しまだ わたる
島田 度弁護士
きたあかり法律事務所
西11丁目駅
北海道札幌市中央区南1条西9丁目1-15 井門札幌S109ビル5階
インタビュー | 島田 度弁護士 きたあかり法律事務所
「生きた痕跡」を辿り、過労死遺族の無念を晴らす。離婚・親権など家庭内トラブルにも注力
社会に影響を与える弁護団事件や、遺族の無念計り知れない過労死事件、心理的負担の重い離婚問題など。
島田度(しまだわたる)弁護士は困っている人を救うため、数々の難事件に挑み続けてきました。
現在は札幌に、きたあかり法律事務所を構え、地域住民の頼れる専門家として手腕を発揮しています。
17年の弁護士人生を、無我夢中で駆け抜けてきたという島田弁護士。
穏やかな表情の裏には、歴戦の猛者としての貫禄も垣間見えます。
今回はそんな島田弁護士のキャリアや信念、今後の展望などを、お伺いしました。
島田度(しまだわたる)弁護士は困っている人を救うため、数々の難事件に挑み続けてきました。
現在は札幌に、きたあかり法律事務所を構え、地域住民の頼れる専門家として手腕を発揮しています。
17年の弁護士人生を、無我夢中で駆け抜けてきたという島田弁護士。
穏やかな表情の裏には、歴戦の猛者としての貫禄も垣間見えます。
今回はそんな島田弁護士のキャリアや信念、今後の展望などを、お伺いしました。
01 これまでのキャリア
弁護団事件、過労死事件など。世の理不尽と一心不乱に戦い続けた
――まずは先生が弁護士を目指したきっかけを教えてください。
高校生のときからミュージカルが大好きで、大学時代に自分でミュージカルの劇団を立ち上げて、演者として舞台に立ったり、脚本を書いたりしていました。将来は舞台に携わる仕事がしたいと考えたこともあったのですが、現実的に舞台で食べていくことは困難でした。
そんななか、法学部に所属していたので法律と演劇の両方に関われる仕事はないかと模索していたときに、「エンタテインメント・ロイヤー」という職業を知りました。
―ちょっと聞きなれない言葉です。
これは、音楽や映画などのエンタテインメントに関わる案件を専門的に扱う弁護士のことです。
「これなら面白そうだし、やってみたい」と思い、弁護士に興味を持ち司法試験に挑むことになりました。
ただ、弁護士を目指したきっかけこそエンタテイメント・ロイヤーでしたが、今はエンタテインメント関係とは全く異なる分野、過労死事件や家事事件、それに人権救済に取り組む弁護団事件等に注力しています。
―どうして関心を持つ分野が変わったのですか?
司法修習(司法試験を合格したあとの実務研修)で札幌に配属されたのですが、この札幌の地での経験・影響が大きかったと思います。
研修でお世話になった事務所が、いわゆるB型肝炎訴訟の最高裁判決を獲られた先生の事務所で、全国の患者さんを救済するための厚労省との交渉に何度も連れて行ってもらい、弁護士登録後は弁護団にも加入させていただきました。
また札幌で就職した法律事務所の所長は、札幌で過労死問題に取り組む弁護士の草分け的な存在で、困難な過労死事件との向き合い方など多くのことを学ばせていただきました。
このほか、札幌では原発事故被災者支援北海道弁護団、ブラック企業被害対策弁護団などの弁護団活動にも参加させてもらいました。
こうした経験を経て、社会的な弱者、被害者を救済するための活動が私の弁護士としての活動のメインとなっていきました。
――現場での経験の積み重ねから、そうした分野に取り組んでいくことになったわけですね。
でも、ミュージカルが大好きなのは今でも変わりありません。
私の最も好きなミュージカルの一つに「レ・ミゼラブル」がありますが、このミュージカルの有名なナンバー「民衆の歌」は、まるで大きな事件に挑む原告団・弁護団のためのテーマソングのようだとも感じます。
まさに「戦う者の歌が聴こえるか」です。
また、当事者の方の訴えを、裁判官の心に響くように練り上げて形にしていく作業は、舞台創りとどこか似ているところもあります。
――なるほど、ちゃんと共通点があるのですね。
そうした意味では、私がひたすら舞台にかまけていた時間も、現在のキャリアにちゃんと繋がっているのだな、と思えます。
そして弁護士キャリア10年の節目を迎えた頃、きたあかり法律事務所を開業し、現在に至ります。
高校生のときからミュージカルが大好きで、大学時代に自分でミュージカルの劇団を立ち上げて、演者として舞台に立ったり、脚本を書いたりしていました。将来は舞台に携わる仕事がしたいと考えたこともあったのですが、現実的に舞台で食べていくことは困難でした。
そんななか、法学部に所属していたので法律と演劇の両方に関われる仕事はないかと模索していたときに、「エンタテインメント・ロイヤー」という職業を知りました。
―ちょっと聞きなれない言葉です。
これは、音楽や映画などのエンタテインメントに関わる案件を専門的に扱う弁護士のことです。
「これなら面白そうだし、やってみたい」と思い、弁護士に興味を持ち司法試験に挑むことになりました。
ただ、弁護士を目指したきっかけこそエンタテイメント・ロイヤーでしたが、今はエンタテインメント関係とは全く異なる分野、過労死事件や家事事件、それに人権救済に取り組む弁護団事件等に注力しています。
―どうして関心を持つ分野が変わったのですか?
司法修習(司法試験を合格したあとの実務研修)で札幌に配属されたのですが、この札幌の地での経験・影響が大きかったと思います。
研修でお世話になった事務所が、いわゆるB型肝炎訴訟の最高裁判決を獲られた先生の事務所で、全国の患者さんを救済するための厚労省との交渉に何度も連れて行ってもらい、弁護士登録後は弁護団にも加入させていただきました。
また札幌で就職した法律事務所の所長は、札幌で過労死問題に取り組む弁護士の草分け的な存在で、困難な過労死事件との向き合い方など多くのことを学ばせていただきました。
このほか、札幌では原発事故被災者支援北海道弁護団、ブラック企業被害対策弁護団などの弁護団活動にも参加させてもらいました。
こうした経験を経て、社会的な弱者、被害者を救済するための活動が私の弁護士としての活動のメインとなっていきました。
――現場での経験の積み重ねから、そうした分野に取り組んでいくことになったわけですね。
でも、ミュージカルが大好きなのは今でも変わりありません。
私の最も好きなミュージカルの一つに「レ・ミゼラブル」がありますが、このミュージカルの有名なナンバー「民衆の歌」は、まるで大きな事件に挑む原告団・弁護団のためのテーマソングのようだとも感じます。
まさに「戦う者の歌が聴こえるか」です。
また、当事者の方の訴えを、裁判官の心に響くように練り上げて形にしていく作業は、舞台創りとどこか似ているところもあります。
――なるほど、ちゃんと共通点があるのですね。
そうした意味では、私がひたすら舞台にかまけていた時間も、現在のキャリアにちゃんと繋がっているのだな、と思えます。
そして弁護士キャリア10年の節目を迎えた頃、きたあかり法律事務所を開業し、現在に至ります。
02 注力分野
過労死や離婚事件など。一筋縄ではいかない、人生に深く関わるトラブルを解決に導く
――現在はどのような事件に注力されていますか?
特に力を入れているのは、労災事件、とりわけ過労死・過労自死事件です。
仕事というのは、生きる手段であると同時に、人とつながる場であり、生きがいでもあったりして、人生においてすごく大事なものだと思います。
そうした辛さも楽しさも含めて人生の多くを費やして懸命にとりくんできた仕事に命を奪われる。それが過労死です。
過労死で亡くなった被災労働者は、もう二度と、ご自身の想いを語ることはできません。その被災労働者が、何に悩み何を想っていたのか、本人に代わってその「生きた痕跡」をかき集めて形にするのが弁護士の重要な仕事だと思っています。
――過労死事件の事件処理にあたって心がけていることはありますか?
事件処理にあたっては、被災労働者の方のメールや報告書、LINE、携帯端末の検索履歴など、ありとあらゆる証拠を集めて精査します。
そうした作業の過程で、被災労働者の想い、悩み、ときにはうめき声や悲痛な叫びまで聴こえるように感じられるときがあります。
――過労死事件のご遺族に接するうえで大切にされていることはありますか?
過労死ご遺族の中には、「自分が励ましたことで、死に追い込んでしまったのではないか」と、自責の念を持たれる方もいらっしゃいます。
でも私は、どうかご自身を責めないでほしいと強く思います。
悪いのは過労死をさせてしまうような職場であって、決して、ご遺族やご本人の責任ではありません。
また、過労死問題の依頼者のほとんどが、職場に対し、「非を認めてほしい」「今後二度と人の命を奪うことがないよう、生まれ変わってほしい」と望まれます。
亡くなった方の命が、せめて無駄ではなかった、意味があったと思えるように、その後に続く命を失わせないようにしてほしいとおっしゃる方が多いです。
遺された方のそうした思いに可能な限り応えるべく、いつも全身全霊で取り組んでいます。
――家事事件についてはいかがでしょうか?
離婚事件等の家事事件にも注力しています。
夫婦というものは、あらゆる人間関係の中でも最も濃密で複雑で長期にわたる関係であり、離婚はこうした関係の膨大な積み重ねの果てに決断される、人生の最重要局面ともいえるでしょう。
であるにもかかわらず、そうした局面で、本来は世界で最も信頼できるはずのパートナーが事件の相手方になるわけですから、当事者の方の孤独感、負担感はとてつもないものがあります。
離婚事件のこうした特質を踏まえて、出来る限り依頼者を支え、依頼者の思いに寄り添いつつ、最善の結果を得られるように全力を尽くしてきたつもりです。
――家事事件で特に注力されているところはどんなところでしょうか。
これまで多くの事件に携わらせていただきましたが、特に近年の傾向として増えたと感じられるのが、お子さんをめぐる紛争です。
社会の変化なのでしょうか、最近は、父親であっても育児にしっかりかかわっている方も珍しくなくなりました。
そうしたお父さんから、離婚の話になっているけれども自分は親権者にはなれないのだろうか、というご相談をお受けすることもよくあります。
――まさに時代の流れですね。
とはいえ、まだ一般的には親権者は母親がなるものだという感覚も根強いようで、中には何件もの法律事務所で「父親は親権者にはなれない」と断言され、絶望しそうになりながら、最後に一縷の望みを託して私のところに来てくださった方もいました。
そうしたケースでご依頼をお受けし、最終的に父親側が親権を勝ち取ることができたケースが何件もあります。
――そうした成果を挙げるうえで大事なことはなんでしょうか。
実際のところ、親権を取得するというのは並大抵のことではありません。
親権者となるということは、お子さんの生活全般について最終責任者となるということですから、大げさに言えばご自身の生活の全てをお子さんのために捧げるほどの覚悟が必要となります。
そのために、ご自身の仕事上のキャリアや友人付き合い等、それまでの人生で大切にされてきたことを犠牲にしなければならないことも多々あるでしょう。
――それは、たしかに並大抵ではない覚悟が必要ですね。
依頼者には、そうした覚悟、実践が必要であることを、必ずしっかり説明することにしています。
そして、そうした覚悟をしっかりお持ちで実践もされるお父さんであれば全力でサポートしますが、そのような覚悟も実践も無いのにただ子どもを取られたくないからというだけで依頼を希望されても、それはお断りをしています。
親権争いの結果としてお子さんが不幸になるようなことだけは、絶対にあってはいけませんから。
――離婚事件については父親側の事件がご専門なのでしょうか。
いいえ、もちろん妻(母親)側からのご依頼も多数いただいていますよ。
既に申し上げたようにお子さんをめぐる困難な事例の経験が豊富ですので、こうした経験は妻(母親)側からのご依頼をいただく際にも非常に役立ちます。夫(父親)側からの子の引渡し、監護者指定の仮処分等の申立に対する対応実績も多くあります。
――それは頼もしいです。
ほかにも、DV案件、モラルハラスメント案件など、一筋縄ではいかない相手方当事者の案件も多く取り扱ってきました。
相手方について「とても弁が立つ」「理屈ではかなわない」「何を言っても言い負かされる」等と感じていらっしゃる方がいらしたら、そういう方こそぜひご相談に来ていただければと思います。
特に力を入れているのは、労災事件、とりわけ過労死・過労自死事件です。
仕事というのは、生きる手段であると同時に、人とつながる場であり、生きがいでもあったりして、人生においてすごく大事なものだと思います。
そうした辛さも楽しさも含めて人生の多くを費やして懸命にとりくんできた仕事に命を奪われる。それが過労死です。
過労死で亡くなった被災労働者は、もう二度と、ご自身の想いを語ることはできません。その被災労働者が、何に悩み何を想っていたのか、本人に代わってその「生きた痕跡」をかき集めて形にするのが弁護士の重要な仕事だと思っています。
――過労死事件の事件処理にあたって心がけていることはありますか?
事件処理にあたっては、被災労働者の方のメールや報告書、LINE、携帯端末の検索履歴など、ありとあらゆる証拠を集めて精査します。
そうした作業の過程で、被災労働者の想い、悩み、ときにはうめき声や悲痛な叫びまで聴こえるように感じられるときがあります。
――過労死事件のご遺族に接するうえで大切にされていることはありますか?
過労死ご遺族の中には、「自分が励ましたことで、死に追い込んでしまったのではないか」と、自責の念を持たれる方もいらっしゃいます。
でも私は、どうかご自身を責めないでほしいと強く思います。
悪いのは過労死をさせてしまうような職場であって、決して、ご遺族やご本人の責任ではありません。
また、過労死問題の依頼者のほとんどが、職場に対し、「非を認めてほしい」「今後二度と人の命を奪うことがないよう、生まれ変わってほしい」と望まれます。
亡くなった方の命が、せめて無駄ではなかった、意味があったと思えるように、その後に続く命を失わせないようにしてほしいとおっしゃる方が多いです。
遺された方のそうした思いに可能な限り応えるべく、いつも全身全霊で取り組んでいます。
――家事事件についてはいかがでしょうか?
離婚事件等の家事事件にも注力しています。
夫婦というものは、あらゆる人間関係の中でも最も濃密で複雑で長期にわたる関係であり、離婚はこうした関係の膨大な積み重ねの果てに決断される、人生の最重要局面ともいえるでしょう。
であるにもかかわらず、そうした局面で、本来は世界で最も信頼できるはずのパートナーが事件の相手方になるわけですから、当事者の方の孤独感、負担感はとてつもないものがあります。
離婚事件のこうした特質を踏まえて、出来る限り依頼者を支え、依頼者の思いに寄り添いつつ、最善の結果を得られるように全力を尽くしてきたつもりです。
――家事事件で特に注力されているところはどんなところでしょうか。
これまで多くの事件に携わらせていただきましたが、特に近年の傾向として増えたと感じられるのが、お子さんをめぐる紛争です。
社会の変化なのでしょうか、最近は、父親であっても育児にしっかりかかわっている方も珍しくなくなりました。
そうしたお父さんから、離婚の話になっているけれども自分は親権者にはなれないのだろうか、というご相談をお受けすることもよくあります。
――まさに時代の流れですね。
とはいえ、まだ一般的には親権者は母親がなるものだという感覚も根強いようで、中には何件もの法律事務所で「父親は親権者にはなれない」と断言され、絶望しそうになりながら、最後に一縷の望みを託して私のところに来てくださった方もいました。
そうしたケースでご依頼をお受けし、最終的に父親側が親権を勝ち取ることができたケースが何件もあります。
――そうした成果を挙げるうえで大事なことはなんでしょうか。
実際のところ、親権を取得するというのは並大抵のことではありません。
親権者となるということは、お子さんの生活全般について最終責任者となるということですから、大げさに言えばご自身の生活の全てをお子さんのために捧げるほどの覚悟が必要となります。
そのために、ご自身の仕事上のキャリアや友人付き合い等、それまでの人生で大切にされてきたことを犠牲にしなければならないことも多々あるでしょう。
――それは、たしかに並大抵ではない覚悟が必要ですね。
依頼者には、そうした覚悟、実践が必要であることを、必ずしっかり説明することにしています。
そして、そうした覚悟をしっかりお持ちで実践もされるお父さんであれば全力でサポートしますが、そのような覚悟も実践も無いのにただ子どもを取られたくないからというだけで依頼を希望されても、それはお断りをしています。
親権争いの結果としてお子さんが不幸になるようなことだけは、絶対にあってはいけませんから。
――離婚事件については父親側の事件がご専門なのでしょうか。
いいえ、もちろん妻(母親)側からのご依頼も多数いただいていますよ。
既に申し上げたようにお子さんをめぐる困難な事例の経験が豊富ですので、こうした経験は妻(母親)側からのご依頼をいただく際にも非常に役立ちます。夫(父親)側からの子の引渡し、監護者指定の仮処分等の申立に対する対応実績も多くあります。
――それは頼もしいです。
ほかにも、DV案件、モラルハラスメント案件など、一筋縄ではいかない相手方当事者の案件も多く取り扱ってきました。
相手方について「とても弁が立つ」「理屈ではかなわない」「何を言っても言い負かされる」等と感じていらっしゃる方がいらしたら、そういう方こそぜひご相談に来ていただければと思います。
03 解決事例
新人看護師の過労死事件。全身全霊を尽くし、遺族の無念を晴らす
――印象に残っている解決事例を教えてください。
医療機関での過労死事件を一つご紹介します。
亡くなったのは医療機関に勤める新人看護師の方で、私はそのお母様から、弁護団の一員としてご依頼を受けました。
――どのような事件だったのでしょうか?
依頼者の娘さんは、看護師になることが長年の夢でした。
しかし、晴れて看護師になった矢先に直面したのは、苛酷な長時間労働でした。
所定の休憩を取る暇もなく働き、更には持ち帰りの業務もあり、日々わずかな睡眠時間しか取れていなかったようです。
そんな毎日が続いた結果、最終的にうつ病を発症し、自死に至ってしまいました。
――心が痛む事件です。
新人看護師ということもあり、早く一人前にならなければという責任感もあったのでしょう。
こんな痛ましい事件は、二度と起こしてはいけません。
なんとしても真実を明かし、医療機関にはしかるべき対応をとってもらう必要があります。
弁護団を結成し、まずは労災申請に向けた証拠集めに取り掛かりました。
労働時間を確認するには、タイムカードをチェックするのが一般的です。
しかし本件の場合、タイムカードの労働時間では、過労死ラインとされている時間外労働時間には届きませんでした。
そこで、娘さんが自宅に持ち帰ったパソコンのログやパソコン内に保存されていた持ち帰り業務のファイル、さらにそのファイルの保存時刻などを精査し、過重労働があったという証拠を積み上げていきました。
――労災は、認定されたのでしょうか?
いいえ。残念ながら労基署段階での申請は不支給決定となりました。続く審査請求、再審査請求でも不支給処分は覆らなかったので、最終的には国を相手に不支給処分決定の取消を求める行政訴訟を起こしました。
その訴訟の中において更に新たな証拠の開示を引き出し、その結果、最終的には被告国のほうから「自庁取消(国自ら不支給決定処分を取り消すこと)」をすることになりました。これは極めて異例のことであり、ようやく娘さんの自死が労災だと認められることになったのです。
でも、これで終わりではありません。
次は、医療機関を相手取った損害賠償請求訴訟です。
――裁判はどのように進んだのですか?
当初医療機関側は、過重労働やうつ病の事実、労基署の調査結果に至るまで、ことごとく否定してきました。
これは絶対に負けるわけにはいかないと思いました。
訴訟では、看護師の仕事上のストレス、負担等についての学術論文を山ほど読み漁り、それらの中から選り抜いたものを裁判所に提出しました。
――最終的に、どうなったのでしょうか?
裁判は何年も続きましたが、結審間近の段階で裁判所から和解を勧告され、最終的に和解で解決することになりました。
和解の内容の全てを詳しくお話しすることはできませんが、依頼者にとっては十分に納得のいく内容のものでした。とりわけ、和解条項に「被告は、職員の労働時間の管理を徹底して、時間外労働の削減に努めるとともに、とりわけ新卒看護師が過重労働とならないようにするよう配慮する」との条項が盛り込まれたことは、この事件をしめくくるうえでは大きな意義があったと思います。
――納得のいく結果が出て良かったですね。
もっとも、過労死事件の全てに共通していることですが、解決したからといって遺族の傷が癒えるわけではありません。
どんなに高額な賠償金を受け取っても、亡くなった方は戻ってきません。
遺族は、想像を絶する苦しみや悲しみを抱えて、これからも生きていくことになるでしょう。
私ができることは、辛い出来事に区切りをつけ、少しでも前を向いて歩いていけるようサポートすることです。
本件も、依頼者の心がわずかでも晴れるようにという想いで、弁護団一同全身全霊で戦った事案でした。
医療機関での過労死事件を一つご紹介します。
亡くなったのは医療機関に勤める新人看護師の方で、私はそのお母様から、弁護団の一員としてご依頼を受けました。
――どのような事件だったのでしょうか?
依頼者の娘さんは、看護師になることが長年の夢でした。
しかし、晴れて看護師になった矢先に直面したのは、苛酷な長時間労働でした。
所定の休憩を取る暇もなく働き、更には持ち帰りの業務もあり、日々わずかな睡眠時間しか取れていなかったようです。
そんな毎日が続いた結果、最終的にうつ病を発症し、自死に至ってしまいました。
――心が痛む事件です。
新人看護師ということもあり、早く一人前にならなければという責任感もあったのでしょう。
こんな痛ましい事件は、二度と起こしてはいけません。
なんとしても真実を明かし、医療機関にはしかるべき対応をとってもらう必要があります。
弁護団を結成し、まずは労災申請に向けた証拠集めに取り掛かりました。
労働時間を確認するには、タイムカードをチェックするのが一般的です。
しかし本件の場合、タイムカードの労働時間では、過労死ラインとされている時間外労働時間には届きませんでした。
そこで、娘さんが自宅に持ち帰ったパソコンのログやパソコン内に保存されていた持ち帰り業務のファイル、さらにそのファイルの保存時刻などを精査し、過重労働があったという証拠を積み上げていきました。
――労災は、認定されたのでしょうか?
いいえ。残念ながら労基署段階での申請は不支給決定となりました。続く審査請求、再審査請求でも不支給処分は覆らなかったので、最終的には国を相手に不支給処分決定の取消を求める行政訴訟を起こしました。
その訴訟の中において更に新たな証拠の開示を引き出し、その結果、最終的には被告国のほうから「自庁取消(国自ら不支給決定処分を取り消すこと)」をすることになりました。これは極めて異例のことであり、ようやく娘さんの自死が労災だと認められることになったのです。
でも、これで終わりではありません。
次は、医療機関を相手取った損害賠償請求訴訟です。
――裁判はどのように進んだのですか?
当初医療機関側は、過重労働やうつ病の事実、労基署の調査結果に至るまで、ことごとく否定してきました。
これは絶対に負けるわけにはいかないと思いました。
訴訟では、看護師の仕事上のストレス、負担等についての学術論文を山ほど読み漁り、それらの中から選り抜いたものを裁判所に提出しました。
――最終的に、どうなったのでしょうか?
裁判は何年も続きましたが、結審間近の段階で裁判所から和解を勧告され、最終的に和解で解決することになりました。
和解の内容の全てを詳しくお話しすることはできませんが、依頼者にとっては十分に納得のいく内容のものでした。とりわけ、和解条項に「被告は、職員の労働時間の管理を徹底して、時間外労働の削減に努めるとともに、とりわけ新卒看護師が過重労働とならないようにするよう配慮する」との条項が盛り込まれたことは、この事件をしめくくるうえでは大きな意義があったと思います。
――納得のいく結果が出て良かったですね。
もっとも、過労死事件の全てに共通していることですが、解決したからといって遺族の傷が癒えるわけではありません。
どんなに高額な賠償金を受け取っても、亡くなった方は戻ってきません。
遺族は、想像を絶する苦しみや悲しみを抱えて、これからも生きていくことになるでしょう。
私ができることは、辛い出来事に区切りをつけ、少しでも前を向いて歩いていけるようサポートすることです。
本件も、依頼者の心がわずかでも晴れるようにという想いで、弁護団一同全身全霊で戦った事案でした。
04 弁護士としての信念
依頼者の希望を潰さない。想いに寄り添い、満身の力で困難に挑む
――先生の信念とは?
事件に頭まで浸かってとことん格闘すること、そして依頼者の心情にとことん寄り添うということです。
労働事件にしても離婚事件にしても、全ての事件について必ずしも依頼者の希望通りの結果を得られる保証があるわけではありません。
しかし、難しいからといって私が諦めてしまえば、事件はそこで終わってしまいます。
もちろんリスク説明はしっかりしますが、そのうえで、たとえ困難な案件であっても私ができることは全てやろうという想いで日々の仕事に取り組んでいます。
――先生の熱い姿勢がうかがえます。
困難な事件に立ち向かうことは、それこそが弁護士の仕事の醍醐味であったりもしますから。
そうはいっても、どうしても依頼者が望む結果が得られないであろう事件ももちろんあります。
そういう場合は、そのことをちゃんとお伝えしますが、そのうえで、別の発想からの解決策を探してみたり、あるいは事件そのものを違う視点からとらえてみて依頼者が今後の人生を送っていくうえで少しでも前向きになれるようなアドバイスをしたりなど、依頼者の気持ちが少しでも軽くなるように心がけています。
弁護士の言葉は、時にとても重たいものとなります。
私が発する言葉によっては、せっかく勇気を持って相談やご依頼をいただいた方を、更に絶望させたり傷つけてしまったりすることになりかねません。
そうしたことにならないように、依頼者の方と向き合う姿勢、言葉の選び方には、いつも細心の注意を払っているつもりです。
事件に頭まで浸かってとことん格闘すること、そして依頼者の心情にとことん寄り添うということです。
労働事件にしても離婚事件にしても、全ての事件について必ずしも依頼者の希望通りの結果を得られる保証があるわけではありません。
しかし、難しいからといって私が諦めてしまえば、事件はそこで終わってしまいます。
もちろんリスク説明はしっかりしますが、そのうえで、たとえ困難な案件であっても私ができることは全てやろうという想いで日々の仕事に取り組んでいます。
――先生の熱い姿勢がうかがえます。
困難な事件に立ち向かうことは、それこそが弁護士の仕事の醍醐味であったりもしますから。
そうはいっても、どうしても依頼者が望む結果が得られないであろう事件ももちろんあります。
そういう場合は、そのことをちゃんとお伝えしますが、そのうえで、別の発想からの解決策を探してみたり、あるいは事件そのものを違う視点からとらえてみて依頼者が今後の人生を送っていくうえで少しでも前向きになれるようなアドバイスをしたりなど、依頼者の気持ちが少しでも軽くなるように心がけています。
弁護士の言葉は、時にとても重たいものとなります。
私が発する言葉によっては、せっかく勇気を持って相談やご依頼をいただいた方を、更に絶望させたり傷つけてしまったりすることになりかねません。
そうしたことにならないように、依頼者の方と向き合う姿勢、言葉の選び方には、いつも細心の注意を払っているつもりです。
05 今後の展望、メッセージ
生涯、街弁。困っている人の人生に明かりを灯す弁護士でありたい
――先生の今後の展望を教えてください。
これからも生涯、札幌の街弁として、依頼者の人生で起きたトラブルに心血を注ぐ弁護士でありたいです。
職場も家庭も、人が生きていくうえで欠かせない場所です。
そんな「生きること」に直結する場所で起きるトラブルだからこそ、慎重に丁寧に、そして後悔のない結果を導き出せるよう、全力で対応させていただきます。
そして、やや偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、これからは、後輩の育成にも注力したいと思っています。
私も過去に、弁護団活動等を通じて、先輩弁護士から本当にさまざまなことを教わってきました。そのおかげで今の私があると思っています。
今度は私が、キャリアの中で培ってきたノウハウや知識をわずかでも後輩に継承する番だと思います。
――では、最後にメッセージをお願いします。
辛い、苦しい、悲しい。
そんな想いを抱えていませんか?
私は、困っている人や、悩んでいる人、苦しんでいる人の力になりたいと思いながら、無我夢中で一日一日を過ごしてきました。
何よりうれしいのは、そういった方々から、「お願いして良かった」という言葉を頂くことができたときです。
皆さんの晴れ晴れとした笑顔が、弁護士にとっては最高の元気の素であり、そのためにこそ、私たちは歯を食いしばって頑張ることができるのです。
何かに押し潰されそうになっている方、ぜひ、お一人で悩まずにご相談にいらしてください。
どうせなら、私と一緒に悩みましょう。
これからも生涯、札幌の街弁として、依頼者の人生で起きたトラブルに心血を注ぐ弁護士でありたいです。
職場も家庭も、人が生きていくうえで欠かせない場所です。
そんな「生きること」に直結する場所で起きるトラブルだからこそ、慎重に丁寧に、そして後悔のない結果を導き出せるよう、全力で対応させていただきます。
そして、やや偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、これからは、後輩の育成にも注力したいと思っています。
私も過去に、弁護団活動等を通じて、先輩弁護士から本当にさまざまなことを教わってきました。そのおかげで今の私があると思っています。
今度は私が、キャリアの中で培ってきたノウハウや知識をわずかでも後輩に継承する番だと思います。
――では、最後にメッセージをお願いします。
辛い、苦しい、悲しい。
そんな想いを抱えていませんか?
私は、困っている人や、悩んでいる人、苦しんでいる人の力になりたいと思いながら、無我夢中で一日一日を過ごしてきました。
何よりうれしいのは、そういった方々から、「お願いして良かった」という言葉を頂くことができたときです。
皆さんの晴れ晴れとした笑顔が、弁護士にとっては最高の元気の素であり、そのためにこそ、私たちは歯を食いしばって頑張ることができるのです。
何かに押し潰されそうになっている方、ぜひ、お一人で悩まずにご相談にいらしてください。
どうせなら、私と一緒に悩みましょう。