条2項は、最高裁判所の判例と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合に、高等裁判所が申立てにより抗告を許可しなければならないと定めています。
民事訴訟法337条2項にも対応する定めがあります。
こちらも申立ての期限は5日です。
そして、憲法違反を理由とすることはできないと定められているため、特別抗告とは理由の内容を分けて考える必要があります。
判例との抵触や、法令解釈上の重要な論点を含むかどうかという専門的な検討が必要になるため、この段階では弁護士の関与が重要です。
確定遮断効がないことは、特別抗告と同様です。
抗告審の判断が確定しても、その後に事情が変われば、別の手続で見直しを求められる場合があります。
養育費や婚姻費用であれば、収入が大きく減った、子どもが進学して費用が増えたといった事情の変更を理由に、変更を求める調停や審判を申し立てることが考えられます。
親子交流についても、子どもの成長や生活環境の変化を踏まえて、条件の変更を求める余地があります。
これに対して、遺産分割の審判のように、確定すると権利関係が確定してしまう類型では、後から見直すことは難しくなります。
どの類型が後から動かせて、どの類型が動かせないのかは判断が分かれるところなので、抗告審の結果が出た段階で、次にとれる手段を弁護士に確認してください。

ここからは、ココナラ法律相談の「おしえて!法律Q&A」に寄せられた、即時抗告に関する実際のお悩みと、弁護士による回答の概要をご紹介します。
即時抗告については、相手方の抗告への便乗の可否、抗告審の進行と連絡の有無、棄却された後の養育費の請求方法のような相談が寄せられています。
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【質問】 婚姻費用の審判を受けましたが、裁判官の判断に誤りがあると感じています。ただ、精神的に疲れており、自分から抗告をすべきか迷っています。もし自分は抗告せず、相手が抗告してきた場合に、それに便乗して自分に有利な主張をすることはできますでしょうか。 |
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【回答】 家事事件手続法には附帯抗告に関する規定が置かれていないため、相手の抗告に便乗して自ら不服を申し立てることはできないと考えられます。もっとも、即時抗告があった場合、高等裁判所は後見的な立場から、抗告をした人にとって有利か不利かにかかわらず、自らが正しいと考える判断をすることができるとされています。確実を期すのであれば、相手が抗告した場合にはご自身も抗告しておくほうが無難と考えられます。即時抗告には期限がありますので、その点にはご注意ください。 |
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【質問】 婚姻費用の審判に対し、私と相手方の双方が即時抗告をしました。抗告理由書も提出しましたが、その後、高等裁判所から連絡がありません。相手方の理由を知らされないまま、いきなり決定書が送られてくることはあるのでしょうか。また、相手方にだけ反論の機会が与えられるようなことは起こり得ますでしょうか。 |
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【回答】 決定が出るまでには2か月から3か月程度を見ておかれるとよいでしょう。抗告状と抗告理由書は双方に送付され、いずれにも反論の機会が与えられる扱いになっています。審理が尽くされた段階では審理終結日が通知されますので、いきなり決定書だけが届くという流れにはならないと考えられます。抗告審は書面による審理が大半で、出頭を求められることは多くありませんので、もう少し様子を見られるとよいでしょう。 |
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【質問】 養育費に関する即時抗告が棄却される見込みです。並行して進めている認知の裁判は、数か月後に判決が出る見通しです。認知が認められた後、できるだけ早く養育費を受け取りたいのですが、あらためて養育費の調停を申し立てる必要がありますでしょうか。調停が不成立になってしまわないかも心配です。 |
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【回答】 認知が確定した後に、あらためて養育費の調停を申し立てる流れになると考えられます。その際、出生時にさかのぼって養育費を請求できる余地がありますので、その点も含めて主張されるとよいでしょう。 |
参考:即時抗告の棄却について

即時抗告は、期限が短く、書面の内容が結果を左右する手続です。
ここでは、弁護士に相談したり依頼したりすることで何が変わるのかを、場面ごとに整理します。
依頼するかどうかを決める前の相談段階でも得られるものがあるため、まずは早めに話を聞いてみてください。
即時抗告の期限は、家事審判なら2週間、民事執行なら1週間というように手続によって異なり、起算点も告知を受けた日の翌日からと定められています。
末日が休日にあたるとき、複数の当事者がいて受け取った日がずれているときなど、判断に迷う場面もあります。
弁護士に審判書や決定書を見てもらえば、自分のケースで実際に何月何日までに何を出せばよいのかを確認できます。
期限の判断を誤ると手続そのものが失われてしまうため、この確認だけでも相談する価値があります。
審判書の理由部分には、裁判所がどの事実をどう評価して結論に至ったかが書かれています。
ここを読み解くと、事実認定に争う余地があるのか、法律の当てはめに問題があるのか、それとも判断は妥当で覆すのが難しいのかが見えてきます。
弁護士は、同種の事案でどのような判断がされてきたかを踏まえて、この見極めを行います。
費用と時間をかける価値があるかどうかを判断するうえで、専門家の意見は重要な材料になります。
抗告理由書は、感情ではなく、法的な理由を筋道立てて示す書面です。
どの争点を前面に出すか、どの資料をどう位置づけるか、原審判の理由のどこを突くかによって、伝わり方は大きく変わります。
弁護士に依頼すれば、収集すべき資料の指示を受けたうえで、争点ごとに整理された書面を作成してもらえます。
短い期間で質の高い書面を仕上げるという点で、専門家の関与は実務上の差になります。
差押えや競売が進んでいる場面では、即時抗告だけでは手続を止められないことがあります。
このとき、執行停止の申立てを同時に行うべきか、担保をどう用意するかといった判断が必要になります。
また、即時抗告が難しい事案でも、事情の変更を理由とする別の申立てや、相手方との交渉によって目的を果たせる場合があります。
弁護士に相談すれば、抗告という選択肢だけでなく、全体を見渡したうえでの進め方を検討できます。
相手方から即時抗告をされた側にも、対応が必要です。
答弁書で何を主張すべきか、原審判を維持してもらうためにどの資料を補うべきか、抗告審で不利な判断が出る可能性はあるのかといった点は、自分だけで判断するのが難しい部分です。
弁護士に依頼すれば、抗告審の進行を見通したうえで、必要な対応を計画的に進められます。

即時抗告は、期限が短く、限られた時間の中で審判書を読み解き、争点を絞り、書面を仕上げなければならない手続です。
養育費や婚姻費用、親子交流、遺産分割、相続放棄、民事執行、破産と、対象となる分野も広く、それぞれで期限も進め方も違います。
そのため、自分の事案に近い分野を扱ってきた弁護士に、できるだけ早く相談することが大切になります。
ココナラ法律相談では、分野や地域から弁護士を検索し、取扱分野や費用の目安を比較しながら相談先を選べます。
初回相談を無料としている事務所や、オンラインでの相談に対応している事務所も掲載されているため、審判書を受け取ってから時間がない状況でも、相談先を探しやすくなっています。
審判書や決定書を受け取ってから動ける日数は限られています。
納得できない結論をそのまま確定させてしまう前に、ココナラ法律相談で弁護士を探し、早めに相談してみてください。