遺品などの処分をしてしまった後に、多額の負債が明らかになったが、相続放棄が受理された事例
石川 雄太
弁護士
【ご相談内容】【相談前】
息子を亡くされたお母様からのご依頼でした。
依頼者は息子と疎遠で生活状況など把握しておりませんでしたが、大家から息子が亡くなった旨の連絡を受けて、死亡していることが判明いたしました。
その際、大家から、息子が利用していた部屋の整理を求められ、これに応じて遺品を処分していたところ、通帳に消費者金融の引き落とし履歴があったため負債があるかもしれないと、当職に相談に来られました。
通帳に100万円程度の貯金があったため、依頼者は、まずは息子の負債額がいくらなのか調査を希望しており、もし負債額が少額であれば相続するが、負債額が貯金額を上回っている場合には相続放棄することを希望していました。
もっとも、既に息子が亡くなられてから2ヵ月以上が経過していたため、急ぎ遺産調査を行う必要があり、また、遺品も既に処分しているため、相続放棄が認められるかどうかについて非常に心配していました。
【相談後】
無料法律相談後、当職が受任することとになり、まず最初に家庭裁判所に対して、相続放棄の申述期間を伸長する手続きを行いました。
これにより、無料法律相談の時点で残り1ヵ月を切っていた相続放棄までの期間を4ヵ月に引き延ばしました。
その後、負債額の調査を行ったところ、500万円以上の負債額があることが判明したため、相続放棄する方針となりました。
もっとも、既に遺品の一部を処分していたため、民法の原則では相続放棄が認められない場合にあたりました。
相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も放棄する手続ですので、当然、プラスの財産だけ隠れて受け取ることはできず、プラスの財産にあたる遺品を処分した場合には、原則相続放棄は認められません。
そこで、処分した遺品のリストや亡くなった直後の息子の部屋・遺品の様子などに関する証拠資料を揃え、これらの資料を基に相続放棄の申述書、及び本件が例外的に相続放棄が認められる場合であるとする、弁護士の意見書を作成いたしました。
そして、これらの資料を添えて家庭裁判所に提出し、相続放棄が認められるように裁判官に詳細な説明を行いました。
その結果、家庭裁判所は、本件につき相続放棄を認め、相談者は、息子の負債を引き継ぐことなく、安心して日常生活を送ることができるようになりました。
また、その後、アフターサービスとして、第二相続人にあたるご兄弟の相続放棄も行い、無事に相続放棄が認められたことで、家族全員が息子の負債を負うことなく解決することが出来ました。
【先生のコメント】
相続放棄の手続きは、申述期間の制限の他にも、遺産の処分禁止や債務額の調査など、個人で対応するには潜在的なリスクが多くある事案といえます。
今回の事例では、遺品の処分が問題であったため、処分した物品の内容や亡くなった直後の状況などから、プラスの財産の処分でないことを主張立証し、相続放棄の申述が無事に受理されることになりました。
また、相続放棄の申述期間は、伸長手続きにより、リスクなく期間を伸ばすことが可能で、仮に、申述期間を超えてしまっても、被相続人の死亡を「知った時」の判断を、個々のケースによっては引き延ばすことも可能です。
相続財産がプラスであるにもかかわらず、勘違いで相続放棄をしてしまう方もいらっしゃいます。
相続放棄を検討されている場合は、まず法律家にご相談ください。
自分一人では思いつかなかった解決方法も弁護士を入れることで新たな手段が見つかることもございますので、まずは、弁護士に相談することおススメいたします。