不倫の時効は何年?時効を止める方法や援用の手順を解説

#離婚・男女問題
公開:
不倫の時効は何年?時効を止める方法や援用の手順を解説

この記事の監修

細淵 拓弁護士のアイコン画像

細淵 拓 弁護士(神奈川県)

神奈川県 / 横浜市中区

横浜綜合法律事務所

「配偶者の不倫を知ったものの、生活のことを考えて動けないまま時間が過ぎてしまった」

「もう終わった不倫関係について、慰謝料を請求する通知が届いた」

不倫の慰謝料請求権には期限があります。

何もしないまま期限を過ぎてしまうと、本来なら数百万円を請求できたはずのケースでも、受け取れなくなってしまう可能性があります。

問題となっている不倫のケースで期限がいつまでなのかを正しく数えられれば、請求する側は期限を止める手を打てますし、請求された側は支払う必要のないお金を払わずに済みます。

この記事では、不倫の慰謝料請求に関わる時効や起算点の考え方、時効の完成を止める方法、期限が過ぎた後でも請求できるケース、援用手続きの進め方などについて解説します。

ご自身の状況を落ち着いて整理し、不倫の問題の解決に向けて動きましょう。

不倫の慰謝料請求|3年と20年の時効がある

不倫の慰謝料請求は、他人の権利を違法に侵害した人に賠償を求める不法行為に基づく損害賠償請求にあたります。

この不法行為による損害賠償請求権について、いつまで請求できるかを定めているのが民法の規定です。

不倫をされた配偶者が、不倫をした配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求できる権利は、一定の期間が過ぎると行使できなくなります。

この期間の制限は2つあり、どちらか一方でも先に到来すれば、それ以降は請求が通らなくなります。

不倫と相手を知った時から3年で権利が消える

被害を受けた人が、損害が生じたことと加害者が誰であるかを知った時から3年間行使しないと、権利は時効によって消滅すると定められています(民法724条1号)。

不倫のケースに当てはめると、配偶者が不貞行為をしたという事実を知り、かつ不倫相手が誰なのかを知った時から3年、という意味になります。

注意したいのは、3年という期間が、配偶者に対する請求と不倫相手に対する請求とで別々に進むという点です。

配偶者については早い段階で不貞の事実を把握していたけれど、不倫相手が誰かを突き止めたのはずっと後だったという場合、配偶者に対する権利だけが先に消滅し、不倫相手に対する権利はまだ残っているという状態が生じます。

不倫があった時から20年で権利が消える

もう一つの期限は、不貞行為があった時から20年です。

先ほどと同じ民法の規定の中で、不法行為の時から20年間行使しないときにも権利は時効によって消滅すると定められています(民法724条2号)。

この20年は、被害者が不貞の事実や相手を知っているかどうかにかかわらず進みます。

そのため、不倫相手が誰なのか最後まで分からないまま20年が経過してしまうと、たとえこちらに落ち度がなくても請求権は失われます。

たとえば不貞行為から18年後にその事実と相手を初めて知ったという場合、3年の期間はそこから始まりますが、20年の期限は残り2年しかありません。

この場合、実際に請求できるのは2年間ということになります。

2020年4月民法改正で20年の期間が「消滅時効」へ変更

改正前は、20年の期間は除斥期間であるという解釈が判例上とられていました。

除斥期間とは、期間が過ぎればそれだけで権利が当然に消滅し、当事者が何も主張しなくても裁判所が権利の消滅を認めるという性質のもので、被害者にとっては厳しい制度でした。

2020年4月1日に施行された改正後の民法は、この20年についても消滅時効であると条文に明記しました。

消滅時効であれば、後述する完成猶予や更新の手続きによって期間の進行を止められますし、相手が時効を主張しない限り権利は消えません。

被害者の救済という観点からは、大きな前進といえる改正です。

期間が過ぎても自動的に権利が消えるわけではない

消滅時効の期間が経過したという事実だけでは、慰謝料請求権は消えません。

時効によって利益を受ける当事者が、時効の完成を主張して初めて、裁判所はそれを前提とした判断ができます(民法145条)。

この主張のことを時効の援用といいます。

この仕組みによって、請求する側は3年を過ぎていても請求すること自体は可能で、相手が時効に気づかずに支払いに応じれば慰謝料を受け取れます。

請求された側から見れば、時効の期間が過ぎているのに何も主張しないまま支払ってしまうと、支払わなくてよかったはずのお金を失うことになります。

不倫慰謝料に強い弁護士を探す

不倫の時効の起算点

3年の起算点は、損害を知り、かつ加害者を知った時です。

不倫のケースでは、この2つの要件をどちらも満たして初めて時効が動き始めます。

まず損害を知ったといえるためには、配偶者が肉体関係を伴う不貞行為をしたという事実を認識している必要があります。

なんとなく様子がおかしい、帰りが遅い日が増えたといった段階では、不貞行為があったことを知ったとはいえません。

次に加害者を知ったという要件については、単に不倫相手がいるらしいと分かっただけでは足りません。

裁判実務では、加害者に対して損害賠償請求をすることが事実上可能な程度に相手を知った時と考えられており、相手の氏名と住所や勤務先、携帯電話番号などを把握していることが一つの目安とされています。

配偶者に不貞慰謝料を請求する場合

配偶者に対する不貞慰謝料の起算点は、その配偶者が不貞行為をしたと知った時です。

たとえば2026年10月に不貞の証拠が見つかり、配偶者も不貞を認めたという場合、配偶者に対する慰謝料請求の期限は2029年10月ごろということになります。

このとき不倫相手が誰かはまだ分かっていなかったとしても、配偶者に対する3年のカウントは進み始めます。

ただし後述するとおり、婚姻関係が続いている間は、配偶者に対する権利の時効は完成しないという特別な扱いがあります。

そのため、離婚しないまま3年が過ぎたケースで直ちに請求できなくなるわけではありません。

不倫相手に不貞慰謝料を請求する場合

不倫相手に対する不貞慰謝料の起算点は、不貞の事実を知り、かつその相手が誰であるかを特定できた時です。

配偶者に対する時効とは別のスケジュールで進みます。

よくあるのが、不貞の事実は3年以上前に把握していたけれど、相手の氏名や住所を突き止めたのは最近だった、というケースです。

この場合、配偶者に対する権利については3年が経過していても、不倫相手に対する権利についてはまだ時効が完成していない可能性があります。

相手の特定に探偵事務所を使った場合や、配偶者が最後まで名前を明かさなかった場合には、いつ特定できたかを裏づける資料が重要になります。

調査報告書の作成日、相手から届いた書面の日付、SNSのやり取りの日付など、特定の時期を客観的に示せるものを残しておいてください。

離婚した場合の離婚慰謝料は離婚が成立した時から3年

不倫が原因で離婚に至った場合、不貞慰謝料のほかに、婚姻関係を破綻させられ離婚せざるを得なくなったことによる精神的苦痛に対する離婚慰謝料が請求できます。

この2つは別の権利であり、時効の起算点も別々に考えます。

離婚慰謝料の起算点は、離婚が成立した時です。

離婚によって初めて損害が確定するという考え方によるもので、この扱いは裁判実務で確立しています。

そのため、不貞行為を知ってから3年以上経っていても、離婚が成立してから3年以内であれば、離婚慰謝料としての請求が残っている場合があります。

ここで一つ重要な注意点があります。

離婚慰謝料は、原則として離婚した相手方である元配偶者に対して請求するものです。

不倫相手に対しては、不貞行為による慰謝料は請求できても、離婚そのものに対する慰謝料は、特段の事情がない限り請求できないという判断が最高裁判所で示されています。

不貞慰謝料の3年が過ぎたから離婚慰謝料として不倫相手に請求しよう、という発想は基本的に通らないと考えてください。

不倫関係が継続している場合

不倫関係が一度きりで終わらず、長期間にわたって続いている場合、時効の起算点はより複雑になります。

継続的な不法行為については、日々発生する損害ごとに時効が別々に進行するという考え方があり、3年より前の分については時効が完成していると判断される可能性があります。

もっとも、不貞行為が継続している間は関係が終了した時点を起算点とみる考え方もあり、実際の裁判では争点になります。

実務的には、関係が続いていることを把握しているのであれば、最後の不貞行為を待つのではなく、把握した時点から3年を意識して動くのが安全です。

婚姻中は配偶者に対する時効が完成しない

夫婦の一方が他方に対して持っている権利については、婚姻が解消された時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しないという規定があります(民法159条)。

夫婦の間で権利を行使することは事実上難しいという実情を踏まえた例外です。

この規定により、婚姻関係が続いている間は、配偶者に対する不貞慰謝料の請求権は3年が過ぎても消滅しません。

離婚が成立した日から6か月を過ぎるまでは請求できる状態が保たれ、その後に通常の時効の計算に戻ります。

ただし、この例外はあくまで配偶者に対する権利についてのものです。

不倫相手は夫婦の一方ではありませんから、婚姻が続いていても不倫相手に対する3年の時効は普通に進みます。

不倫慰謝料に強い弁護士を探す

不倫の時効の完成を止める方法

時効の期限が近づいていても、一定の手続きをとれば、時効の完成を先送りにしたり(時効の完成猶予)、経過した期間をリセットして最初から数え直させたり(時効の更新)できます。

ここでは、内容証明郵便による催告、協議を行う旨の合意、相手による承認、訴訟や調停の申立て、仮差押えや仮処分、強制執行という方法について、それぞれ得られる効果と使いどころを説明します。

内容証明郵便で催告する

相手に対して慰謝料を支払うよう求めることを催告といいます。

催告があった時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しないと定められており、期限直前の応急処置として広く使われています(民法150条)。

催告の方法に法律上の決まりはありませんが、いつ誰にどのような内容の書面を送ったかを郵便局が証明してくれる内容証明郵便を使うのが実務の標準です。

配達証明を付けておけば、相手にいつ届いたかも証明できます。

口頭やメールでも催告自体は成立し得ますが、後から相手に否認されると立証できません。

気をつけたいのは、催告で得られるのは6か月の猶予だけで、時効が振り出しに戻るわけではないという点です。

さらに、催告によって時効の完成が猶予されている間に再び催告をしても、猶予は延長されません。

したがって、内容証明郵便を送ったら、6か月の間に訴訟を提起するか、次に説明する協議の合意や承認につなげる必要があります。

何もしないまま6か月が過ぎれば、猶予はなかったことになり、その時点で時効が完成します。

協議を行う旨の合意を書面で結ぶ

改正民法で新設されたのが、当事者間で話し合いを行うことを書面で合意すれば時効の完成が猶予されるという制度です(民法151条)。

訴訟にせずに交渉で解決したいけれど、交渉している間に時効が完成してしまうという事態を避けるための仕組みです。

猶予される期間は、次の3つのうち最も早く到来する時までです。

  • 合意があった時から1年を経過した時
  • 当事者が1年未満の協議期間を定めた場合は、その期間を経過した時
  • 一方が協議の続行を拒絶する旨を書面で通知した時から6か月を経過した時

この合意は、猶予されている間に繰り返し結び直すことができます。

ただし、本来の時効が完成するはずだった時から通算して5年を超える猶予は認められません。

また、合意はメールなどの電磁的記録で行っても問題ありません。

注意点として、催告によって時効の完成が猶予されている間にこの合意をしても、合意による猶予の効力は生じません。

内容証明郵便を送って6か月の猶予を得た後に、その猶予を延ばす目的で協議の合意を結ぶ、という順序は使えないということです。

交渉での解決を目指すのであれば、催告よりも先に協議の合意を取り付けておくほうが有利です。

相手に慰謝料の支払義務を承認させる

相手が慰謝料を支払う義務があると認めることを承認といい、承認があった時から時効は新たに進行を始めます(民法152条)。

完成猶予と違って経過した期間がリセットされるため、効果としては最も強い部類に入ります。

承認にあたる行為は、支払いを約束する書面に署名することだけではなく、慰謝料の一部を支払う、支払期限を延ばしてほしいと申し出る、金額を減らしてほしいと交渉するといった行為も、義務があること自体を前提としているため承認と評価されます。

実務では、示談書や合意書という形で書面に残すのが確実です。

支払う金額、支払期限、支払方法を明記し、双方が署名押印した書面を1通ずつ保管しておきましょう。

ただし、承認を得ようとして相手を追い詰める行為は避けてください。

脅すような言動で無理やり認めさせた場合、その承認は後から取り消される可能性がありますし、こちらが脅迫や強要の責任を問われかねません。

相手の勤務先や家族に不倫の事実を伝えると告げて署名を迫るといった行為は、名誉毀損などの別の紛争を招くことになります。

訴訟や調停を申し立てる

裁判所に訴訟を提起すると、その手続きが終了するまでの間は時効が完成しません(民法147条)。

そして判決が確定するなどして権利が確定すれば、その時点から時効は新たに進行します。

判決で確定した権利については、その後の時効期間は10年になります(民法169条)。

訴訟のほかに、支払督促の申立て、裁判上の和解、民事調停の申立て、家庭裁判所の調停の申立てにも同じ効果があります。

配偶者に対する慰謝料請求を離婚調停の中で行う場合も、調停の申立てによって時効の完成が猶予されます。

ここで見落とされがちなのが、途中で取り下げた場合の扱いです。

権利が確定しないまま手続きが終了した場合、その終了の時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しないという猶予が働きますが、更新の効果は生じません。

訴えを取り下げてしまうと、6か月以内に次の手を打たない限り時効が完成してしまいます。

仮差押えや仮処分を申し立てる

判決が出る前に相手が財産を隠してしまうことを防ぐため、裁判所の手続きで財産を仮に押さえておくのが仮差押えや仮処分です。

これらの手続きには、その事由が終了した時から6か月を経過するまで時効が完成しないという効果があります(民法149条)。

時効を止めることだけを目的として使う手続きではありませんが、相手が財産を処分しそうな気配があり、かつ時効も迫っているという場面では、回収の確保と時効の猶予を同時に実現できます。

申立てには担保金の提供が必要になるのが通常で、費用と手間の面で負担が大きいため、弁護士と相談したうえで判断してください。

強制執行を申し立てる

すでに判決や公正証書などの債務名義を持っている場合に、相手の給与や預金を差し押さえる手続きが強制執行です。

強制執行の申立てがあると、その手続きが終了するまで時効は完成せず、手続きが終了した時から新たに進行します(民法148条)。

分割払いの示談を結んだものの途中から支払いが止まった、というケースでこの手続きが問題になります。

未払いのまま放置すると、確定した権利についての時効が進んでいきますので、支払いが滞った時点で早めに対応してください。

不倫の時効が過ぎた後でも慰謝料を請求できるケース

3年や20年の期間が過ぎてしまったとしても、すべての可能性が閉ざされるわけではありません。

時効は相手が主張して初めて効力を持つ仕組みですし、そもそも別の権利として時効がまだ残っていることもあります。

ここでは、相手が時効を援用しない場合、相手が時効の完成を知りながら支払いを認めた場合、離婚慰謝料として請求できる場合、不倫相手を後から特定した場合という4つのケースを見ていきます。

相手が時効を援用しない場合

時効の期間が経過していても、相手が時効を援用しなければ請求権は存続します。

相手が時効という制度を知らないまま話し合いに応じ、慰謝料を支払うことに合意すれば、その合意は有効です。

実際に、時効期間の経過に気づかないまま示談に応じるケースはめずらしくありません。

そのため、期限を過ぎていても、請求してみる価値がまったくないわけではありません。

ただし、相手が弁護士に相談すれば、まず時効の成否が検討されます。

援用されれば請求は通らなくなりますので、時効が過ぎている案件では、支払いを受けられるかどうかは相手の判断に委ねられることになります。

訴訟を起こしても援用されれば敗訴しますから、費用をかけて裁判を選ぶ判断は慎重にしてください。

相手が時効の完成を知りながら支払いを認めた場合

時効が完成した後に、相手がその事実を知ったうえで慰謝料を支払うと認めた場合、時効の利益を放棄したことになり、その後に時効を援用することはできなくなります。

また、時効の完成を知らずに支払いを認めた場合であっても、その後で時効を援用することは信義に反するとして許されないという扱いが確立しています。

この扱いは、請求する側から見れば、時効完成後でも相手から支払いの約束を取り付けられれば回収できるということを意味します。

一方、請求された側から見れば、安易に支払いを認める発言をしてしまうと後戻りできなくなるということです。

一度した承認は撤回できないという点は、請求された側にとって最も重要な注意点の一つです。

離婚慰謝料としてなら請求できる場合がある

不貞行為を知ってから3年が過ぎていても、離婚が成立してから3年が経っていなければ、離婚慰謝料としての請求権が残っています。

不貞慰謝料と離婚慰謝料は別の権利であり、起算点が異なるためです。

たとえば、2020年に配偶者の不貞を知り、その後別居を経て2024年に離婚が成立したという場合、不貞慰謝料の3年はすでに経過していますが、離婚慰謝料については2027年ごろまで請求できる可能性があります。

ただし前述のとおり、離婚慰謝料を請求できる相手は原則として元配偶者に限られます。

不倫相手に対して離婚慰謝料を請求することは、特段の事情がない限り認められません。

不倫相手への請求を考えているのであれば、不貞慰謝料の3年が勝負になります。

不倫相手を後から特定した場合

不貞の事実は何年も前から知っていたけれど、不倫相手が誰なのかは最近になって判明したという場合、不倫相手に対する3年はそこから数え始めます。

不貞行為から20年を過ぎていない限り、請求できる余地が残っています。

この主張をするためには、いつ相手を特定したのかを客観的に示す必要があります。

相手側からは、もっと前から知っていたはずだという反論が出るのが通常だからです。

探偵の調査報告書、配偶者とのやり取りの記録、相手から届いた連絡の日付など、特定の時期を裏づける資料を整理しておいてください。

不倫慰謝料に強い弁護士を探す

不倫慰謝料を請求された側が時効を援用する方法

ここからは、慰謝料を請求された側の立場に立って説明します。

過去の関係について突然通知が届いた場合、まず確認すべきは、その請求権がまだ生きているのかどうかです。

時効が完成しているのであれば、援用の意思表示をするだけで支払義務から解放されます。

ここでは、時効の完成を確認する手順、援用の通知書に書く内容、送付の方法、援用の前にやってはいけないこと、そして時効が完成していなかった場合の対応を説明します。

まず時効が完成しているかを確認する

援用の前に、時効が本当に完成しているかを確認します。

確認すべきポイントは次のとおりです。

  • 最後の不貞行為はいつだったか(20年の起算点)
  • 請求してきた相手が、不貞の事実を知ったのはいつか
  • 請求してきた相手が、自分の氏名や住所を把握したのはいつか(3年の起算点)
  • 過去に内容証明郵便などで請求を受けたことがあるか(催告による猶予)
  • 過去に訴訟や調停を起こされたことがあるか(更新の有無)
  • 過去に支払いを約束したり、一部でも支払ったりしたことがあるか(承認の有無)

特に注意したいのが、3年の起算点は相手が知った時であって、自分が請求されると思った時ではないという点です。

相手がいつ不貞を知り、いつ自分を特定したのかは、こちら側には分かりません。

届いた通知書に発覚の経緯が書かれていることもありますので、記載内容を保存したうえで慎重に読み込んでください。

時効が完成しているかどうかの判断は、起算点の評価という法的な判断を含みます。

自己判断で完成していると決めつけて対応すると、実は完成していなかった場合に不利な立場に置かれます。

判断に迷う場合は、援用の通知を出す前に弁護士に確認することをおすすめします。

時効援用通知書に書く内容

時効の援用は、時効の利益を受けるという意思を相手に伝えることで成立します。

決まった書式はありませんが、後から争いにならないよう、次の項目を記載しておくとよいでしょう。

  • 作成年月日
  • 通知の宛先(請求してきた相手の氏名と住所)
  • 通知人(自分)の氏名と住所
  • どの請求についての通知かが特定できる記載(請求書の日付、請求されている内容、請求金額など)
  • 時効期間がすでに経過している旨と、その根拠となる期間の計算
  • 本書面をもって消滅時効を援用するという明確な意思表示
  • 本書面は債務を承認する趣旨ではないという断り書き

最後の断り書きは実務上とても重要です。

援用の通知の中で、請求内容について事実関係を認めるような書き方をしてしまうと、承認と受け取られて時効が更新されたと主張されるおそれがあります。

不貞行為があったかどうかについて詳しく説明する必要はなく、時効が経過しているので援用する、という点に絞って書くのが安全です。

内容証明郵便に配達証明を付けて送る

援用の通知は、内容証明郵便に配達証明を付けて送るのが確実です。

内容証明郵便は、同じ内容の書面を郵便局が保管して内容を証明してくれる制度で、どのような内容の書面を送ったかを後から立証できます。

配達証明を付ければ、相手にいつ届いたかも証明できます。

普通郵便やメールでも援用の意思表示自体は有効に成立し得ますが、送っていない、そんな内容ではなかったと争われたときに立証できません。

訴訟を起こされる可能性がある場面では、費用をかけてでも内容証明郵便を使う価値があります。

送付後は、郵便局から受け取った謄本と配達証明のはがきを必ず保管してください。

これらが、後日の訴訟で援用の事実を証明する資料になります。

援用する前にやってはいけないこと

時効を援用するつもりであれば、援用の通知を出すまでの間、次の行為は避けてください。

  • 請求された金額の一部でも支払う
  • 支払期限を延ばしてほしいと申し出る
  • 金額を減らしてほしいと交渉する
  • 分割払いなら払えると伝える
  • 支払う意思があると読める書面やメッセージを送る

これらはいずれも、支払義務があることを前提とした行為として承認にあたり、時効が更新されてしまう可能性があります。

一度承認してしまうと、その時点から時効が新たに進行することになり、援用はできなくなります。

通知が届くと、すぐに相手に電話をしてしまう方が少なくありません。

その場で謝罪したり、いくらなら払えるという話をしたりすると、承認と評価されるおそれがあります。

まずは書面の内容を保存し、期限までに書面で回答するという姿勢を保ってください。

時効が完成していなかった場合の対応

確認の結果、時効がまだ完成していなかった場合は、時効以外の点で反論できないかを検討します。

不貞行為の存在自体を争えるか、婚姻関係がすでに破綻していたと主張できるか、相手方が既婚者であることを知らず、知らないことに落ち度もなかったといえるか、請求額が相場に照らして高すぎないか、といった論点があります。

また、請求してきた相手が配偶者と不倫相手の双方に請求している場合、支払うべき金額の分担についても検討の余地があります。

一方が全額を支払った場合、もう一方に対して負担部分の求償を求められることがあります。

時効の援用が難しいと分かった段階でも、対応の仕方によって最終的な負担額は変わります。

無視して放置すると訴訟を起こされ、遅延損害金が上乗せされる可能性がありますので、早めに弁護士に相談してください。

不倫慰謝料に強い弁護士を探す

不倫の時効に関する法律Q&A

ここからは、ココナラ法律相談の「おしえて!法律Q&A」に寄せられた、不倫の時効に関する実際のお悩みと、弁護士による回答の概要をご紹介します。

不倫の時効については、住所不明の相手への起算点と、関係が続いたまま過ぎた年月と、誓約書を交わした後の時効に関する相談が寄せられています。

不倫相手の名前はわかるが住所がわからない。時効は進んでいる?

【質問】

2年前に夫の不倫が発覚し、慰謝料請求の時効が3年であることから残り1年しかないと不安に感じています。不倫相手の名前はわかっているのですが住所がわかりません。相手の名前と住所の両方がわからないと時効のカウントは始まらないと聞いたのですが、名前だけわかっている今の状態で時効は進んでいるのでしょうか。当時の携帯番号は把握しており、発覚後に一度電話で話したことがあります。

【回答】

時効の起算点となる加害者を知った時とは、その相手に対して損害賠償請求をすることが事実上可能な程度に知った時を指すと考えられています。請求をするには最低限、相手の氏名と住所が必要になりますので、住所がわからない状態であれば時効期間はまだ進行していないと考える余地があります。もっとも、配偶者に対する時効と不倫相手に対する時効は別々に進みますので、配偶者への請求については期間の経過に注意されるとよいでしょう。

参考:不倫慰謝料の時効について

不倫が発覚してから何年も経って離婚した場合、慰謝料は請求できる?

【質問】

夫の不倫が発覚しましたが、関係は現在も続いています。すぐに離婚する決心がつかず、今後10年ほど経ってから離婚を決意した場合に、不貞行為を理由とした離婚慰謝料を請求することはできるのでしょうか。また、不倫関係が継続している場合、慰謝料請求の時効はいつから数えることになるのかも教えていただけますでしょうか。

【回答】

不貞が発覚した後に10年もの間そのまま婚姻生活を続けた場合、不貞と離婚との因果関係がほとんどないと判断され、離婚慰謝料の請求は難しくなると考えられます。継続的な不貞行為の時効については、最後の不貞行為があった時を起算点とみる考え方がありますが、実際の裁判では争点になり得る部分です。時間の経過によって不利になる要素が増えていきますので、早めに方針を検討されるとよいでしょう。

参考:不倫発覚から10年後の離婚、慰謝料請求は可能か?

不倫の誓約書にサインさせた。誓約書に時効はある?

【質問】

知人の妻が不倫をし、夫が誓約書を作成して署名押印させたという話を聞きました。その妻は誓約書の時効は3年だから3年経てば大丈夫だと話していたそうですが、誓約書や示談書、念書といった書面に時効はあるのでしょうか。また、不法行為による慰謝料請求の時効は3年という理解で正しいのかも確認させていただけますでしょうか。

【回答】

示談書は法律上の和解にあたるため、そこから生じる権利の時効は不法行為の場合とは異なる扱いになります。一方、単なる誓約書は和解にあたらず、不法行為に基づく請求として3年の時効が問題になる可能性があります。不法行為による慰謝料請求権が知った時から3年で消滅するというご理解は正確です。ただし、婚姻関係が続いている間は夫婦の一方が他方に対して持つ権利の時効が完成しないという規定があり、夫婦間では単純に3年で消滅するとは限りません。

参考:誓約書の時効について


不倫の時効について弁護士に相談するメリット

不倫の時効は、いつから数え始めるのかという評価の部分に難しさがあります。

そして、期限が近いという事実に気づいた時点で、残された時間は限られていることがほとんどです。

ここでは、時効の成否を正確に判断してもらえること、時効を止める手続きを速やかにとってもらえること、起算点を裏づける証拠の集め方が分かること、請求された側は援用の可否を確認できること、交渉から訴訟までを一貫して任せられることという5つのメリットを説明します。

時効が完成しているかを正確に判断してもらえる

時効が完成しているかどうかは、不貞の事実をいつ知ったといえるのか、相手をいつ特定したといえるのか、過去のやり取りが承認にあたらないか、婚姻が続いていたことによる完成猶予が働かないか、といった複数の評価を積み重ねて判断します。

弁護士に相談すれば、これらの要素を一つずつ確認したうえで、請求できる可能性がどの程度あるのかを整理してもらえます。

自己判断で諦めていたケースが、離婚慰謝料としてなら請求できると分かることもありますし、逆に時効が完成していると思っていた側が、実は承認によって更新されていたと判明することもあります。

最初の見立てを誤らないことが、その後の対応の質を左右します。

時効の完成を止める手続きを速やかにとってもらえる

期限が迫っている場面では、動き出しの速さがそのまま結果につながります。

内容証明郵便の作成と発送、協議を行う旨の合意書の準備、訴状の作成と提出といった手続きを、弁護士であれば短期間で進められます。

また、どの手続きをどの順序で使うかという組み立ても重要です。

残された期間が半年なのか1か月なのかによって、催告から始めるべきか、いきなり訴訟を提起すべきかの判断は変わります。

手続きの選択を誤ると、せっかく動いたのに時効を止められなかったという結果になりかねません。

起算点の主張を裏づける証拠の集め方がわかる

時効が争点になる事件では、いつ知ったのかという点について当事者の主張が真っ向から対立します。

請求する側は最近知ったと主張し、請求される側はもっと前から知っていたはずだと反論するのが典型的な展開です。

弁護士に相談すれば、自分の主張を裏づけるためにどのような資料が有効なのか、どの時点の記録を残しておくべきなのかを具体的に助言してもらえます。

また、証拠の集め方が違法にならないかという点も同時に確認できるため、後で自分が責任を問われる事態を避けられます。

請求された側は援用できるかどうかを確認できる

慰謝料を請求された側にとって、時効の援用は支払義務から解放される有力な手段です。

ただし、援用できるかどうかの判断を誤って通知を出してしまうと、相手に対して事実関係を認めたと受け取られるおそれがあります。

弁護士に相談すれば、援用が可能かどうかを検討したうえで、承認と受け取られない書き方の通知を作成してもらえます。

援用が難しい場合でも、不貞行為の有無や婚姻関係の破綻、請求金額の妥当性といった別の観点からの反論を検討できます。

通知が届いてから慌てて相手に連絡してしまう前に、まず相談することをおすすめします。

交渉から訴訟までを一貫して任せられる

不倫の慰謝料をめぐるやり取りは、当事者同士で行うと感情的になりやすく、話が進まないまま時間だけが過ぎていきます。

時効が迫っている場面で交渉が停滞するのは、請求する側にとって不利に働きます。

弁護士に依頼すれば、相手との連絡はすべて弁護士を通すことになり、直接やり取りする精神的な負担から解放されます。

交渉がまとまらなかった場合にはそのまま訴訟に移行できますので、担当者が変わることによる時間のロスもありません。

時効までの残り時間を無駄にせず使い切るという意味で、一貫して任せられることの意義は小さくありません。

不倫慰謝料に強い弁護士を探す

不倫の時効に強い弁護士を探すならココナラ法律相談

不倫の時効は、いつ知ったといえるのか、過去のやり取りが承認にあたるのか、離婚慰謝料としての請求に切り替えられるのかといった判断は、これまでの裁判例の蓄積を踏まえた評価が必要になります。

そして、判断に時間をかけている間にも期限は近づいてきます。

また、時効が問題になる案件では、請求する側と請求された側で必要な対応がまったく異なります。

請求する側は時効を止める手続きを、請求された側は援用の可否の確認を、それぞれ急ぐ必要があります。

どちらの立場であっても、離婚や男女問題を多く取り扱っている弁護士に早い段階で相談することで、残された時間の中で取れる選択肢が広がります。

ココナラ法律相談では、お住まいの地域や相談したい分野から弁護士を検索できます。

離婚や不貞慰謝料の分野を取り扱う弁護士の経歴や解決事例、費用の目安を確認したうえで、相談先を選べます。

初回の相談を無料としている事務所や、電話やオンラインでの相談に対応している事務所もありますので、まずはご自身の状況に合う弁護士を探してみてください。

不倫の時効でお悩みの方は、期限が過ぎてしまう前に、ココナラ法律相談から弁護士へご相談ください。

この記事の監修

細淵 拓弁護士のアイコン画像

細淵 拓 弁護士(神奈川県)

神奈川県 / 横浜市中区

横浜綜合法律事務所

不倫慰謝料に注力する弁護士

不倫慰謝料に強い弁護士を探す

希望の条件で弁護士を比較