福岡県 / 福岡市中央区
福岡わかたけ法律事務所
「DNA鑑定で子どもと血のつながりがないとわかったが、このまま法律上の父親であるべきか迷っている」
「托卵していたことについて、妻と相手の男性に慰謝料を請求したい」
托卵の事実に直面すると、これから何をすればよいのかという不安が生じます。
その際、嫡出否認手続きをしないと、父子関係を否定する機会を失い、血縁のない子の法律上の父親としての責任を負い続けることになるでしょう。
この記事では、托卵された子が法律上どう扱われるか、発覚したときに夫が直面する問題、疑いがあるときの対処法、父子関係を否定する手続き、否定できないときの対処法について解説します。
制度の仕組みと期限を正しく理解すれば、感情に流されず、自分と子どもにとって納得できる選択をしやすくなります。
托卵の問題の解決に向けて、一歩ずつ動き出しましょう。

托卵とは、妻が夫以外の男性との間にできた子を、夫の子であるかのように装って夫に育てさせることをいいます。
法律用語ではありませんが、離婚や親子関係の問題を考えるうえでは、法律上の父子関係や不貞行為の問題と深く関わります。
托卵そのものを直接処罰する刑法上の規定はありません。
そのため、托卵をした側が原則として刑事罰を受けることはありません。
刑事責任を問えない代わりに、托卵によって生じた親子関係や金銭面の問題は、嫡出否認や慰謝料請求といった民事上の手続きで解決していくことになります。
妻が夫に、夫以外の男性の子である可能性を正直に打ち明け、夫がそれを承知したうえで自分の子として育てると決めた場合は、一般に托卵とは区別されます。
托卵の本質は、夫をだまして血縁のない子を育てさせる点にあるためです。
ただし、法律上は、夫が事情を知っていたかどうかにかかわらず、婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定されるという仕組みは同じです。
夫が事情を承知している場合は、後から父子関係を争うことが難しくなる場合がある点にも注意が必要です。

托卵による子であっても、法律上はまず夫の子として扱われます。
これは嫡出推定という制度によるもので、DNA鑑定の結果だけでは覆りません。
妻が婚姻中に妊娠した子を夫の嫡出子と推定する旨は、民法772条に規定されています。
婚姻前に妊娠し、婚姻が成立した後に生まれた子も、同じく夫の子と推定されます。
托卵の多くは婚姻中の妊娠・出産のため、子は出生届の時点で夫の子として戸籍に記載されます。
血のつながりがないことがわかっていても、何もしなければ法律上は自分が父親であり続けるという前提で、次の行動を考える必要があります。
DNA鑑定で生物学上の父子関係がないと判明しても、それだけで法律上の父子関係がなくなることはありません。
法律上の父子関係を否定するには、家庭裁判所で嫡出否認の手続きをとる必要があります。
また、嫡出推定が及んでいる子について、DNA鑑定の結果をもとに親子関係不存在確認の手続きで争うことは、原則として認められていません。
夫婦が離婚して別居し、子が母のもとで育てられているといった事情があっても同じです。
つまり、托卵が判明した夫が父子関係を否定したい場合は、基本的に嫡出否認の手続きを期限内に行うことが手段になります。
嫡出否認は、夫が子の出生を知った時から3年以内に訴えを起こす必要があります。
期限を過ぎると、原則として父子関係を否定することはできなくなります。
嫡出推定と嫡出否認の制度は、民法等の一部を改正する法律により見直され、2024年4月に施行されました。
托卵に関係する主な変更点は次のとおりです。
否認できる人 |
父(夫)、子、母(母は子の利益を害することが明らかな場合を除く) |
|---|---|
父(夫)が訴えを起こせる期間 |
子の出生を知った時から3年以内 |
子・母が訴えを起こせる期間 |
子の出生の時から3年以内 |
離婚後300日以内に生まれ、出生時に母が再婚している子 |
再婚後の夫の子と推定 |
期限が迫っている場合は、DNA鑑定の結果を待たずに手続きを進めることも検討しましょう。
また、父が子の出生後に、その子が自分の嫡出子であることを承認した場合は、否認権を失います(民法776条)。
出生届を提出しただけでは、一般に承認には当たらないと考えられていますが、托卵の可能性を知りながら自分の子だと認めるような言動をすると、後で否認できなくなるおそれがあります。

托卵が発覚すると、夫婦関係だけでなく、お金や子どもとの関係についても多くの問題が生じます。
ここでは、離婚、養育費・婚姻費用、慰謝料、親権、相続という5つの観点から、法律上どのように扱われるかを解説します。
裁判で離婚が認められる理由は、民法770条1項に定められています。
妻が婚姻中に夫以外の男性と性的関係を持った場合は、1号の不貞行為に当たり、離婚の理由になります。
不貞行為が証明できない場合でも、托卵によって夫婦の信頼関係が壊れたといえれば、4号の婚姻を継続し難い重大な事由として離婚が認められる可能性があります。
ただし、次のようなケースがあるので注意が必要です。
なお、夫婦の話し合いで合意できれば、離婚の理由を問わず協議離婚はできます。
また、離婚を決める前に、離婚するかどうかと、父子関係を否定するかどうかは別の問題であることも押さえておきましょう。
嫡出否認は離婚をしなくても利用できますし、離婚をしても父子関係は自動的には消えません。
法律上の父子関係が解消されない限り、夫は血縁のない子どもであっても親としての扶養義務を負い続けることになります。
婚姻期間中は民法760条の定めに基づき、夫婦それぞれの収入や資産に応じて生活費(婚姻費用)を分担しなければならず、この費用には子どもの養育費・生活費も含まれます。
別居に際して妻から婚姻費用を請求された際、不貞を行った妻自身の生活費については減額や不支給が認められるケースもありますが、子どもにかかる生活費の負担義務は原則として残り続けます。
また離婚後であっても、戸籍上の父親である以上は養育費の支払義務を免れません。
托卵であったことを理由にして、独断で給付を停止することは認められていないため、支払いを怠った場合、給与の差押えといった強制執行手続きが取られるリスクもあります。
養育費等の負担から免れるためには、原則として嫡出否認の手続きを行い、法律上の父子関係そのものを解消する必要があります。
その手続きをとらなければ、離婚後も養育費の支払義務があるのが原則です。
しかし、妻が托卵の事実を長期間隠し続けたために夫が嫡出否認の機会を失い、すでに夫が多額の生活費を負担してきたなどの特別な事情がある場合には、妻から夫への養育費の請求が権利の濫用として認められなかった裁判例もあります。
ただし、これはあくまで個別の事情によって判断されるものであり、托卵であれば必ず養育費を払わなくてよいということにはなりません。
托卵が発覚した場合、夫は妻と相手の男性に対して、民法709条の不法行為に基づく慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料の金額は、次のような事情を考慮して決められます。
考慮される事情 |
金額への影響 |
|---|---|
不貞行為の期間・回数 |
長期間・多数回であるほど高くなりやすい |
子の存在と托卵の事実 |
血縁のない子を育てさせた事情は増額の要素になりうる |
婚姻期間の長さ |
長いほど高くなりやすい |
離婚に至ったかどうか |
離婚した場合は高くなりやすい |
発覚後の妻・相手の態度 |
事実を否定し続けるなど不誠実な対応は増額の要素になりうる |
なお、相手の男性に対しては、不貞行為についての慰謝料は請求できますが、離婚したこと自体についての慰謝料は、特段の事情がない限り請求できないと考えられています。
慰謝料の請求には期限があります。
民法724条により、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年を過ぎると、時効などにより請求できなくなります。
托卵がわかった時点で、証拠を整理しながら期限を意識して動くことが大切です。
法律上の父子関係が続いている限り、夫も親権者になる資格があります。
血のつながりがないことは、それだけで親権の判断で不利になるとは限りません。
親権者を決める際は、これまでの監護の実績や子との関係、子の意思など、子の利益が最も重視されます。
2026年4月1日からは、民法819条の改正により、離婚後も父母の双方を親権者とする共同親権を選べるようになりました。
協議離婚では父母の話し合いで、裁判離婚では裁判所が、双方を親権者とするか一方のみとするかを定めます。
ただし、父子関係を嫡出否認で否定した場合は、夫は法律上の父ではなくなるため、親権者になることはできません。
子との関係を続けたいのか、父子関係を否定したいのかによって選ぶ道が変わるため、慎重に検討しましょう。
民法887条により、亡くなった人の子は相続人になります。
托卵された子でも、法律上の父子関係が残っている限り、夫が亡くなれば子は相続人となり、法定相続分や遺留分を持ちます。
夫に別の実子がいる場合や再婚した場合は、托卵された子と実子が同じ立場で遺産を分けることになります。
嫡出否認によって父子関係が否定されれば、子は夫の相続人ではなくなります。
将来の相続まで含めて考えると、父子関係を否定するかどうかの判断は、家族全体に影響する重要な決断です。

托卵の疑いを持ったときは、感情に任せて行動する前に、事実確認と期限の確認を優先することが大切です。
ここでは、疑いを持った段階で夫がとるべき対応を順に紹介します。
托卵の疑いがあると、妻を問い詰めたくなるのは自然なことです。
しかし、次のような行動は控えましょう。
これらの行動は、離婚や慰謝料の話し合いで夫側に不利な事情として扱われるおそれがあります。
同時に、不貞行為の証拠となるメッセージのやり取りや写真、妊娠時期の夫婦の生活状況がわかる記録などを保存しておきましょう。
妻が事実を認めた場合は、その発言を録音したり、書面に残してもらったりすることも有効です。
托卵の疑いを確かめる最も確実な方法は、DNA鑑定です。
民間の鑑定機関に依頼する私的な鑑定と、家庭裁判所の手続きの中で行われる鑑定があります。
私的な鑑定は手軽ですが、法的な手続きで証拠として使う場合は、検体の採取方法や本人確認がしっかりした鑑定を選ぶことが重要です。
子の検体を母親に無断で採取すると、後の話し合いがこじれる原因にもなるため、進め方は慎重に検討しましょう。
家庭裁判所の嫡出否認の手続きでは、親子関係がないことを明らかにするために鑑定が行われる場合があり、その費用は原則として申立人が負担します。
DNA鑑定は法的に強制できる手続きではなく、妻が子の鑑定に応じることを拒否すること自体は可能です。
鑑定を拒否されたとしても、それだけで血縁関係の有無が法的に確定するわけではありません。
ただし、家庭裁判所の調停や訴訟の手続きの中では、鑑定に応じない態度が、ほかの証拠とあわせて総合的な事情の一つとして考慮されることがあります。
拒否された場合は、妊娠時期の夫婦の生活状況や不貞行為の証拠など、鑑定以外の資料もそろえておくことが大切です。

先述の通り、托卵による子との父子関係を否定するには、家庭裁判所での手続きが必要です。
原則として、いきなり裁判を起こすことはできず、まず調停を申し立てます。
ここでは、嫡出否認調停から訴訟、否認が認められた後の扱いまでの流れと、親子関係不存在確認の手続きが使える例外的な場合を解説します。
父子関係を否定するための最初の手続きが、嫡出否認調停です。
夫が申し立てる場合、相手方は子、または親権を行う母(通常は妻)になります。
申立先 |
相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
|---|---|
費用 |
収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手 |
主な必要書類 |
申立書とその写し、申立人の戸籍謄本、子の戸籍謄本 |
鑑定費用 |
鑑定を行う場合は原則として申立人が負担 |
調停で、夫と妻の双方が子は夫の子ではないと合意し、家庭裁判所が鑑定などの事実の調査を行ってその合意が正当と認めれば、合意に相当する審判がされます。
審判が確定すれば、父子関係は否定されます。
親子関係不存在確認調停は、嫡出否認とは異なり、期間の制限がない手続きです。
しかし、婚姻中に妊娠した子については、原則として利用できません。
例外として、妻が妊娠した時期に、夫が長期の海外出張や受刑、別居などで妻と性的関係を持つ機会がなく、夫の子を妊娠する可能性がないことが客観的に明らかな場合は、嫡出推定が及ばない子として、この手続きを利用できます。
夫婦が同居していた時期に妊娠した托卵のケースでは、この例外に当たることはほとんどありません。
嫡出否認の期限を過ぎてしまった場合でも、妊娠時期の夫婦の状況によっては例外に当たる可能性があるため、当時の生活状況を確認しておきましょう。
妻が托卵を認めない、DNA鑑定に応じないなどの理由で調停が成立しない場合は、家庭裁判所に嫡出否認の訴えを起こします。
父が否認権を行使する場合の相手方は、子または親権を行う母です(民法775条)。
訴訟では、DNA鑑定の結果などをもとに、裁判所が父子関係の有無を判断します。
期限内に調停を申し立てていれば、調停が成立しなかったという通知を受けてから2週間以内に訴えを起こすことで、調停を申し立てた時に訴えを起こしたものとみなされます(家事事件手続法272条3項)。
調停中に期限が過ぎてしまうことを避けるためにも、通知を受けた後の2週間を逃さないよう注意しましょう。
嫡出否認が認められると、子と夫の間の法律上の父子関係はなくなります。
判決や審判が確定した後、戸籍の訂正を申請することで、子の父の記載が改められます。
その結果、夫は養育費の支払義務を負わなくなり、子は夫の相続人でもなくなります。
否認が認められた後の主な扱いは次のとおりです。
夫がそれまで負担してきた生活費や養育費を誰にどこまで求められるかは、妻や血縁上の父との関係で個別に判断が分かれます。
子本人には返還を求められないという点を前提に、慰謝料請求とあわせて検討することになります。

托卵の問題は、親子関係、離婚、慰謝料、養育費、相続といった複数の法律問題が重なり合い、しかも期限があります。
ここでは、弁護士に問い合わせることで得られる主なメリットを紹介します。
托卵の問題で最も避けたいのは、嫡出否認の期限を過ぎてしまうことです。
弁護士に相談すれば、子の生年月日や出生を知った時期から、改正前と改正後のどちらのルールが適用されるか、期限がいつまでかを正確に確認できます。
期限が迫っている場合には、調停の申立てを優先するなど、状況に応じた進め方を検討できます。
また、承認に当たるおそれのある言動を避けるといった、否認権を失わないための注意点についても助言を受けられます。
嫡出否認の調停や訴訟では、申立書の作成、必要書類の収集、DNA鑑定の申出、相手方の主張への反論など、専門的な対応が求められます。
弁護士に依頼すれば、これらの手続きを代理人として進めてもらえるため、精神的な負担を減らすことができます。
妻が事実を認めない場合や鑑定を拒む場合でも、裁判所の手続きを通じて、どのように立証を進めるかを一緒に考えてもらえます。
妻や相手の男性への慰謝料請求では、不貞行為の証拠の評価や、托卵という事情を金額にどう反映させるかが問題になります。
弁護士は、過去の裁判例や事案の特徴を踏まえて、適切な請求額や交渉の進め方を判断できます。
養育費や婚姻費用についても、父子関係を否定するかどうかの方針とあわせて、支払いの範囲や減額の可能性を整理できます。
当事者同士では感情的になりやすい話し合いも、弁護士が間に入ることで冷静に進めやすくなります。
父子関係を否定するかどうかは、離婚の条件、親権、将来の相続にまで影響する重要な判断です。
弁護士に相談すれば、それぞれの選択をした場合に、法律上どのような結果になるかを具体的に説明してもらえます。
子との関係を続けたい場合と、父子関係を否定したい場合とで、とるべき手続きや注意点は大きく異なります。
自分にとって何が大切かを整理しながら、後悔の少ない選択をするための助けになります。

托卵の問題は、嫡出否認の期限が短く、判断を誤ると血縁のない子の法律上の父親としての義務を将来にわたって負い続けることになります。
また、離婚や慰謝料、養育費、親権など、検討すべき法律問題が多く、当事者だけで適切に進めることは容易ではありません。
だからこそ、家族の問題や離婚問題に詳しい弁護士に早めに相談することが大切です。
ココナラ法律相談では、地域や相談内容から、離婚・男女問題や親子関係の問題を扱う弁護士を探すことができます。
弁護士のプロフィールや解決事例、料金の目安などを確認したうえで、自分に合った弁護士を選べます。
托卵の疑いや事実に直面してお悩みの方は、ココナラ法律相談を活用して、解決への一歩を踏み出してください。
福岡県 / 福岡市中央区
福岡わかたけ法律事務所