高額な慰謝料や財産分与を求められながら、長期分割での現実的な解決を獲得した事例
平山 諒
弁護士
【ご相談内容】【相手方の属性】
50代/主婦
【主な争点】
離婚、慰謝料
【弁護士の関与】
調停~訴訟
【事例概要】
同居時代の暴言などを根拠に高額の慰謝料や財産分与、養育費を求められたところ、当方には実際には預貯金などはなく、また離婚調停中に勤務時間や給与体系が変わったなか、相手と粘り強い交渉を行って毎月数万円ずつの分割払いでの離婚条件を勝ち取った事例
【解決までの期間】
1年
【解決のポイント】
ある日、突然妻が家を出ていって、そのすぐ後に婚姻費用や離婚を求める調停が起こされる・・・という、ある意味では典型的な離婚調停の案件としてお手伝いを開始しました。
しかし本件でやや特殊だったのは、何の前触れもなく本当に突然家を出て、そして同居時代の暴言などを「精神的DV」などと言われて、非常に高額の慰謝料を求められたという事例でした。
さらに具合の悪いことに、こちらの依頼者である夫は、これまで非常に高額の給与収入を得ていて、裁判所の定める婚姻費用の算定表によればひと月当たり20万円弱の高額の支払い義務が生じるというケースでした。
しかしながら、実は妻が家を出る前にマンションを買ってしまい、毎月高額のローン返済もありますし、なによりもそれだけの高収入を得ている見返りとして、週末は取引先への接待や職場の同僚・部下との交際費、そして資格試験の勉強のための塾代など、実際にはかなり高額の避けられない出費がかさんでいたという生活実態でした。
このあたりの、ローンや交際費などの事実上避けられない出費について、家裁の実務では、残念ながら、まったくと言っていいほど考慮してくれることはありません。
ローンも職業維持のための費用(専門的には職業費と言います)も(自分の身勝手な判断で出ていった)妻に対する扶養義務に優先するものではない、という血も涙もない冷徹な判断を下すのが裁判所です。
本件でもその結果ほとんど生活費や食費すら残らなくなり、実際には昼食代にも事欠くような状況まで追い詰められてしまいましたが、なぜ妻が家を出ていったのか、十分な話し合いも無いままで離婚を求められなければならないのか・・・感情的にもどうしても納得できないという思いも強くでてきて、最後の最後まで徹底的に戦うという選択を選んで、訴訟の中で慰謝料発生原因の立証がないこと、財産分与金としても証拠上そこまで高額なものは出てこないこと、そして婚姻費用や養育費については妻の求めるほど高額な支払いは実際問題不可能だし、現実に見合っていないことを粘り強く主張してきました。
最終的には、やや時間はかかってしまいましたが、なんとか毎月の支払いを数万円程度の低額に抑える内容で財産分与金や養育費の取り決めをでき、晴れて離婚成立を勝ち取りました。
さまざまな感情が交錯する一方で、同時に金銭問題も冷静に解決を目指さなければならないのが離婚訴訟の特徴です。
本件では当事務所弁護士が冷静は立場からアドバイスを行い、そして本人の思いも汲みながら粘り強い交渉を行った結果、最終的には満足できるレベルの高い離婚の内容を勝ち取ったというものになりました。
【養育費算定表について】
養育費や婚姻費用については、実務上、裁判所の定める算定表に従って、双方の収入や子供の年齢・数によって画一的に定められます。
近時は日弁連が「新しい算定表」を作成して公表していますが、今のところ、東京家裁、東京家裁立川支部、東京高裁、さいたま家裁川越支部など東京高裁管内で離婚問題を扱ってみました。
実務経験としては、なかなかこれが採用されるケースには当たったことはありません。
当面は、裁判所の従前の内容が通用し続けるものと踏んでいます(日弁連の公表したタイミングで裁判実務が大きく変わるとなれば、法的安定性から言えばそれはそれである意味問題ですが)。
さて、この算定表は職業費や諸々の生活上の状況などを踏まえたうえで作られているというのが建前となっており、これに加えて「ローンの支払いがある」とか「接待交際費が多くかかる」というような個別の事情は、ほとんど加味されません。
実際には、子供の病気治療費がかかるとか、発達障害などのために教育費が普通の子よりも高くかかるからというような特殊なケースで、ようやく1万円前後の増額という位が認められるかどうか、という感覚です。
その意味で、個別の事情は加味されないという点では、血も涙もないという印象を与えやすい運用であるといっても、叱られないと思います。ただこれは、婚姻費用や養育費という早急に解決しなければならないお金の問題を、スムーズに、そして公平に解決するという意味では、ある意味ではやむを得ないし理に適った考え方とも言えます。