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かねがえ けいじ
鐘ケ江 啓司弁護士
薬院法律事務所
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インタビュー | 鐘ケ江 啓司弁護士 薬院法律事務所

依頼者の人生を守るために、警察実務を探究する。逮捕前の対応から、事件後の暮らしまで

「逮捕や報道を避けるために、いま何ができるのか」。その切実な問いに応えるため、警察実務の研究を重ねてきたのが、薬院法律事務所の鐘ケ江啓司弁護士です。

警察官向け専門誌『警察公論』で実務教養小説「涼井警部補の事件簿」を連載し、捜査側と弁護側の双方の視点から、現場の判断過程を描いています。

その専門性を向ける先は、目の前の依頼者とご家族の暮らし。初めて刑事事件に直面した方を中心に、一件一件を丁寧に扱う理由と、これからの展望を伺いました。

01 弁護士としてのキャリア

難病をきっかけに進路を考え、恩師の言葉を支えに独立

――弁護士を目指したきっかけを教えてください。

子どものころから、公共の役に立つ仕事がしたいと考えていて、官僚や国連職員を目指していました。
ただ、高校2年生のときに「落葉状天疱瘡」という難病を発症し、その後の進路を考え直すことになりました。病気があっても、自分の専門性を身につけ、人の役に立てる仕事をしたい。そう考えて選んだのが、弁護士という道です。

法律の力で目の前の人を助けることも、社会の役に立つ仕事です。進む道は変わりましたが、もともとの思いは今の仕事につながっています。


――最初に勤めた事務所と、独立までの経緯を教えてください。

当時は弁護士の就職が厳しい時期で、特に難病がある私は就職活動に苦労しました。声をかけてくださったのが、司法修習で指導していただいた春山九州男先生です。2010年12月に春山法律事務所に入り、弁護士としてどう生きるかについて、多くのことを教えていただきました。
2年間の実務経験を経て、2012年12月に薬院法律事務所を開設しました。独立の際に春山先生からいただいた「君は学識で勝負しなさい」という言葉は、今でも心に残っています。文献を調べ、考え抜き、それを目の前の事件に生かす。現在の仕事にもつながる、大切な教えです。


――刑事事件に力を入れるようになったのは、なぜでしょうか。

最初から現在のような形を思い描いていたわけではありません。独立当初は、国選弁護や当番弁護など、目の前の仕事に一件ずつ真剣に取り組んでいました。
その中で、法律や証拠を深く調べ、具体的な対応を組み立てる刑事弁護は、自分に向いていると感じました。ただ、理論だけで答えが出るわけではありません。捜査が実際にどう進み、ご本人の生活に何が起きるのかまで考える必要があります。

「早く家に帰りたい」「仕事を続けたい」という願いを伺い、そのために何をすべきかを考える。そうした仕事を重ねるうちに、刑事弁護が私の活動の大きな柱になりました。

02 警察実務への理解と執筆活動

警察の判断過程を知り、依頼者のための行動につなげる

――刑事事件における先生の強みは何ですか。

警察が何を疑い、どの証拠を重視し、どの段階で、どのような判断をするのかを、実務に即して考えられることです。
例えば、逮捕を心配している方が知りたいのは、逮捕された後に違法性を争えるかということではありません。「逮捕を避けるために、いま何ができるか」です。法律上の要件を知るだけでなく、捜査機関が何を懸念しているのかを考え、説明すべき事情や資料を準備する必要があります。

そのため、一般の法律書に加え、警察官・検察官向けの文献や実務資料も継続的に収集してきました。情報公開請求で資料を取得することもあります。調べたことを実際の事件と照らし合わせ、逮捕や報道、運転免許への影響などについて、早い段階でできる働きかけを検討しています。

もちろん、警察の実務を理解することと、警察の判断に従うことは別です。必要な説明や交渉をする一方、証拠や捜査手続に問題があれば、弁護人として主張します。対立も協力も、それ自体が目的ではありません。立つ場所は、あくまで依頼者の側です。


――『警察公論』での連載について教えてください。

立花書房の編集部からお声がけいただき、2026年8月号から「涼井警部補の事件簿」を連載しています。『警察公論』は、現場の警察官に向けて、実務に役立つ知識や昇任試験対策などを扱う専門誌です。

本誌では捜査側、オンライン版のアナザーサイドでは弁護人側から、同じ事件を描いています。単に事件の結末を示すのではなく、それぞれの立場の人が、何を聞き、どの資料を調べ、なぜその対応を選ぶのかという判断の過程を、小説の形で伝える連載です。

主な読者は、実際に現場で仕事をしている警察官です。立場により違って見える事件の姿を描くことで、視野を広げるきっかけになればと願っています。そして、登場人物が迷いながらも真摯に仕事を進める姿を通じて、法的な知識だけでなく、事件と人との向き合い方も伝えていきたいと思っています。

03 仕事に対する信念

「軽い事件」であっても、その人の人生への影響は軽くない

――刑事弁護で、いちばん大切にしていることは何でしょうか。

「依頼者が本当に守りたいものは何か」「そのために、いま何をすべきか」を考えることです。無罪判決を得ることや、違法な捜査を争うことは重要です。ただ、それだけで依頼者にとって十分な解決になったとは限りません。

例えば、裁判で争う前の段階で不起訴にできる可能性はないか。逮捕される前に相談を受けたのであれば、身柄を拘束せずに捜査を進めてもらえないか。後から無罪判決を得たとしても、その間に失った仕事や、ご家族との生活が元に戻るとは限りません。

もちろん、早く終わらせるために、事実と違うことを認めてもらうわけではありません。争うべき点は争いながら、ご本人とご家族の負担を少しでも減らす。その両方を考えます。刑事手続の結果だけでなく、その後も続く人生まで見据えて仕事をしたいのです。


――初めて刑事事件に直面した方を中心に受任しているのは、なぜですか。

自分が責任を持って対応できる件数には限りがあります。その中で、初めて刑事事件の当事者となり、これまでの生活を失うのではないかと不安を抱えている方を、丁寧に支えたいと考えています。

刑事事件の中では比較的軽いとされる事件でも、その人にとっては、仕事や家庭の将来を左右する重大な出来事です。ありふれた事件だからといって、その人の人生までありふれたものとして扱ってよいわけではありません。
被害が生じた事件では、被害回復や再発防止にも向き合う必要があります。事件をきっかけに生活が崩れてしまうのではなく、立て直していけるよう支えたい。そのためにも、受任する範囲を定め、一件一件に時間をかけています。

受任方針として、反社会的勢力に関する事件、DV事件、ストーカー事件は受けないなど、対応しない事件類型を明示しています。なお、前科・前歴のある方からのご相談は原則としてお受けしていませんが、交通事故・交通違反、万引き、薬物の自己使用・単純所持に関する前科・前歴は、この制限の対象外としています。

04 今後の展望

福岡を基盤に東京へ。専門性を持ち寄り、支えられる人を増やす

――東京への事務所展開について教えてください。

在宅事件については、全国からのご相談・ご依頼に対応しています。今後は福岡の拠点を維持しながら、東京の神保町に支店を設けることを考えています。

自分一人でできることには限界があります。私の警察実務への理解と、他の弁護士が持つ得意分野を組み合わせれば、依頼者のためにできることを広げられるはずです。東京にも拠点を持ち、そうした連携や、研究・執筆の活動をさらに深めていきたいと考えています。
ただ、事務所を大きくすること自体が目的ではありません。一人ひとりへの丁寧な対応を維持しながら、支えられる人を増やす。そのための体制をつくっていきたいですね。


――相談を迷っている方に、メッセージをお願いします。

「まだ逮捕されていないから」「何を相談すればよいか分からないから」と、一人で抱え込む必要はありません。警察から呼び出された段階など、早めに状況を整理することで、検討できる対応もあります。

結果をお約束することはできませんが、お話を伺い、分かっていること、まだ分からないこと、いま対応すべきことを整理します。不安をあおるのではなく、見通しと判断の理由をお伝えし、ご本人が何を守りたいのかを一緒に考えます。

在宅事件はオンライン相談を活用して全国に対応し、逮捕・勾留中の事件は現在、福岡県内に限ってお受けしています。
受任条件や対応可能な日程を確認しますので、まずは現在の状況をお知らせください。
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