相続人の死後数年間遺産分割協議ができなかったために売却できなかった土地につき、誠実さで対応して相続人全員の信頼を得て円満な遺産分割協議を実現して、数億円で売却し、これを相続人間で分配した事例。
喜多 芳裕
弁護士
【ご相談内容】 駅近くに数百坪の土地があり、いくつもの不動産会社が購入を希望していましたが、相続人間の意思疎通が充分ではないため、所有者の死後数年間遺産分割協議ができなかったために売却できませんでした。
A、B、Cという三人の子がいたのですが、Bは再婚後死亡しており、その妻bは遠方に住んでいて他の兄弟と全く交流がなく、兄弟の一人が一度売却を持ちかけたのですが、特にお金は困っていないと言って取り合わず、Aはこの不動産の一部に家を建てて住んでいたところから売却には消極的であったため、そのままになっていたのです。
固定資産税はCが払っていましたが、このままでは固定資産税の負担のみがかかってきますので、私が数億円相当を相続財産を円満に相続人に分配しているということを聞いたCが、私のところに何とかならないだろうかと相談を持ちかけてきました。
私は大阪や奈良で数億円相当を相続財産を幾つも売却していますので、知り合いの不動産業者に見積もってもらったところ、マンションにもビジネスホテルに適していることから三億円くらいで売れるのではないかということでした。
私は二番目の子の妻bに私の今までの実績とこの不動産の売却計画を記載した詳細な手紙を出して面談を求めたところ、返事がありましたのでbのもとを訪れました。
「奈良から弁護士がやってくる。」ということで、Bの家にはBと親しいという不動産業者や司法書士、地元の商工会の役員などなど5人の男性が待ち受けていました。
彼らは、私がA、Cに依頼されて、bに不利な遺産分割を押し付けるのではないかと警戒していたのですが、私は、「不動産は売り時があって、今は高値でも買い手がつく可能性があるので、このときに売らなければ安くてしか売れなくなることもある。」といい、一時間程度今まで私が扱った事件の話をしました。
この人たちは最初は警戒していたのですが、私の話を聞くと、不動産業者がbに、「弁護士さんでこんなに不動産に詳しい人は見たことない。是非喜多先生に頼みなさい。」と言いました。
続いて地元の商工会の役員も「そうだ。今喜多先生に頼むのがいい。」と言い、5人全員が私に依頼するよう勧めたのです。
次の問題はAでした。
Aはこの不動産の一部に家を建てて住んでいたので、売ったらここを出て行かなければいけないので、このままがいいと言うのです。
私は、「ここには高額の固定資産税、都市計画税がかかっており、今までCが払っていたが、その3分の1はあなたが払わなければならない。遺産分割協議ができてこの土地を売れれば税金を払っても数千万円入ってくるので、それで代替地を取得して新しい家を建てたほうがいい。」と言い、幾つかのの代替地を示しました。
この土地には2棟の長屋があり、そこには8人の借家人が住んでいましたので。この8人の立ち退きも必要でした。
不動産は売り時があって、今は高価でも買い手がつく可能性があるので、このときに売らなければ安くてしか売れなくなりますので、代替物件を紹介して不動産業者に案内させて、A、b、Cを説得し、相場といわれる金額の 2倍程度の立退料を支払って、「このお金で海外旅行でも行きなさい。」と言って交渉から3カ月で明け渡しを実現しました。
Cの依頼から、遺産分割協議の成立、8人の借家人の明け渡しの実現まではは四ヶ月でした。
次に私が培ったネットワークを利用して買受業者を募集しました。
方法はせり上がり方式であり、 1週間先の日を締切日として買受希望価格をファックスで送ってもらい、締切日の翌日に買受希望者全員に最高買受希望価格を知らせて、この金額以上の価格で買受を希望する場合は一週間以内にファックスで送付するようにと伝えるのです。
この方法で買受価格をせり上げていったところ、いくつかの業者は脱落して行きました
駅の近くの広い土地でしたので大手のマンション建設業者も買受を希望していたのですが、4億円のところで、「もうこれ以上は社内の稟議が取れない。」と言って撤退したので す。
このようにして4億円を超えた三社に絞って入札を実施して、4億5000万円で売却することができました。
相続人全員の信頼を得て円満な遺産分割協議を実現して、相続財産を数億円で売却してこれを相続人間で分配し、借家人にも喜んでもらったのです。
私がした一つ一つのことは特別なことではなく誰でもできることだと思いますが、遺産分割協議のポイントは「誠実さ」であるとおもいます。
このようなことができたのは、私の「誠実さと誠意」を関係者全員が信じて頂けたからだと思っています。