インタビュー | 倉林 伸明弁護士 ノースポイント法律事務所

ーー20年以上の会社員経験があるそうですね。異色のキャリアが目を引きます。

株式上場している2つの医療機器メーカーに勤め、キャリアを積んできました。

当時おもに担当していたのは、経営企画やサステナビリティ（環境や社会に配慮した経営を行い持続可能な開発を目標とする考え方）です。
売上高3,000億円の経営計画や、2040年に向けたカーボンニュートラル（温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、排出量を実質ゼロに抑えること）宣言の企画・立案にも携わりました。


ーーそこからなぜ弁護士になられたのですか？

会社の経営戦略や組織運営、内部統制に関わるなかで、契約法や会社法に興味が湧いてきたんです。

そこから独学で法律の勉強を始めました。
すると目から鱗（うろこ）の連続で、一気に法律の世界に引き込まれました。
事実とロジックで問題の核心に迫るプロセスに魅了されるとともに、法律は紛争解決の強力なツールであることを痛感したんです。


ーー大学は経済学部卒です。ゼロからの勉強は大変ではなかったですか？

会社に勤めながらでしたので、ロースクールに通う余裕もなく大変な思いもしました。
ただ、それ以上に好奇心がはるかに大きかったですね。

そして合格率が数％といわれる予備試験に合格し、念願を叶えました。
その後は当時勤めていた会社で法務部に配属され、契約審査などに従事しました。

ちなみに、それ以前にはオックスフォード大学経営大学院に入り、MBA（経営学修士）も取得したんです。
ファイナンスなどを含め、経営全般について深く学ぶためです。
世界各国の仲間と交流でき、人生経験としても視野が広がる貴重な時間でした。

ーーそして、神戸にご自身の事務所を開設されました。

神戸には約15年住んでおり、私にとって第2の故郷です。

なかでも一番のお気に入りは、「神戸布引ハーブ園」ですね。
ロープウェイで登った場所から見下ろす景色は絶景です。
そんな大好きな土地で、地域の方々のお役に立ちたかったんです。


ーーこれまでのキャリアを考えると、とくに企業法務で大いに強みを発揮できそうです。

おっしゃる通り、企業法務は私が最も得意とする領域です。
中小企業やスタートアップの法務全般、経営計画、事業承継などを手厚くサポートさせていただいています。

神戸市や兵庫県は今、スタートアップの育成に力を入れています。
私自身も、起業家が集まるイベントによく足を運んでいるんです。
先日も、それがきっかけで投資契約に関するご相談を受け、交渉方針についてアドバイスさせていただきました。

中小企業やスタートアップの多くは潤沢にリソースがあるわけではなく、とくに法務はどうしても手薄になりがちです。
ぜひ私のような外部の弁護士をうまく使っていただきたいですね。


ーー経営と法律、どちらも熟知しているのは大きいですね。

経営計画などに数多く携わるなかで、複雑な課題をさまざまな角度から分析し、ベストな戦略を策定するスキルを磨いてきました。
ビジネスで培った洞察力と戦略的思考は、法律問題の解決に大いに役立つはずです。

そういった強みを活かし、今は個人案件も重点的に扱っているんです。
なかでも最も力を入れているのが、遺産相続です。

裁判所に持ち込まれる相続事件は、遺産分割だけで年間1万3,000件を超えるといわれています。
その遺産分割や遺留分（法律上取得することが保障されている相続人の最低限の取り分）などの紛争対応はもちろん、遺言をはじめとする予防にも力を入れています。


ーートラブルが生じないように、事前にリスクの芽を摘むことが重要だと。

その方策のひとつとして近年、民事信託（家族信託）が注目を集めているのをご存知でしょうか。

民事信託とは、信頼できる家族などに財産管理を託す契約です。
相続が発生した後、誰にどのような方法や割合で財産を承継させるか、遺言よりも設計の自由度が高く、ご本人の意思を反映しやすいメリットなどがあります。

また、財産のスムーズな承継は中小企業にとっても重要な問題です。
代表者の相続に伴い、経営権や株式譲渡などをめぐってさまざまなトラブルが生じかねないからです。
円滑な事業承継にも、経営と法律に詳しい私なら力になれるはずです。

ーー相続のほかに、注視している問題などがあれば教えてください。

近年、インターネットやSNS上で詐欺被害が相次いでいることも非常に憂慮しています。

恋愛、占い、副業、さらに最近は著名人をかたった高額な投資詐欺も深刻です。
今は高齢者も当たり前のようにスマホを使う時代です。
弱みにつけ込み、言葉巧みにお金をだまし取る行為は絶対に許せません。


ーー実際、どんな相談があるんでしょう？

たとえば、以前あったのは占い詐欺に遭った方からのご相談でした。
不安をあおったりして、高額な鑑定料や占いサイトの利用料金を請求する詐欺です。

その依頼者さまも、支払い総額は数十万円に上っていたそうです。
徐々に疑問を抱くようになり、私のもとにご相談にいらっしゃったんです。


ーー依頼を受け、どんな手を打ったんですか？

支払いが電子マネーだったので、まずは電子マネーの発行会社にアプローチしてだました業者を特定しました。
それから相手方との返金交渉に臨んだ結果、75％のお金を返金してもらうことで和解できたんです。

こうした詐欺で全額返金されるのは稀で、1円たりとも返ってこないケースも少なくありません。
その点、7割以上を取り戻せたのは大きな成果といえます。


ーー依頼者も胸を撫で下ろしたでしょうね。

信じていたものに裏切られたショックと悔しさ、だまされてしまった自責の念。
複雑な思いを抱えておられたはずです。
私としては、「なんとか取り返してあげたい」という一心でしたね。
結果的に相当程度を取り返すことができ、とても喜んでいらっしゃいました。

この場でぜひお伝えしたいのは、うまい話には細心の注意を払ってほしいということ、もし少しでも疑問を感じたら早めに相談してほしいということです。
依頼者さまに代わって弁護士が交渉に乗り出すと、相手は急に身構え、態度を一変させるケースも少なくないからです。

被害に遭った方は、ご家族をはじめ周囲に知られたくないと心配される方が多いんです。
私は秘密も厳守し、どうにか少しでも回収できるように全力を注ぐことをお約束します。

ーー相談時に心がけていることも教えていただけますか？

時間をたっぷりを確保し、一人ひとりの悩みにじっくり耳を傾けること。
問題の背景や目的をひとつずつ丁寧にヒアリングし、可能な限り今後の見通しを正確にお伝えすること。
依頼者さまの不安を軽くするために、私が大切にしていることです。

当事務所は、私がひとりで切り盛りしています。
最初のご相談から最終解決まで、事務員を介さず私がつきっきりで寄り添います。
そこに安心していただける方も多く、ありがたいことに「話しやすい」「やさしい人で安心した」といった言葉をかけてくださいます。


ーーとにかく依頼者に安心してほしい。そんな熱い思いが伝わってきました。

事件処理の過程で難しい局面に立たされることもありますが、それを乗り越え、結果を出したときには依頼者さまが満面の笑みを浮かべ、飛び上がるように喜んでくださいます。
あの瞬間は格別です。

依頼者さまの助けになれそうなこと、社会の役に立てそうなことには、個人、企業案件を問わず今後もさまざまなかたちで果敢にチャレンジしていきたいですね。


方位磁石の「北」の方角を指す。
これは、事務所名の「ノースポイント」に込めた思いです。
迷える人をそばで支え、人生の道標になるーー。
そんな気概を胸に、弁護士をライフワークとして人のお役に立ちたいと考えています。