インタビュー | 新川 政広弁護士 新川法律事務所

ーー以前は民間企業に勤めていたそうですね。なぜ弁護士に転身されたんですか？

大手生命保険会社の法務部に約10年間、在籍していました。
契約書のチェックや事業の適法性審査、従業員の労働問題など、業務は多岐にわたりました。

弁護士には小さい頃から漠然と憧れていたんです。
弁護士だった叔父の話を聞いていたからです。
そしてある日、知人が闇金業者に追いつめられている姿を目にしたときのことです。
その瞬間に、「困っている人の助けになりたい」と覚悟を決めました。

とはいえ、当時の私はすでに結婚し、子どもがいました。
会社に勤めながら、育児と試験勉強に忙殺される日々。
家族の生活がかかっており、失敗できないプレッシャーも。
司法試験をクリアしたときは、正直ホッとしました。


ーー弁護士になってからは、どんなキャリアを歩んできたんですか？

全国展開する大手の法律事務所に入所しました。
刑事事件、労働問題、離婚、債務整理などさまざまな事件を経験し、その後独立して現事務所を立ち上げました。

現在は刑事事件を柱に据え、離婚や相続、労働、債務整理など幅広い事件を扱っています。

ーー日本の刑事司法では、起訴されると99.9％の確率で有罪判決になると言われます。無罪判決はどんな事件だったんですか？

覚醒剤所持の疑いで現行犯逮捕、起訴された事件でした。

警察から取り調べと所持品検査を受けた際に、覚醒剤があったとされたんです。
ただ、依頼者さまはそれは知人から預かっていたもので「覚醒剤とは知らなかった」「ほかの薬品だと思っていた」などと無実を主張しており、尿検査でも薬物反応はなかったんです。

おそらく、職場の上司に当たるその知人は自分で所持するのは危険だと判断し、依頼者さまに持たせていたのではないかと推測できました。


ーー裁判ではそのあたりを主張したんですか？

依頼者さまが覚醒剤を使用していない事実、他の薬品だと信じたことの合理性などを主張立証しました。
それが裁判官に認められ、一審で無罪判決が言い渡されました。
検察側からの控訴はなく、そのまま無罪が確定したかたちです。

依頼者さまもご家族も、終始一貫して無罪を主張されていました。
私自身も一安心しましたし、みなさんの喜んでいた姿は今でも忘れられませんね。


ーー刑事事件でほかによくある容疑や相談を教えてください。

不同意わいせつや痴漢、盗撮などの性犯罪がとても多いですね。
性犯罪をめぐっても、これまでに何度も被害者らと示談を成立させ、早期釈放や不起訴処分を手にしてきました。

たとえば以前、ある若い男性の代理人を任せていただいたときのことです。
酒に酔った状態で、夜中の駅で見かけた女性に無理やりキスをして強制わいせつ（当時）の容疑で逮捕されてしまったんです。

被害者は当時、まだ未成年の女の子でした。
ご本人が受けた心の傷はもちろん、親御さんの処罰感情も非常に強かったんです。


ーーそう聞くと、示談するのは難しく感じてしまいますが…。

それでも、最終的には示談をまとめて不起訴処分に。
その後、依頼者さまは社会復帰を果たすことができました。

とにかく誠意を尽くして、粘り強く交渉した結果です。
謝罪の意を込めた反省文をお渡しするとともに、親御さんが暮らす東北地方まで足を運びました。

私の場合、そもそも交渉に応じてすらもらえないようなケースを除けば、これまで示談交渉が破談することはあまりなかった気がしますね。


ーー示談の成功確率が高いと。

示談交渉時の弁護士のスタンスは、大きく2つにわかれると思います。
あくまで第三者として淡々と振る舞うか、自らも頭を下げて謝罪するか。
私は間違いなく、後者のタイプです。

依頼者さまの代わりに誠心誠意、謝罪を尽くします。
ときには「あなたに謝られても意味がない」と、突き放されるようなこともありますよ。
それでも、根気強く反省の気持ちをお伝えするんです。
それこそが、少しでも被害感情をやわらげ、示談の道が開けると考えているからです。

薬物や性犯罪に限らず、刑事弁護はスピードが勝負です。
初動が遅れると、身柄拘束の期間が延びたり、起訴され前科がついてしまう恐れがあるからです。
深夜や早朝の接見をはじめ、フットワーク軽く動けることも私の強みだと自負しています。

ーー離婚などほかの分野もお聞きします。印象に残っている事件などはありますか？

子の引き渡し、監護者指定をめぐって争った審判です。
父親側に立ち、一審敗訴を覆して勝訴したことがありました。

発端は、離婚前に奥さまが姉、弟の2人のお子さんを連れて家を出ていったことでした。
突然の事態に困惑した旦那さまが、その引き渡しと監護者指定を求めてご相談にいらっしゃったんです。


ーーただ、一審ではそれが認められなかったと。

親権などは母親側に有利に働くケースが多く、子どもも姉弟を引き離すのは望ましくないとされています。
一審では、それらが壁となって立ちはだかったんです。

ただ、二審の高裁ではその判断がひっくり返り、弟さんを連れ戻すことができました。
決め手は、弟さんの気持ちに光を当てたことです。

弟さんは、お父さまと一緒に暮らしたいと明確に意思表示していたんですよ。そのことを切実に訴えるインタビューの内容を証拠にし、裁判官に必死に訴えたんです。


ーー旦那さんはきっと胸を撫で下ろしたでしょうね。

お子さまへの愛情がとても深い方でしたからね。

私も同じく、2児を育てる父親です。
公園や動物園、温泉旅行と、一緒に過ごす休日は何ものにも代えがたい幸せな時間です。
そんな宝物のような我が子が、しかも2人も同時にいなくなるなんて悲劇ですよ。

依頼者さまの焦りや苦悩は、痛いほどよくわかりました。
あのときはとにかく、「なんとかしたい」という一心でしたね。


ーー子どもが関わる事案のほかには、どんな相談が多いですか？

財産をどう分けるか、そこで揉めるケースが多いですね。
最近増えている熟年離婚、お金持ちの旦那さまと離婚する場合など、とくに財産が高額な事案を数多く引き受けてきました。

同じように相続でも、不動産をはじめ多額の財産をどう分割するか。
私にはそうした事件解決のノウハウが豊富にあります。
お金の流れや財産のありかを徹底的に調べ、交渉や裁判で1円でも多く手にできるよう全力でサポートさせていただいています。

ほかにも、残業代請求をはじめ労働問題も積極的にお受けしていますし、債務整理についても気軽にご相談いただきたいですね。
急激な物価高に苦しんでいる方々の生活が今、とても心配なんです。

ーーこれだけは決して譲れない。そんな弁護士として大切にしていることは何でしょうか？

これまでお話してきたように、一つひとつの事件に決して妥協せず、依頼者さまのために全力を注ぎ込むことです。

とくに独立してからは、1件当たりに費やせる時間が格段に増えました。
たとえば、裁判所に提出する資料づくりもそうです。

離婚に絡む不法行為への慰謝料請求訴訟でのことです。
あのときは、依頼者さまに相手とのやりとりを録音してもらい、それをひたすら文字起こしして証拠資料として提出しました。
録音時間は30時間ほど、完成したのはA4約80枚にも上る膨大な資料でした。


ーーすさまじい執念ですね。

さすがに、毎回同じようなことはできませんけどね。
でも、常にそれくらいの気概で事件解決に当たっているということです。

依頼者さまからは、よく「親しみやすい」「距離が近い」などとおっしゃっていただけます。
長くサラリーマンとして働いていたことも影響しているかもしれません。

ぜひ安心してご相談いただけるとうれしいですね。
みなさまのトラブルをできるだけ早く解決し、幸せな日常を取り戻せるよう全力でお手伝いいたします。