「親が逝去して銀行口座が凍結され、葬儀費用や遺産整理に必要な資金が引き出せない」
「他の相続人とのトラブルを避けるため、なるべく早く預金の払い戻し手続きを済ませたい」
大切な家族を亡くし、精神的にも余裕がない中で直面するのが、この口座凍結の問題です。
しかし、口座凍結の手続きを放置したり、亡くなった直後に勝手に現金を引き出したりすると、遺産の一部を処分したとみなされて相続放棄ができなくなる危険性や、他の相続人から使い込みを疑われて遺産分割トラブルに発展するリスクを伴います。
そこで本記事では、相続に伴う口座凍結の解除にかかる日数の目安や、1日でも早く資金を引き出す法的な対処法について解説します。
ご自身の状況に応じた最適な解決策が見つかり、遺産相続の不安を解消するきっかけになれば幸いです。

銀行の窓口に必要書類を不備なく提出してから、実際に口座の凍結が解除されるまでには、一般的に約2〜3週間ほどの日数がかかります。
書類を提出したからといって、その場ですぐに現金が引き出せるわけではなく、銀行側で提出された戸籍や遺産分割協議書などの内容に間違いがないか、正確に法的な審査・確認を行うため、一定の時間を要します。
払戻しの手続きが完了すると、代表相続人が指定した口座へ預金残高が振り込まれる流れが基本です。
なお、前述した約2〜3週間というのは、あくまで銀行側の事務処理にかかる期間を指します。
実際には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取り寄せる作業や、誰がどの預金を引き継ぐかを話し合う遺産分割協議が難航するなど、窓口へ行く前段階の準備に時間がかかり、トータルで数ヶ月から半年以上かかるケースもめずらしくありません。
平日に役所や銀行へ足を運ぶ時間が取れない方は、さらに日数が延びてしまう可能性が高いでしょう。

銀行に死亡の連絡を入れると直ちに口座が凍結され、一切の取引ができなくなります。
遺産整理をスムーズに進めるため、銀行へ連絡を入れる前にいくつか確認しておくべき重要なポイントがあります。
死亡後に残高や取引履歴を確認する必要がある場合は、金融機関の相続手続窓口に確認し、残高証明書や取引履歴の発行を依頼する方法があります。
死亡後に故人のキャッシュカード等を利用して取引することは、相続人間のトラブル等につながるおそれがあるため避けた方が安全です。
口座が凍結されると、ATMでの残高照会や記帳すらできなくなってしまいます。
記帳をしておくことで、現在の正確な預金残高だけでなく、定期的な入出金や引き落としの有無を把握することが可能です。
遺産分割の話し合いをスムーズに進めるためにも、最新の取引履歴を残しておくことは極めて重要だと言えます。
故人が生前に契約していた電気・ガス・水道などの公共料金や、クレジットカードの引き落とし口座になっている場合は、速やかに支払方法を変更してください。
口座が凍結されるとすべての引き落としがストップし、故人の未払い債務として処理されてしまいます。
そのまま放置すると、遅延損害金が発生して遺産の価値を減らしてしまうリスクがあります。
各サービス会社へ連絡し、契約の終了・名義変更の要否を確認したうえで、必要に応じて相続人等の口座からの支払い又は払込用紙による支払いへ切り替えましょう。

口座が凍結されると不便だからといって、死亡後すぐにキャッシュカードで現金を引き出す行為には大きな危険が伴います。
法律上のリスクや親族間トラブルの原因となるため、十分な注意が必要です。
解除に日数がかかるからといって、亡くなった直後にキャッシュカードで勝手に現金を引き出す行為は極めて危険です。
民法第921条の定めに則り、遺産の一部を処分したと判断されると、すべての財産・負債を引き継ぐ意思があるという単純承認とみなされます。
単純承認が成立してしまうと、後から故人に多額の借金があると判明しても、原則として相続放棄ができなくなってしまいます。
相続放棄を検討している場合は、故人の預金を引き出したり使用したりする前に弁護士等へ相談するのが安全です。
葬儀費用への支出であっても、金額や支出内容など個別事情によって法定単純承認に当たるかの判断が問題となり得るため、「領収書を保管して正当な用途に使えば問題ない」とは一概にいえません。
他の相続人に無断で預金を引き出すと、遺産を使い込んだのではないか、自分の分として隠し持っているのではないかと疑われる原因になります。
引き出したお金を葬儀費用や病院の未払い金に充てたのだとしても、不信感から遺産分割トラブルに発展するケースは少なくありません。
親族間での揉め事を防ぐためには、事前に関係者全員へ事情を説明し、同意を得ておくことが鉄則です。

金融機関で口座凍結を解除し、払戻しを受けるためには様々な公的書類の提出が求められます。
必要となる書類は遺言書の有無によって大きく異なるため、それぞれのケースについて詳しく確認していきましょう。
故人が有効な遺言書を残していた場合でも、誰が単独で手続きをできるかは、遺言の内容、遺言執行者の有無・権限、金融機関の取扱いなどによって異なります。
まずは遺言書の内容を確認し、金融機関へ必要書類を確認しましょう。
一般的に求められる書類は以下の通りです。
遺言書がない場合は、誰が預金を受け取るかを相続人全員で話し合う必要があるため、提出書類が多くなります。
一般的に求められる書類は以下の通りです。
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を集める作業は、これまで本籍地ごとの役所に請求する必要があり、大変な手間がかかっていました。
しかし、2024年(令和6年)3月1日より「戸籍謄本の広域交付制度」が開始され、最寄りの市区町村窓口で全国の戸籍謄本をまとめて取得できるようになっています。
これにより、対象となる戸籍については遠方の役所との郵送のやり取りを減らし、書類収集の負担を軽減できます。
ただし、広域交付を利用できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属等に限られ、兄弟姉妹の戸籍を相続人として請求する場合などは広域交付の対象外です。
ただし、代理人や郵送での請求はできず、相続人本人が顔写真付きの本人確認書類を持参して直接窓口へ行く必要がある点に注意してください。
複数の銀行に口座がある場合、それぞれの窓口で分厚い戸籍謄本の束を提出し、返却を待ってから次の銀行へ行くのは非常に手間がかかります。
そのような時は、法務局で法定相続情報一覧図の写しを取得しておくと便利です。
法定相続情報一覧図の写しは無料で複数通の交付を受けることができ、対応している金融機関では戸籍謄本一式に代えて利用できるため、複数の金融機関で並行して相続手続きを進めやすくなります。
具体的な取扱いは各金融機関に確認してください。

実際に口座凍結を解除し、払い戻しを受けるまでにはいくつかの手順を踏む必要があります。
ここでは、具体的な手続きの流れと、金融機関ごとの特殊なルールについて解説します。
まずは、故人が口座を持っていた金融機関の支店窓口や相続事務センターへ電話し、口座名義人が亡くなった事実を伝えます。
役所へ死亡届を提出しても、自動的に銀行へ通知されて凍結されるわけではありません。
遺族からの自己申告や、銀行側が新聞の訃報などで死亡の事実を知ったタイミングで、はじめて口座が凍結され取引停止となります。
口座の凍結後、金融機関から具体的な手続きの案内や専用の書類一式が送付、または手渡されます。
案内に従い、役所等で必要となる戸籍謄本や印鑑証明書などの公的書類を集めましょう。
本籍地が遠方の場合、郵送での戸籍請求に日数がかかることがあるため、早めに取り掛かることをおすすめします。
書類集めと並行して、有効な遺言書が残されていないかを確認してください。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を開き、誰がどの口座の預金を引き継ぐのかを取り決めます。
全員の合意が形成できたら、遺産分割協議書を作成するか、銀行所定の相続届に全員分の署名と実印の押印を行います。
書類がすべて揃ったら、事前に予約を入れたうえで銀行の窓口へ提出しましょう。
不備がなければ銀行側での審査が進み、約2〜3週間後に指定した口座へ預金が払い戻され、手続き完了となります。
ゆうちょ銀行の場合、まずは窓口で相続確認表という独自の書類を提出し、後日貯金事務センターから必要な手続きの案内が届くという2段階のステップを踏む必要があります。
また、楽天銀行や住信SBIネット銀行などのネット銀行は実店舗を持たないため、カスタマーセンターへの連絡から始まり、すべて郵送でのやり取りが中心です。
書類の不備があると郵送の往復でかなりのタイムロスが発生し、通常よりも日数がかかってしまう可能性があるため注意しましょう。

手続きが煩雑だからといって、凍結された口座をそのまま放置しておくことは推奨できません。
時間が経過するほど手続きが難しくなるだけでなく、取り返しのつかない不利益を被るリスクがあるからです。
手続きが面倒だからといって口座をそのまま放置しておくと、休眠預金等活用法に基づき、10年経過後に休眠預金として預金保険機構へ移管されてしまいます。
休眠預金等として預金保険機構へ移管された後も、相続人は取引のあった金融機関で所定の相続手続きを経て払戻しを受けることができます。
休眠預金になったことだけを理由に、必ずしも通常の相続手続きより複雑になるとは限りません。
時間が経てば経つほど、他の相続人が亡くなって代襲相続が発生するなど、関係者が増えて権利関係が複雑化するリスクが高まるでしょう。
故人に借金などの負債があるかもしれない場合、口座手続きの放置は大変危険です。
民法第915条により、相続放棄は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければならないと定められています。
預金口座の調査や手続きを後回しにしている間にこの期限を過ぎてしまうと、故人の借金を全額背負わなければならない恐れがあるため注意してください。
故人の口座残高が数百円から数千円などごくわずかな場合、戸籍の発行手数料などの経費が上回る費用倒れになってしまうケースがあります。
このような事情から、事実上そのまま放置されてしまう口座があることも事実です。
ただし、残高が少なくても、その口座が故人の未払い債務(ローンの引き落とし等)に連動している可能性は否定できません。
後から思わぬ借金が発覚するリスクを防ぐためにも、最低限の取引履歴の確認は行っておくのが安全だと言えます。

葬儀費用や遺産整理の資金など、まとまった現金がすぐに必要な場面は多いものです。
口座凍結の解除を待てない場合に活用できる、法的な救済措置について解説します。
葬儀費用などの資金が必要で、数ヶ月もかかる遺産分割協議の完了や口座凍結の解除を待てない場合は、仮払い制度が有効です。
2019年(令和元年)7月の民法改正(第909条の2)により創設されたこの制度を使えば、遺産分割協議が終わる前であっても、各相続人が単独で一定額の払い戻しを受けられます。
他の相続人の同意や印鑑証明書がなくても、必要な戸籍謄本等を持参すれば金融機関の窓口で手続きが可能です。
仮払い制度で金融機関から直接引き出せる金額には、法律によって一定の上限が設けられています。
具体的な計算式は以下の通りです。
亡くなった時の預金残高 × 1/3 × 払戻しを求める人の法定相続分
ただし、1つの金融機関につき上限は150万円までと決められています。
この上限を超える払戻しが必要な場合には、遺産分割の審判または調停を申し立てたうえで、家庭裁判所に預貯金債権の仮分割の仮処分を求める方法があります。
家庭裁判所が必要性を認め、他の共同相続人の利益を害しないと判断した範囲で認められます。

口座凍結の解除手続きは専門家に代行を依頼できますが、依頼先によって対応できる業務範囲が異なります。
煩雑な口座凍結の解除手続きは、専門家へ依頼して代行してもらうことが可能です。
しかし、依頼先によって対応できる業務範囲が以下のように異なります。
弁護士 |
戸籍収集や口座解約の代行だけでなく、相続人同士の紛争の仲裁や代理交渉、調停・裁判まですべての法的トラブルに制限なく対応可能。 |
|---|---|
司法書士 |
不動産の相続登記(名義変更)が専門。戸籍収集や預金解約の代行はできるが、紛争状態にある相続の代理交渉は不可。 |
行政書士 |
遺産分割協議書の作成や戸籍収集が専門。不動産登記や代理交渉は不可。費用は比較的安価。 |
銀行 |
遺産整理業務として手続き全般をサポートするが、実際の法務手続きは提携の司法書士等が行うため、手数料が数百万円単位と高額になりがち。 |
誰がどの預金を引き継ぐかで他の相続人と少しでも揉めている、あるいは揉めそうな火種がある場合は、迷わず弁護士に依頼してください。
相続人間に法的な争いがある場合、報酬を得て代理交渉を行うことは原則として弁護士の業務です。
司法書士や行政書士が対応できる業務には法令上の範囲・制限があるため、紛争が生じている場合は弁護士への相談が適しています。
手続きの途中で意見の対立が表面化すると、司法書士や行政書士では対応できなくなり、結局そこから弁護士を探して依頼し直すことになり二度手間です。

ここからは、ココナラ法律相談の「おしえて!法律Q&A」に寄せられた、相続・口座凍結の解除に関する実際のお悩みと、弁護士による回答の概要をご紹介します。
相続・口座凍結の解除については、相続放棄検討中の出金トラブルと、遺産分割前の預金払戻し制度、葬儀・納骨費用の引き出し方法のような相談が寄せられています。
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【質問】 先日父が亡くなりました。相続放棄を検討しているのですが、口座に残っている預金を引き出すことは可能でしょうか。 |
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【回答】 相続放棄を検討している段階で預金を引き出すと、法定単純承認事由である相続財産の処分(民法921条1号)に該当すると評価されるおそれがあるため、避けた方が無難と考えられます。ただし、出金処理を行っただけで当然に「処分」に該当するとは言い切れず、個別具体的な事情によって判断が分かれる余地があります。 |
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【質問】 相続税の支払いのために父の預金を引き出したいのですが、銀行から相続人の確定を求められました。相続放棄をした人がおり、まだ遺産分割協議もしていない状況です。放棄した人がいることを銀行にどう証明すればよいでしょうか。 |
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【回答】 相続放棄の証明については、相続放棄申述受理証明書を用いるとよいです。遺産分割協議前の段階であれば、相続預金の払戻し制度を利用できる可能性があるため、必要書類については金融機関に直接確認するとよいでしょう。 |
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【質問】 伯父が亡くなり、遺骨を預かって埋葬することになりました。納骨費用に充てようと伯父の貯金をおろそうとしたところ、ゆうちょ銀行の口座が凍結されてしまいました。伯父は離婚しており、養子に出た娘がいます。貯金をおろすにはどうすればよいでしょうか。 |
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【回答】 金融機関によって取り扱いは異なりますが、一般的には遺産分割協議書が必要になるため、娘さんへの連絡が必要になると考えられます。あわせて、ゆうちょ銀行に必要書類を確認するとよいでしょう。なお、単独の相続人でも、残高の3分の1に法定相続分を乗じた金額(上限150万円)までは払戻しを受けられる制度があります。 |

相続に関する手続きの中でも、弁護士に依頼することで得られるメリットは計り知れません。
時間的・精神的な負担を軽減し、円滑に手続きを進めるための具体的な利点をご紹介します。
弁護士へ依頼する最大のメリットは、圧倒的な時間と手間の削減です。
役所での複雑な戸籍収集、遺産分割協議書の作成、平日の日中しか開いていない金融機関窓口とのやり取りなどを、すべて弁護士に一任できます。
仕事や家事で忙しい方でも、日常生活に支障をきたすことなくスムーズに相続手続きを進めることが可能です。
親族同士で直接お金の話をすると感情的になりやすく、話が平行線をたどりがちです。
弁護士が依頼者の代理人として他の相続人との連絡・交渉を行うことで、依頼者本人が直接やり取りする負担を減らし、法的な論点を整理しながら協議を進めることができます。
事案によっては、必要書類の収集や金融機関とのやり取りを効率化し、手続きの長期化を防げる可能性があります。ただし、相続人間の対立が強い場合などは、弁護士に依頼しても短期間で解決できるとは限りません。

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「親の口座が凍結されてしまい、何から手をつければいいかわからない」
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このようなお悩みをお持ちの方は、1日でも早く弁護士へ相談することをおすすめします。
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