自営業を営む被害者から治療終了後に依頼を受け、示談が成立した例
宮崎 正仁
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
前方の交差点が赤信号のため一時停車していたところ、加害車両が、上り勾配区間で何かの理由により後退してきて衝突した交通事故でした。
総治療期間は約7か月、実通院日数は約70日でしたが、うち整形外科への通院日数は約7日程度であり、残りはすべて整骨院での施術のための通院でした。
被害者は建設業の一人親方に従事していました。
【相談後】
ご本人が自営業者であることから、自営業者の休業損害が争点となり得ました。
ご本人に確認したところ、確定申告の収支状況につき正確に事業を反映している金額であるとのご回答がありました。そこで、確定申告書の収入や固定経費を基礎収入とし、これに基づく休業損害金の請求を行いました。
幸いにも、ご本人は入院することもなく、通院による治療で済んだ点など、治療実態や仕事における影響などを踏まえ、休業損害期間は、総治療期間全体ではなく、より現実的な実通院日数とすることとしました。
結果として、ご本人は、休業損害金として約100万円、通院慰謝料として約100万円、合わせて約200万円を受け取ることができました。
また、弁護士費用も、予定どおり弁護士費用特約からすべて賄うことができた。
【先生のコメント】
交通事故の被害者が給与所得者の場合には、勤務先に休業損害証明書を作成してもらえば、原則としてそれに基づく休業損害金が支払われることとなります。
被害者本人ではない、会社という第三者が証明書を作成するため、その証明書には相当程度の客観性が担保されます。
他方において、被害者が自営業者の場合には、このような客観性を担保できる証明書を作成し、相手損保会社に提出することは、通常難しいと言えます。
その上、給与所得者に比べ高額な休業損害金請求となることも多く、争いとなり、訴訟での解決となることも珍しくはありません。
自営業者の場合には、実務上において、実通院日数や総治療日数を休業損害期間とすることもよくあります。
しかし、むち打ち症で通院のみの治療実態しかないような場合に、総治療日数全体を休業損害期間と捉えることは、特段の事情でもない限り、現実的ではないでしょう。
そうすると、本件のように実通院日数が一つの目安(基本)とすることは、立証の側面からみても妥当な損害賠償金を獲得する上で有効と言える場合があります。
さらに、本件では、低減率を考慮することなく、示談成立に至りましたが、通院で丸一日仕事ができなかったのか否かという点も、休業損害金を請求する上では問題となり得ます。
例えば、通院のために半日は休業状態となったが、残り半日は自営業に従事できたという場合は、0.5を掛け合わせるなど、被害者が受け取れる休業損害金が減額されることがあります。