高校からの退学処分に納得出来ません。
私立高校3年生の息子が
学校内で起きた盗難事件(複数件)の犯行グループの一員だと言われ退学処分を言い渡されました。
息子はやっていないと主張しています。
学校側は学内調査を元に
「目撃情報がある」
「やっていなくても犯行を知って同じ空間にいたら共犯」
と言い、反論しても退学処分は覆らないそうです。このまま退学処分を受け入れるしかないのでしょうか?
弁護士に依頼して訴訟手続を行うことになりますね。
退学による不利益の大きさを考えると、学校の不十分な調査や理論で退学処分を行うことは許されないでしょうね。
退学処分というのは非常に重い処分ですので、
学校側が十分な根拠なく退学処分を言い渡したのであれば、
裁判手続の中で、退学処分の無効を主張する余地は十分あり得るかと存じます。
もっとも、ご子息が高校3年生であり、卒業時期まで半年もないという事情を踏まえると、
通常の裁判手続を行っている時間的余裕はないでしょうから、
まずは「仮処分」という緊急の手続の申立てを行い、
「仮」ではありますが復学を認めさせる必要があると思われます。
ただし、「仮処分」であってもおそらく実際に復学するまでは3か月以上を要するでしょうし、
「仮」の復学が実現したとして、ご子息は卒業まで肩身の狭い思いをしながら学校生活を送ることになってしまうでしょうから、
限られた時間で、受験期のご子息の精神面にも配慮した理想的な解決を目指すのはかなりハードルが高いようには思われます。
大学受験のことや、将来の就職活動のことも視野に入れるのであれば、
何としても「高校卒業」資格を確保することを最優先に考えるべきでしょうから、
それ以外の部分については妥協ことも覚悟しておいた方がよろしいかと存じます。
⑴ 私立高校の生徒の退学処分の有効性に関する裁判所の考え方
学校教育法11条を受けた学校教育法施行規則26条3項は、懲戒処分の中でも特に退学処分を行うことができる場合として、①性行不良で改善の見込がないと認められる者、②学力劣等で成業の見込がないと認められる者、③正当の理由がなくて出席常でない者、④学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者、の4つを限定列挙しています。このような限定は退学処分によって被る生徒の不利益の大きさを踏まえてのことです。
このような趣旨から、生徒に対し、退学処分を行うに当たっては、他の処分に比較して特に慎重な配慮を要するものとされており、特に被処分者が年齢的に心身の発育のバランスを欠きがちで人格形成の途上にある高校生である場合には、退学処分の選択は十分な教育的配慮の下に慎重になされることが要求されます(東京高裁平成4年3月19日判決)。
そして、当該行為の態様、結果の軽重、生徒本人の性格及び平素の行状、当該行為に対する学校側の教育的配慮の有無、懲戒処分の本人及び他の生徒に及ぼす訓戒的効果、当該行為を不問に付した場合の一般的影響等諸般の要素に照らし、当該生徒に改善の見込がなく、これを学外に排除することが社会通念からいって教育上やむを得ないとまでは認められない場合、当該退学処分は社会通念上合理性を欠く違法な処分(校長の裁量を逸脱した無効な処分)とされます。
ご投稿内容からしますと、事実調査の精度、目撃情報の信憑性、弁明の機会の程度、退学の影響の検討の程度等に疑義があり、処分も重過ぎるように思われます。
⑵ 早期復学を実現するための方法について
高校側と交渉を行う方法もありますが、学校側は一度決めた処分を生徒側との交渉のみでは覆さない可能性があります。その場合、裁判所に対する仮処分の申立てが考えられます。
申立てに理由があると認められれば裁判所によって仮処分命令が発せられることになります(早ければ申立てから1か月以内に仮処分命令を得られる場合もあります)。
仮処分の審理の過程で裁判所が学校側に生徒の復学を認めさせる方向での和解の勧試を行う場合もあり、復学を認めさせる内容の和解によって解決が図られることもあります。
いずれにしても、学校問題に取り組んでいる弁護士に直接相談なさってみることもご検討下さい。
匿名A様、匿名B様、清水様
ご丁寧に回答いただきありがとうございます。
とても参考になりました。
確かに残り半年もない事を考えると学校側と争っても時間的に難しいのかもしれません。
ただ、やっていない事を息子のせいにされた事に納得が行きません。
出来る事なら退学にならずに今の高校を卒業して欲しいと思っています。
成績や出席日数はなにも問題ないです。
学校側は複数の盗難事件(総額5万程)の犯行をしたとされている息子を含む3人(全員退学処分)で話し合い返金して下さいとの事でした。
息子以外の2人は犯行を認め、自分が盗った金額を返金するようですが息子はやっていないため払う必要がないと主張しています。
また、複数の盗難事件の犯人が息子達3人である根拠は他の生徒の証言のみで証拠となるものは何もないそうです。
(証言をした生徒と内容は一切教えてもらえませんでした)
補足ですが、息子も学校内でお金を取られたことがあります。翌日先生に伝えましたが調査はされませんでした。
なので息子は3人の他にも犯人が絶対にいて、その犯人がやった時間も自分達3人の犯行にされている可能性がある。と主張しています。
退学処分になる10月末までに他の学校に転入する事も考えながら、学校側に抗議していくつもりです。
今回のような問題に取り組んでいる弁護士事務所に相談したいのですが、お勧めの事務所や先生がありましたら教えて頂けると助かります。
まだ退学処分が下されていないのであれば、まずは、弁護士を通じて学校側に対し、処分を撤回するよう求めるとよろしいかと存じます。
(学校側も、弁護士が介入することで態度を軟化させる可能性があるため、うまくいけば裁判手続を経るまでもなく解決に至れるかもしれません。)