「故人の銀行口座が突然凍結されて生活費が引き出せない」
「遺言書らしきものを見つけたがどう扱えばいいかわからない」
「役所や金融機関から求められる書類が多すぎて混乱している」
身近なご家族が亡くなり、深い悲しみのなかにあるにもかかわらず、容赦なく迫ってくるのが数々の相続手続きです。
相続手続きの中には、法律で明確な期限が定められているものが多数存在します。
もしよくわからないからと放置してしまうと、故人の隠れた借金を背負わされたり、法律違反として過料を請求されたりするリスクもあります。
この記事では、相続発生直後から完了するまでに必要な手続きの全体像や、それぞれの期限、具体的な進め方を網羅的に解説します。
お読みいただくことで、いつまでに何を優先して行うべきかが整理され、着実に手続きを進められるようになるでしょう。

遺産相続に関する手続きは、役所への届出から名義変更、税金の申告まで数十種類に及びます。
まずは焦らず、いつまでに何をすべきかという全体のスケジュールを把握することが重要です。
以下に、期限別に優先して取り組むべき主な手続きと提出先を一覧表にまとめました。
期限の目安 |
手続き内容 |
提出先・窓口 |
|---|---|---|
7日以内 |
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市区町村役場 |
10日・14日以内 |
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1ヶ月以内目安 |
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1〜2ヶ月以内目安 |
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3ヶ月以内 |
相続放棄・限定承認の申述 |
家庭裁判所 |
4ヶ月以内 |
所得税の準確定申告 |
税務署 |
10ヶ月以内 |
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3年以内 |
不動産の相続登記(名義変更) |
法務局 |
上記のように、手続きによって管轄する窓口が異なりますので、期限の短いものから順に、計画的に進めていきましょう。
ここからは、各手続きの具体的な内容や必要書類、費用の目安について詳しく解説していきます。
主な必要書類 |
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|---|---|
費用の目安 |
死亡診断書の発行費用:5,000円〜1万円程度 |
ご家族が亡くなった直後、一番初めに行うべき法的な手続きが死亡届の提出です。
戸籍法第86条の規定により、同居の親族などは死亡の事実を知った日から7日以内に役所へ届け出る義務があります。
提出先は、亡くなった方の本籍地か死亡地、または届出人の所在地のいずれかの市区町村役場です。
役所に死亡届が受理されると、その情報は内部で共有されるため、過度に焦らなくても順次その他の手続きへの案内を受けることができます。
主な必要書類 |
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|---|
死亡届を提出した後は、年金や健康保険の停止手続きを進めます。
亡くなった方が国民年金を受給していた場合は14日以内、厚生年金を受給していた場合は10日以内に、お近くの年金事務所へ年金受給権者死亡届を提出しなければなりません。
手続きを怠り、亡くなった後も年金を受け取り続けてしまうと、後日一括での返還を求められたり、不正受給とみなされたりするリスクがあるため注意が必要です。
なお、事案によって未支給年金や遺族年金を請求できる場合があり、求められる添付書類が異なる可能性があります。
主な必要書類 |
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|---|---|
費用の目安 |
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四十九日法要などが終わり、少し落ち着きを取り戻した頃に必ず行うべきなのが遺言書の有無の確認です。
遺言書は法律によって定められた法定相続分よりも優先されるため、遺産分割において最も重要な指針となります。
もし自宅で自筆証書遺言を発見した場合、勝手に開封してはならず、民法第1004条に基づき家庭裁判所で検認という手続きを受けなければなりません。
遺言書の中に遺言執行者が指定されている場合は、その人物が預貯金の解約や不動産の名義変更などを主導する権限と義務を負うことになります。
金融機関は、口座名義人が死亡した事実を知った時点で、不正引き出しや相続トラブルを防ぐために直ちに口座を凍結します。
口座が凍結されると、電気・ガス・水道といった公共料金や、クレジットカードの利用代金の自動引き落としができなくなります。
そのため、速やかに各契約会社へ連絡し、名義変更や支払い方法の変更、不要なサービスの解約を行わなければなりません。
近年、遺族を悩ませることが多いのが、スマートフォンの有料アプリや定額制動画配信サービスなどのデジタル遺品です。
解約漏れが発生すると、利用していないにもかかわらず毎月請求が届く恐れがあるため、スマートフォンや利用明細などを手がかりに契約状況を早急に洗い出しましょう。
主な必要書類 |
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|---|
亡くなった方が生命保険に加入していた場合、死亡保険金の請求手続きも忘れずに行います。
受取人が特定の個人に指定されている死亡保険金は、民法上の相続財産ではなく受取人の固有財産として扱われます。
そのため、他の相続人全員と遺産分割協議を行うのを待つ必要はなく、受取人が単独ですぐに保険会社へ請求することが可能です。
保険法第95条の規定により、保険金の請求権は3年で消滅時効を迎えるため、後回しにせず早めに手続きを完了させましょう。
書類名 |
取得費用の目安 |
|---|---|
現在の戸籍謄本 |
1通450円 |
除籍謄本・改製原戸籍 |
1通750円 |
住民票の除票 |
1通約300円 |
誰が財産を受け継ぐのかを法的に確定させるために、徹底した相続人調査を行う必要があります。
具体的には、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍をすべて収集し、法定相続人を洗い出します。
この調査を怠ると、後から認知していた子どもなどの想定外の相続人が発覚し、せっかくまとまった遺産分割協議が無効になるリスクがあります。
戸籍調査の結果、法定相続人の中に特殊な事情を抱えた方がいる場合は、通常の手続きとは異なる対応が求められます。
たとえば、相続人に未成年者がおり、その親も同時に相続人になるケースでは、互いの利益が衝突するため親が子の代理人になることができません。
この場合、民法第826条に基づき、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任してもらう必要があります。
重度の認知症などで判断能力が欠けている相続人がいる場合は成年後見人を、音信不通で行方がわからない相続人がいる場合は不在者財産管理人を選任しなければなりません。
これらの法的な代理人を立てずに無理やり遺産分割協議を進めても、法律上無効となるため十分にご注意ください。
財産の種類 |
調査方法の例 |
|---|---|
預貯金 |
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不動産 |
市区町村役場での名寄帳の取得(1通約300円) |
デジタル遺産 |
スマートフォンのアプリや受信メールの確認 |
相続人の特定と並行して、亡くなった方が遺したすべての財産を調査します。
重要なのは、プラスの財産だけでなく、住宅ローンや消費者金融からの借入、未払いの税金といったマイナスの財産も徹底的に調べることです。
借金の有無が不明な場合は、CICやJICC、KSCなどの信用情報機関に対して情報開示請求を行うことで確認できます。
判明した財産は、後のトラブルを防ぐために必ず財産目録として一覧表にまとめておきましょう。
主な必要書類 |
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|---|---|
費用の目安 |
|
財産調査の結果、プラスの財産よりも借金などのマイナス財産が明らかに多い場合は、相続放棄を検討すべきです。
相続放棄を行うと、その人は最初から相続人ではなかったことになり、借金を返済する義務から解放されます。
民法第915条の規定により、相続放棄や限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
もしこの3ヶ月の期限を過ぎてしまったり、期限前であっても故人の預貯金を勝手に使ってしまったりすると、単純承認をしたとみなされすべての借金を背負うことになるため厳重な注意が必要です。
手続きの種類によってペナルティの有無が異なります。
たとえば相続放棄の期限(3ヶ月)を過ぎると、原則として借金を含むすべての財産を引き継ぐことになります。
相続税の申告期限(10ヶ月)を過ぎると延滞税などが加算されるため、期限遅れに気づいた時点で速やかに税務署や専門家へご相談ください。
亡くなった方が自営業を営んでいたり、不動産収入があったりした場合は、準確定申告という手続きが必要です。
所得税法第125条により、準確定申告の期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内と厳格に定められています。
毎年2月〜3月に行う通常の確定申告とは期限のルールが異なるため、混同しないように気をつけてください。
申告先は、亡くなった方の死亡時の納税地(通常は最後の住所地)を管轄する税務署となります。
口座解約に必要な書類 |
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|---|
すべての財産と相続人が確定したら、誰がどの財産をどれくらい受け継ぐのかを話し合う遺産分割協議を行います。
相続人全員が合意に至ったら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、全員が実印を押印します。
協議が長引いて葬儀費用や当面の生活費に困った場合は、民法第909条の2で定められた預貯金の仮払い制度を利用すれば、ひとつの金融機関につき最大150万円まで単独で引き出すことが可能です。
遺産の総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、管轄の税務署へ相続税の申告と納税を行わなければなりません。
※金融機関によっては印鑑証明書の発行から3ヶ月〜6ヶ月以内という独自の有効期限を定めている場合があります。
遺産分割協議は、必ずしも全員が1カ所に集まって行う必要はありません。
電話や手紙、メール等で合意内容を形成し、郵送で遺産分割協議書を持ち回って署名・捺印することで成立させることが可能です。
手続きの負担が大きい場合は、代理人として弁護士に依頼することも有効な手段となります。
主な必要書類 |
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|---|---|
費用の目安 |
登録免許税として固定資産評価額の0.4% |
遺産分割協議書が完成したら、それに従って各財産の名義変更を行います。
特に注意が必要なのが、実家や土地などの不動産に対する相続登記(名義変更)です。
不動産登記法第76条の2の改正に伴い、2024年(令和6年)4月1日より相続登記が完全義務化されました。
不動産を取得したことを知った日から3年以内に法務局で登記の手続きを行わないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

ここからは、ココナラ法律相談の「おしえて!法律Q&A」に寄せられた、相続手続きに関する実際のお悩みと、弁護士による回答の概要をご紹介します。
ご自身の状況に近いケースを参考にしてみてください。なお、見通しは個別の事情によって変わり得ます。正確な見通しについては、弁護士にご相談ください。
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【質問】 いま相続放棄の手続きを進めているところです。故人が借りていた部屋について、大家から片付けと鍵の返却を求められています。手続きの受理前後で訴えられたりしないか、そもそも鍵を返す義務があるのかが分からず悩んでいます。 |
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【回答】 受理後の金銭請求は通常は認められにくいとされつつ、訴えるかどうかは相手方次第になります。鍵については、ほかに法定相続人がいればその方に渡すのが原則で、賃貸借契約がすでに終了している場合は大家へ返すのがよいです。片付けなどの行為が相続放棄に影響しないか気になる場合は、弁護士にご相談ください。 |
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【質問】 亡くなった父の遺産と、約600万円ある借金の整理を進めたいと思っています。預金の解約手続きの進め方や、遺品の扱い、借金の減額や一本化ができるのかどうかが分からず悩んでいます。 |
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【回答】 預金の解約には戸籍など金融機関が指定する書類が必要で、遺産が基礎控除の範囲内であれば相続税の申告は不要と説明されました。借金については時効の援用や任意整理で負担が軽くなる余地があり、経済的なメリット次第では相続放棄も選択肢になるとのことです。なお生命保険金は相続放棄をしても受け取れる場合があります。 |
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【質問】 生前に父の預金通帳を管理していた兄弟に、亡くなったあとの使途明細を何度も開示してほしいと求めているのですが、応じてもらえません。弁護士を通じて開示を求めることはできるのか知りたく、悩んでいます。 |
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【回答】 相談者自身も相続人であるため、銀行に対して取引履歴の開示を直接求められます。弁護士が間に入っての協議や、遺産分割調停の申立てを通じた開示請求も可能です。ただし金融機関の取引履歴の保存期間は通常10年程度とされるため、早めに動くことをおすすめします。 |
参考:父の預金通帳の使途明細、弁護士を通じて開示要求可能か?

相続手続きは専門的な知識が必要なだけでなく、集めるべき書類も膨大かつそれぞれに期限があります。
「ミスなく終わらせる自信がない」「親族間で意見がまとまらず揉めそうだ」と感じた場合は、弁護士にサポートを依頼することがおすすめです。
ここからは弁護士に相続手続きを依頼する3つの大きなメリットを詳しく解説します。
役所での大量の戸籍収集、各金融機関ごとに異なる書式での口座解約、法務局での複雑な登記手続きなど、相続ではあちこちの窓口に出向く必要があります。
弁護士に依頼すれば、こうした煩雑な事務手続きや書類収集の大部分を代理人として任せることができます。
税理士や司法書士など、他の士業の力が必要な場面でも、弁護士が中心となって連携してくれるため、ひとつの窓口とやり取りするだけで済むようになります。
司法書士や行政書士に手続きの一部を依頼することはできても、弁護士法第72条の規定により、あなたの代わりに他の相続人と法的な交渉ができるのは弁護士だけです。
弁護士が第三者として介入することで、法的な根拠に基づいた冷静な提案ができ、トラブルが泥沼化する前に円満な解決を図ることが可能になります。
万が一調停や裁判に発展した場合でも、そのまま代理人として戦ってくれるため心強い味方となります。
弁護士は、職務上認められた職務上請求という権限を行使し、全国どこでもスピーディーかつ正確に戸籍謄本を収集できます。
故人が意図的に財産を隠していたり、遠方にある不動産の全貌がわからなかったりするケースでも、弁護士会照会(弁護士法第23条の2)などを活用して、徹底的に情報を引き出すノウハウを持っています。
最初からプロの手で正確な調査を行っておけば、借金の期限を過ぎてしまったり、遺産分割をやり直さなければならなかったりする致命的なリスクを未然に防ぐことができます。

遺産相続の手続きは時間との戦いでありながら、一つひとつの工程で正確な法的知識が求められます。
少しでも不安を感じたなら、手遅れになる前に弁護士へ相談することが最善の選択です。
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