親が亡くなると、残された家族である兄弟間で遺産相続トラブルに発展するケースは決して少なくありません。
「長年介護をしたから多く遺産をもらいたい」「兄弟に相続するという内容の遺言が残されていたが、納得いかない」など、兄弟ならではの複雑な感情や生活状況の違いが絡むことが多いでしょう。
当事者のみの話し合いがこじれて長期化すると、関係性が修復不可能になるだけでなく、不利な条件で合意してしまい、本来受け取れるはずの遺産や権利を失うリスクもあります。
本記事では、親や兄弟の遺産を分ける際の「法定相続分」の基本から、よくあるトラブル事例と法的解決策までまとめました。
ご自身の状況に適した対処法を検討し、後悔のない遺産分割を進めるための第一歩を踏み出しましょう。

親や兄弟が亡くなった際、残された兄弟がどのくらいの割合で遺産を受け取るのかという基本的なルールを解説します。
遺産相続の割合(法定相続分)は、被相続人・相続人が誰かによって民法で明確に定められています。
被相続人(亡くなった親)の配偶者(もう一方の親)が生きている場合、配偶者は常に相続人となります。
民法第900条により、配偶者の法定相続分は「2分の1」です。
そして、残りの「2分の1」を、子供(兄弟)の人数で均等に分けることになります。
具体的な例を挙げると、以下のような形になります。
遺産 |
3,000万円 |
|---|---|
被相続人 |
父親 |
相続人 |
母親と兄弟2人(長男・次男) |
法定相続分 |
母:1,500万円 長男と次男:それぞれ750万円ずつ |
また、被相続人の配偶者が、すでに亡くなっている場合は、遺産のすべてを、子供である兄弟の人数で均等に分けます。
遺産が3,000万円で兄弟2人の場合、それぞれ1,500万円ずつが法定相続分です。
遺産 |
3,000万円 |
|---|---|
被相続人 |
父親 |
相続人 |
兄弟2人(長男・次男) |
法定相続分 |
長男と次男:それぞれ1500万円ずつ |
本来相続人となるはずだった子供(兄弟)が、親よりも先に亡くなっているケースもあるでしょう。
この場合、亡くなっている兄弟の子供(親から見た孫、自分から見た甥・姪)が代わりに相続権を引き継ぐ「代襲相続」という制度が適用されます(民法第887条)。
代襲相続人の相続分は、本来の相続人が受け取るはずだった割合と同じです。
なお、孫が亡くなっていればひ孫へというように、代襲相続がどこまでも続きます(再代襲相続)。

そもそもなぜ兄弟間で遺産相続トラブルが起きやすいのでしょうか。
兄弟間の遺産相続において、実際に発生しやすい具体的なトラブルとその法的な問題点について解説します。
現金と異なり、実家などの不動産は物理的に分けるのが難しいため、トラブルになりやすい傾向があります。
ただし話し合いがまとまらず、「とりあえず兄弟全員の共有名義にしておこう」とするのは危険です。
将来売却したくなったり、修繕が必要になったりした際、共有者全員の同意が必要となり、身動きが取れなくなってしまいます。
「もっと貯金があったはずなのに、同居している兄が開示した財産目録が少なすぎる」というケースも頻発します。
被相続人の生前に同居の兄弟が勝手に預金を引き出していたり、財産情報を意図的に隠蔽したりしている疑いがある状況です。
亡くなった親と同居していた人は、資産状況や通帳の保管場所を把握しやすい立場にある一方で、離れて暮らす兄弟が財産管理するのは難しく、この不透明さが同居の兄弟に対する疑念を生む原因となります。
当事者同士で問い詰めても水掛け論になることが多く、金融機関への履歴照会など専門的な調査が必要となります。
「弟が住宅購入資金として1,000万円援助してもらっていた」など、特定の兄弟だけが生前に特別な利益を受けていたケースです。
これを考慮せずに遺産を均等に分けると不公平が生じるため、民法第903条ではこれを「特別受益」として扱い、遺産の前渡しとみなして計算を調整するルールがあります。
ただし、何が特別受益に該当するかの判断は難しいため、弁護士への相談が適切です。
被相続人の介護や家業の手伝いなどで財産の維持・増加に特別の貢献をした場合、「寄与分」として本来の相続分より多く財産を受け取れる可能性があります(民法第904条の2)。
しかし、法的に寄与分が認められるハードルは非常に高く、単なる「家族としての助け合い」程度では認められません。
兄弟間で「どれだけ貢献したか」の認識にズレが生じやすく、その他の兄弟が「法律通り平等に分けるべきだ」と主張すると、意見は真っ向から対立してしまいます。
残された遺言書の内容が、「特定の兄弟に全財産を相続させる」といった極端に不平等なものであるケースです。
親の遺産相続であれば、他の兄弟が遺留分侵害額請求を行うことで、最低限の取り分の金銭による清算を求めることができます(民法第1046条)。
ただし、この請求権には厳しい期限があり、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内」に行使しないと時効により消滅してしまいます(民法第1048条)。
期限を過ぎると一切の請求ができなくなるため、不平等な遺言書が見つかった場合はすぐに弁護士へ相談することが重要です。
戸籍を収集して初めて「親に離婚歴があり、前妻との間に子供がいた」ことや「認知した隠し子がいた」ことが発覚するケースがあります。
遺産分割協議は、法定相続人「全員」で行わなければ法的に無効です。
面識のない異母兄弟などであっても勝手に除外することはできず、連絡を取って協議に参加してもらう必要があります。
長年連絡を取っていない疎遠な兄弟がいる場合や、居場所が全くわからない行方不明の兄弟がいる場合、その人を無視して遺産分割の手続きを進めることは許されません。
家庭裁判所で不在者財産管理人を選任するなどの法的な手続きを経る必要があり、非常に手間と時間がかかります。
亡くなった兄弟に多額の借金があった場合、放置すると生きている兄弟が返済義務を負ってしまいます。
マイナスの財産を引き継がないためには、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うことが有効です。
相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に手続きを完了させる必要があります(民法第915条)。
この3ヶ月の期限を過ぎてしまうと、借金を含むすべての財産を自動的に相続したとみなされてしまうため、早急な対応が求められます。

前述のようなトラブルが発生し、当事者同士での解決が困難になった場合は、法的な手続きに則って段階的に解決を図ります。
具体的な3つのステップは以下の通りです。
まずは相続人全員による話し合い「遺産分割協議」を行います。
ここでは全員の合意が必要ですが、必ずしも一堂に会する必要はなく、電話や手紙、メールでのやり取りでも問題ありません。
合意に至った場合は、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、全員の実印による押印と印鑑証明書の添付を行います。
当事者同士の協議で合意できない、または話し合いすら拒否されている場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
調停では、裁判所の調停委員が中立的な立場で間に入り、双方の言い分を聞きながら合意に向けた解決案を探ってくれます。
直接顔を合わせずに交渉を進められるため、感情的な対立を和らげる効果が期待できるでしょう。
調停を重ねても双方の溝が埋まらず、合意の見込みがない場合は調停不成立となり、自動的に遺産分割審判へと移行します。
審判では、当事者の主張や提出された証拠、一切の事情を考慮したうえで、裁判官が法的な観点から遺産の分割方法を強制的に決定します。
審判による決定には強制力があるため、最終的には必ず決着がつく仕組みです。

遺産相続トラブルを避けるには、「生前にどれだけ準備できたか」が重要なポイントになります。
将来、残された兄弟間で争いが起きないよう、今のうちから実践すべき生前対策をご紹介します。
自筆証書遺言は形式不備で無効になるリスクがあるため、公証役場で公正証書遺言として作成するのがおすすめです。
兄弟間での折り合いがつかないリスクがある場合は、それに加えて、遺言の内容を実現する責任者である遺言執行者を指定しておきましょう。
遺言執行者に弁護士などの第三者を指定しておけば、死後の預金解約や不動産の名義変更を単独で行う権限を持ちます。
これにより、特定の兄弟が手続きを妨害したり、協力を拒んだりするトラブルを未然に防ぐことが可能です。
ただし、親の相続においては兄弟に遺留分があるため、完全に想定どおりに相続するのが難しいケースがある点には注意が必要です。
遺産分割の対象となる財産そのものを減らすために、元気なうちに生前贈与を活用するのも一つの手段です。
財産を渡したい兄弟や、その子供(孫や甥・姪)に対して贈与を行うことで、死後の遺産争いの対象から外すことができます。
ただし、贈与税が発生する可能性があるため、年間110万円の基礎控除などを活用した計画的な対策が求められます。
財産がどこにどれだけあるのか不明確な状態は、兄弟間の疑心暗鬼を生みます。
元気なうちに、預貯金の口座情報、不動産の権利証の場所、有価証券や借金の一覧などをまとめた財産目録を作成しておきましょう。
情報を透明化しておくことで、「もっと財産を隠しているはずだ」という無用なトラブルを回避できます。
実家などの不動産を特定の兄弟が単独で相続する場合、他の兄弟へ代償として支払う現金(代償金)が不足して揉めるケースが多々あります。
この対策として、単独相続させたい兄弟を受取人とする生命保険に加入しておくことが有効です。
受け取った死亡保険金は原則として遺産分割の対象外となるため、そのまま代償金の支払いに充てることができます。
認知症になり判断能力を失うと、不動産の売却や預金の引き出しが凍結され、将来の相続対策すらできなくなってしまいます。
元気なうちに家族信託を活用することで、信頼できる家族に財産の管理権限を委託することができます。
希望に沿った柔軟な財産管理と、死後のスムーズな資産承継を両立できる制度といえるでしょう。
親の相続の場合、片親が亡くなった時の相続(一次相続)だけでなく、その後に残された親が亡くなった時の相続(二次相続)まで見据えた対策が必要です。
一次相続で配偶者の税額軽減を最大限利用して片親に全財産を集中させると、二次相続で子供たちに多額の相続税がのしかかり、トラブルになるケースがあります。
家族会議を開き、長期的な視点で「誰が何を相続するのが家族にとって最善か」を共有しておくことが大切です。
兄弟が親に対して著しい虐待を行っていたり、重大な侮辱を与えたりしていた場合、「相続廃除」という制度を利用できる可能性があります(民法第892条)。
被相続人が家庭裁判所に申し立てて認められれば、その兄弟から相続権と遺留分を完全に剥奪することが可能です。
ただし、単に「仲が悪い」「気に入らない」といった理由では認められず、極めて厳しい基準が設けられています。

遺産相続において兄弟間で生じるトラブルには、多様なケースが存在します。
長年の介護負担や葬儀費用を巡って主張が対立する際も、法的に個別の事情が考慮される可能性があります。
当事者同士での解決が困難な問題は、専門家である弁護士へご相談いただくことをおすすめします。
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【質問】 両親はすでに他界しており、兄弟5人のうち独身の次男が亡くなりました。しかし、次男のお金を長女が独占し、他の兄弟に渡さず揉めている状況です。この場合、どうすればいいのでしょうか? |
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【回答】 亡くなった方に配偶者や子がおらず両親も他界している場合、残りの兄弟全員が法定相続人となります。そのため長女が遺産を独占することはできず、遺産分割協議を行わなければなりません。解決が難しい場合は弁護士にご相談ください。 |
参考:「遺産相続で兄弟で争っています。」
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【質問】 亡くなった弟の遺産相続について悩んでいます。相続人は私と兄の2人ですが、兄は認知症で判断能力がありません。遺産分割のため兄の配偶者を成年後見人にすべきでしょうか。また、亡くなった弟の配偶者が遺産を開示しない場合はどう対応すべきでしょうか。 |
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【回答】 将来を見据えるなら成年後見人の選任が望ましいものの、遺産分割のみであれば特別代理人の選任も検討できます。財産開示について相手に協力する義務はないため、ご自身での調査が必要です。対応が難しい場合は、弁護士にご相談ください。 |
参考:「相続者に判断能力がない場合の財産分与 」
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【質問】 両親の他界に伴う遺産分割で悩んでいます。音信不通だった長男へ、介護費用や法要・墓じまい等の費用を控除して遺産を三等分する案を提示しましたが、長男側から死亡時の残高での分割を求められています。これに従わないといけないのでしょうか? |
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【回答】 相手の主張にそのまま従う必要はありません。遺産分割において、葬儀や法要の費用を控除することや、長年の介護負担が考慮される可能性があります。費用の内訳や資料を整理したうえで、弁護士にご相談ください。 |
参考:「音信不通だった兄の法定相続分取得の主張に従い均等に遺産分割しなければならないのか?」

兄弟間での遺産相続に少しでも不安や対立がある場合は、当事者だけで解決しようとせず、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に依頼することで得られる4つの大きなメリットをご紹介します。
弁護士はあなたの代理人として、他の兄弟やその配偶者との交渉をすべて窓口となって引き受けます。
顔を合わせて直接やり取りする必要がなくなるため、精神的なストレスが大幅に軽減されるでしょう。
法律の専門家が客観的な立場で介入することで、感情的な対立が沈静化し、冷静な話し合いによる早期解決が期待できます。
同居の兄弟が財産を隠している疑いがある場合、弁護士の権限(弁護士会照会など)を用いて金融機関等の調査を行うことが可能な場合があります。
また、特別受益や寄与分といった判断が難しい問題についても、過去の判例や確かな証拠に基づいた法的に有効な主張を展開できます。
結果として、ご自身の正当な権利を守り、適正な遺産を受け取れる可能性が高まるでしょう。
当事者間の協議が決裂し、家庭裁判所での遺産分割調停や審判に発展した場合、個人で対応するのは非常に困難です。
弁護士に依頼すれば、裁判所に提出する複雑な申立書の作成から、調停期日への同行・代理出席まで、すべての手続きを一任できます。
慣れない裁判所での手続きにおいても、強力な味方として一貫したサポートを受けられるのは大きな安心材料です。
遺産分割の話し合いがまとまった後も、預金の解約や不動産の名義変更(相続登記)など、煩雑な手続きが待っています。
とくに2024年4月1日からは法務省により「相続登記の義務化」が施行されており、3年以内に名義変更を行わないと罰則の対象となる可能性があるため、放置は厳禁です。
法律事務所によっては司法書士と連携しており、トラブル解決から登記の完了までワンストップで対応してくれるため、手間と時間を大幅に削減できるでしょう。

親や兄弟が亡くなり、遺産相続で家族間にトラブルが発生している場合、当事者同士での解決は極めて困難です。
過去の不満や生活状況の違いが複雑に絡み合い、話し合いが長引くほど関係性は悪化してしまいます。
感情的な対立が深まる前に、法律の専門家である弁護士に間に入ってもらうことが早期解決の鍵となります。
家族間の相続トラブルを抱えている方は、ぜひ「ココナラ法律相談」を使ってご自身の悩みに合った弁護士を探してみましょう。
豊富な解決実績を持つ弁護士が、あなたの正当な権利を守り、最適なサポートを提供してくれます。