結婚式・イベント業|キャンセルはお客様都合?コロナによる結婚式キャンセルのトラブル対処(編集部投稿)

※ ウエディング業界関係者への取材を通して得た情報を編集部より投稿しております

◆ 背景
多くの結婚式関連の企業は、今回の新型コロナウイルスに適応した規約を整備していません。
(新型コロナウイルスのような「伝染病」についての要件を含んでおりません)
そのため、会場とお客様は現在の規約をもとに、お客様のご意志を尊重して判断することになります。

緊急事態宣言が発令されても、結婚式場は「対象外」となったため、お客様が希望すれば結婚式はできる。という状況にあります。

そのため、お客様は「決行」「延期」「キャンセル」のいずれかを選択することになります。
もし決行したとしても、招待客を少なくしたり、希望していた演出ができなくなったり、元々希望していた結婚式の内容とは異なる内容になっています。

多くのお客様が延期を選択していますが、その場合、会場側は期日を定めたうえで無償で日程変更を受け、招待状など実費が発生するものについては請求していることが多い傾向にあります。
決行、延期となった場合については話し合いのうえお客様もご納得されるのですが、キャンセルとなった場合にはこじれる傾向にあります。

そもそも、今回の新型コロナによる対応で会場に不信感を持ったという方と多いので、さらに揉めます。
揉める理由としては、キャンセルがお客様の都合によるものなのか。という点です。

◆質問
そこでお聞きしたいポイントは以下です。

① 新型コロナの感染拡大を心配してキャンセルすることは、お客様都合によるキャンセルなのでしょうか。

②新型コロナウイルスの影響でお客様が結婚式をキャンセルした場合、規約に準じたキャンセル料を請求しても、納得いかないと支払ってもらえない時はどのような対応をとればよいのでしょうか。

③キャンセル対応などにより不満を感じたお客様が会社やスタッフに対する誹謗中傷をSNSなどで書き込みをした場合、その書き込みに対する法的対処はできるのでしょうか。

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本投稿は、
・ココナラ法律相談編集部が質問文を投稿し、弁護士から一般的な回答を得ています
・コロナショック(事業者向け)に関する法律Q&Aのまとめに掲載されます

①について
裁判所の判断が出ているわけでもなく、確実なことは言えませんが、全国に緊急事態宣言が出ており、外出の自粛要請がされているので、それを「お客様都合」とまでは言えないように思います。
②について
おそらく、今回のような感染力の高いウイルス(しかも緊急事態宣言が出るようなもの)に関する規約は定められていないと思いますので、話し合いによって解決することになります。話し合いの中で、実費を支払ってもらう代わりにキャンセルを認めるという解決もあろうかと思います。規約に準じて請求した場合、消費者契約法との関係で無効になる可能性もあるので、慎重になる必要があります。どうしても損害をてん補して欲しいという場合には、法的措置をとらざるを得ませんが、どの程度の損害賠償額が見込まれるのかを慎重に見極めなければなりません(そのようなことをして評判が下がってしまうというリスクも込みで考える必要があります。)。
③について
書き込みの内容にもよりますが、損害賠償等の法的対処は可能です。

【①について】
民法上,自身の「責めに帰すべき事由」によって相手の債務の履行ができなくなった場合には、相手の請求を拒めないとされておりますので(民法536条2項),こうした条文に当たるかが問題となります。

まず形式的には,条文に当たる可能性は考えられます。
現在の各宣言や要請は,強制力のあるものではなく,震災等で対象施設が滅失してしまった場合と異なり,挙式等自体が物理的に不可能になったとまではいえないかと思われます。こうした中で,顧客の判断でキャンセルを申し出たとすれば,形式的には顧客側に帰責性があったといえる可能性は考えられます。

一方で,実質的に考えた場合,集会に供する施設等については,営業自粛を要請されているところ,結婚式場等の施設についても,解釈によっては集会に供する施設の1つとして,休止要請の対象と考える余地はあるかと思われます。
こうした解釈を採った場合,強制力はないまでも,事実上挙式等の実施が困難となる外部的要因があったとして,顧客の「責めに帰すべき事由」があるとまではいえず,結婚式場等からの請求が認められない可能性は考えられます。

このように,条文の解釈次第で判断が分かれうるため,安易に請求ができると考えるのは危険かと思われます。

なお,仮に全額の請求が不可能となっても,これまでに生じた費用や打合せ相当分の報酬の範囲であれば,中途終了時の委任事務への報酬請求や不当利得返還請求として,支払いを求められる可能性はあるかと思われます(民法648条3項、703条等)。

【②について】
請求に応じてもらえない場合,基本的には代理人を介した交渉や,法的手続きを取ることになります。
もっとも,上述したように,全額の請求は,必ずしも確実に認められる事案ではないと思われるため,法的手続きまでは行わず,協議によって適切な範囲での支払いに関する合意を目指す方が良いかと思われます。

【③について】
事実か否かにかかわらず,相手の社会的評価を損なうような投稿であれば,名誉毀損となり得ます。
こうした場合,プロバイダ等を通じて投稿の削除を求めたり,または,発信者自身の情報の開示を受けた上で,発進した当人に対する損害賠償請求等を行うことも可能です。

前原先生、青山先生

ご回答を頂き誠にありがとうございます。

①②については、満額請求は難しそうですね。一部についての額など解釈や状況によって異なりそうなので、契約状況や背景を整理した上で企業法務を取り扱う弁護士へ個別相談したほうが良さそうですね。

③については、他業種でもよくある通り、削除依頼や発信者情報の特定についてはネットの誹謗中傷や名誉毀損を取り扱う弁護士を探して問い合わせるのが良さそうですね。