少年の集団暴走、集団リンチ事件で一時的に観護措置を回避し、少年審判で保護観察処分を獲得した事例
池長 宏真
弁護士
【ご相談内容】【概要】
本件は少年事件。
少年は、同級生に誘われて、暴走族に加入しました。
当時、暴走族というよりは仲良しグループだったようですが、同級生の1人が暴力団関係者と知り合いで、暴走族の旗揚げを支援していたようです。
次第に集団は暴走行為を繰り返すようになったが、少年はそこまで乗り気ではなく、むしろ一度足抜けしたいと申し出ていました。
しかし、抜けるのであれば決闘しろ、などと言われて、諦め、しばらく暴走行為に参加していました。
ある日、別の暴走族とのシマ争いが勃発。
ある暴走族が、少年の参加していた暴走族の暴走エリアに被っているとのことで、トラブルになってしまったようです。
深夜、公園で両暴走族は対峙することになり、一度は話し合いの場が持たれました。
しかし話し合いは決裂してしまい、決闘が行われることになりました。
その際、こちらの暴走族の人数も多く、あちらの暴走族をほぼ一方的に金属バットやメリケンサックなどを用いてボコボコにしてしまい、骨折などかなりの重傷を負わせるという結果となりました。
救急車が呼ばれるなど大事になってしまい、関係者である少年の所属していた暴走族が少年を除き、全員逮捕されてしまいました。
少年は警察に呼出しを受け、親御さんが心配になり、ご相談に来られました。
【弁護士の対応】
まず、少年以外が逮捕・勾留されていたことから、これ以上口裏合わせをする危険性がないと考えられました。
少年は主体的に暴走行為に参加していたわけではなく、集団リンチ行為の主犯格、というわけでもありません。
学校にもきちんと通っており、親御さんも監督ができるような環境を整えることが可能とのこと。
そのため「逃亡し、又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由」も欠くものと考えられましたし、「やむを得ない場合でない」とも考えられましたので、万が一逮捕がなされたとしても勾留することがかなり困難になるのではないかと考えられました。
そこで、警察には、逮捕するのではなく、在宅で捜査してもらいたい、との要望書を送付。
その後紆余曲折はありましたが、在宅事件で進行することに。
しかし、検察官から家庭裁判所に送致される際、監護措置がとられることが想定されました。
そのため、裁判所にできる限り在宅での調査とされたい旨の申し入れを行うことにしました。
もっとも、裁判所は少年が本件犯行の主犯格ではないとはいえ、集団に関与していること、本件の被害者の被害状況が大きいことなどから、監護措置を取る予定と述べました。
ここで、なんとか一時的にでも監護措置による身柄拘束を回避できないか考えました。
少年は受験生ということもあり、大学の説明会があるため、帰宅させてもらいたい旨述べたところ、これが認められ一時帰宅に。
そのご監護措置をとると言われました。
その後、裁判所との約束の期日に少年とともに再度裁判所に出頭し、身柄拘束手続が行われ、監護措置が取られました。
監護措置後は、少年鑑別所でしか面会ができないため、少年審判まで何度も足を運び、今後について何度も話し合いました。
また、並行して被害者にも接触しましたが、一部の被害者には接触について断られてしまいました。
しかし、一部の被害者の親御さんには接触することができ、示談交渉の後、被害弁償ができることに。
さらに少年審判に向け、家庭裁判所の調査官と2度面談を試み、裁判官とも少年審判前に2度ほど面談を行い、少年の処遇につき調整をしました。
裁判官は当初厳しい見通しを述べており、少年院も十分にありうるとの見方を示していました。
一方、被害弁償を行ったうえで、1度目の調査官との調査で発覚した問題点について手当をしました。
そして、再度調査官面談に臨んだところ、調査官としても保護観察処分相当という意見を書いてもらえるということに。
少年審判では、裁判官の最終的な判断に、調査官の調査は大きな影響を与えるところ、この意見は大きなものとなると確信。
さらに、少年審判では親も同席。
何度も打ち合わせを行い、本件の問題点を共有しました。
2度目の少年審判直前の裁判官の意見もほぼ保護観察相当である旨の内諾を得られました。
そして少年審判に臨み、裁判官が事前に言っていたように保護観察処分に。
保護観察処分の理由は、本件主犯格ではないこと、一部の被害弁償を行うことができていること、少年の親の指導・監督に期待できるなど適切な環境調整ができていること、暴走族関係の友人とは関係を断ち切ることを本人が約束していることや本人が大きく反省していることなど更生の可能性が十分にあること、調査官意見も同様の意見であり、保護観察処分が相当との意見であり、当該意見が不適切とは認められず、これを尊重することが適切であり、保護観察処分にすることが相当であるとの結論となりました。