準委任プロジェクトに参加している際、プロジェクト外作業にかかった時間分の残業が必要なのか?

■状況
私はIT会社で正社員として働いており、現在自社内で準委任のプロジェクトに携わっています。
プロジェクト管理者(=PM)からプロジェクトには1か月100%稼働(営業日20日なら8H×20日=160H)で働くように指示があり、
さらに、プロジェクト以外の作業を行った場合、その分を残業するようにPMから言われました。
プロジェクト以外の作業は、例えば会議への参加や申請手続きなどです。
業務が忙しくなくても必要とのことでした。
社内で他プロジェクトで100%稼働している社員に確認すると、残業しているとのことでした。
残業した場合は残業代の支払いはあります。

■質問
私はPMの指示に従い残業する必要があるでしょうか?

いわゆる残業命令(時間外労働の命令)の効力に関して、参考となる以下のような判例があります。

「労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間を延長して労働させることにつき、使用者が、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等と書面による協定(いわゆる三六協定)を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該三六協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、右就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負うものと解するを相当とする」(最高裁判所第一小法廷平成3年11月28日判決)

 あなたのご事案でも、就業規則に時間外労働を命じる定めがあり、その内容が合理的なものである場合には、あなたと会社との間の具体的労働契約の内容となり、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負う可能性があります。
 ただし、健康上の理由等のやむを得ない事由がある場合には、労働者が時間外労働の義務を負わないことを認める以下のような裁判例もあります。

「控訴人としては、被控訴人が診断書の提出をもって訴えた眼精疲労等の症状について、これを疑うべき事情はなかったものというべきであるから、被控訴人は、眼精疲労等の状態にあることをもって本件残業命令に従えないやむを得ない事由があったと認められる」
したがって、被控訴人は、本件残業命令に従えないやむを得ない事由があったと認められるから、これに従う義務がなかったものというべきである。」「5 以上によると、いずれにしても、被控訴人には本件残業命令に従う義務があったとはいえないから、被控訴人がこれを拒否して残業をしなかったからといって、就業規則所定の解雇事由があったとはいえない。」( 東京高等裁判所平成9年11月17日判決)

 以上の裁判実務を踏まえならば、まずは、あなたの会社の就業規則を確認してみて下さい。それらを見てもよくわからない場合には、就業規則等を持参し、お住まいの地域の弁護士に直接相談してみる方法もあるかと思います。

ご回答頂きありがとうございます。

就業規則に時間外労働を命じる定めがあり、三六協定に時間外労働に関する協定届が書かれていることも確認できました。
そのうえでの追加の質問ですが、
三六協定の「時間外労働をさせる必要のある具体的事由」に該当しない場合には、従う必要は無い認識でよいでしょうか?

具体的事由は「臨時の顧客都合対応、障害対応」との記載しかなく、今回のようなプロジェクト以外の会議(課会・部会)などに参加した場合は該当しないと思われるため。

三六協定とは、従業員に法定労働時間を超える時間外労働や休日労働を指示するために、事前に締結しなければならない労使協定のことを言います。適用場面が法定労働時間を超える時間外労働の場面のため、必要性も限定して定められているものと思われます。
 他方、時間外労働となる場合でも、所定労働時間は超えるものの、法定労働時間内というケースもあり得ます。その場合、時間外労働の業務命令の必要性はより広く認められる可能性があります。
 労働者は業務命令に従わない場合,業務命令違反として懲戒処分などを受ける可能性もあるため、その点留意が必要です。
 なお、残業命令を拒否できるかについて、以下のサイトがコンパクトにまとまっているかと思います。「就業規則や労働協約等の規定があったとしても労働者の健康など利益を著しく損なう場合は,労働者保護の観点から拒否できる余地があります。いずれにせよ,労使でよく話し合い,労使の利害の調整を図ることが問題解決の早道ではないでしょうか。」とのコメントも対応の参考になるかと思います。

【参考】「5-14 残業命令を拒否できるか|労働相談Q&A」(広島県サイト)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/work2/wn500079.html