賃貸借家契約書の更新拒否と立ち退き料請求について。

2017年11月26日から「賃貸借契約書」を交わして2年おきに新家賃の1ヶ月分を支払って更新をして一軒家に老人の両親と一緒に3人住んでいます。管理会社の不動産から9月25日の午後に留守電のメッセージが残されていて「大家さんから電話連絡が本日あって来年3月から息子さんが今の場所に住むようにしたいとのことで、とりあえず早めにお伝えした方が良いと思ったのでメッセージ残しました。後日書面で書類を送ります。」と連絡が来ていました。色々調べたら、契約書のどこにも「定期賃貸契約」とは書いておらず契約書の表紙の面にも
「賃貸借契約書」と明記があります。

質問その1
本来ならば契約開始日の11月29日の6ヶ月前までに大家さんからは「更新拒否」の手紙か連絡をされるべきなのだと思いました。がこの認識に間違いはないでしょうか?

質問その2
また6ヶ月前までに「更新拒否」がなかったということは2023年11月29日からスタートする2年間の更新が現時点で自動的に確定しているということになりますか?

質問その3
大家さんは多分来年の3月に私達に退去してほしいとの事だから退去希望日の6ヶ月前に連絡をしているから問題がないと思っているのかも知れないのですが、この大家さんの認識は正しいのでしょうか?

質問その4
また私達は今年11月の更新料を支払った上で3月に言われるがままに退去する必要があるのでしょうか?契約書には「解約の申し入れ」という項目に大家が正当な事由で解約の申し入れをした後、6ヶ月を経過した時に本契約は終了すると明記されています。

大家さんが息子さんに家を使わせたいという内容は確かに正当理由となると思うのですが、ただ3月という時期は引っ越し代金も高く負担金が大きくなり、更にコロナ後で広めの一軒家の賃料はどこも値上がりをしていて同じような広さで同じような駅からの近さで同じよう家賃の場合を見つけることが難しく、両親も自宅で人工透析をしているので引っ越し準備をするのも生命を削るような大きな負担になります。

ですのでもしも大家さんの要望を伝えるタイミングが法律から反しているのであれば立ち退き料や引っ越し代金を請求したいと思いました。

質問その5
今回のような案件では
「立ち退き料や引っ越し代金の請求は可能ですか?」

不動産からもらっている賃貸借家契約書には全て大家さんに有効な内容で作られています。そして「立ち退き料等の請求禁止」という項目もありますがこちらは借家人にとって不利な場合は無効になると
借地借家法にあるとありましたが、

質問その6
今回の私達のような案件の場合も有効でしょうか?引っ越ししたくないタイミングですし、同じような物件はなかなか見つかりません。

質問その7
大家さん側に「ミス」があった場合は
どのような流れのアプローチをして問題解決をしていく必要、方法がありますか?

長くなってしまいましたが
何卒よろしくお願い申し上げます。

質問その1
→ あなたのご認識どおり、借地借家法第26条1項により、建物の賃貸借について期間の定めがある場合には、「当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。」とされています。

質問その2
→ 借地借家法第26条1項の要件がみたさ」ていないため、期間満了後も賃貸借契約は継続することになります。ただし、更新後の賃貸借契約の内容は、締結されている賃貸借契約の記載内容によって異なって来ます。契約書の自動更新条項に基づく更新の場合には、更新後の賃貸借契約の期間は原則として契約書に記載された期間となります。他方、法定更新の場合には、借地借家法第26条1項ただし書のとおり、期間の定めなしとなります(「従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。」)。
 ※どちらの更新となりそうかについては、賃貸借契約書を持参し、弁護士に直接確認してもらうのが望ましいでしょう。

質問その3
→ 大家側の認識は定かではありません。あなたのご指摘のとおり、借地借家法のルールを知らない可能性もありますし、賃借人側が任意に退去に応じる場合には問題がないため、ルールを知った上で退去を求める通知をして来たのかもしれません。

質問その4
→ 今年11月の更新料を支払ったという前提からすると、賃貸人との合意更新又は自動更新条項に基づく更新がなされたことが前提とされているものと思われます。
 この場合、賃貸人と合意した契約期間又は契約書に記載されている更新後の契約期間については契約が続くため、契約期間継続中、大家側(賃貸人側)からの一方的な解約は認められません。大家側は借地借家法第26条の更新拒絶のルールを守った通知を行う必要があります。
 他方、法定更新であった場合、更新後の賃貸借は期間の定めがないため、大家側は解約の申入れをすることが可能ですが、借地借家法第28条により、その解約の申入れには正当の事由が認められる必要があります。
 この正当な事由の有無は、「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して」判断されます。
 大家側には息子に住ませるという必要があるのかもしれませんが、賃借人側(あなたたちご家族側)にも、両親が自宅で人工透析をしている等の事情があり、継続居住の必要があるため、正当の事由があると認定されるためには、賃貸人からの立退料の支払いの申出(「建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出」)の有無及びその申出金額の妥当性が重要なポイントになると思われます。そのため、大家側の言われるがままに出て行く必要はないでしょう。

質問その5
→ 質問その4のとおり、賃貸借側(あなた側)としては、賃貸人側からの解約申入れは借地借家法の要件をみたしていないとの立場で対応して行くことが考えられます。
 大家側からの解約申入れの際、建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出」があった場合に、立退料次第では立退に応じる余地があるのであれば、適切な立退料の提示を求めて行くことが考えられます。大家側が立退料等の請求禁止の契約書の条項を盾にとるのであれば、更新拒絶や解約の正当事由をみたさない等と争って行くことが考えられます。

質問その6について
→ 質問その5の回答のとおりです。

質問その7
→ 基本的には、大家側の主張を鵜呑みにせず、借地借家法のルールに基づく対応をして行けばよいと思われます。
 ただ、契約書の自動更新条項に基づく更新か法定更新かにより、交渉後の契約内容が異なって来たり、借地借家法の正当事由がみたされるか否か、立退料の妥当性など、ご自身での判断に悩むこともあるかと思われます(ご自身で大家側と交渉して行くことが難しいとお感じになられることもあるでしょう)。
 その場合には、賃貸借問題に取り組んでいる弁護士に個別に問い合わせ、直接相談してみることもご検討下さい。