報道番組で「書類送検」と耳にする機会は多いのではないでしょうか。
実は、書類送検は法律用語ではなく、民間で使用されている造語です。
逮捕とは違う概念であり、もし書類送検をされた際には適切な対応が重要になります。
この記事を読んで、事前に書類送検に関する正しい知識を身につけていれば、万一の事態にも冷静に対処できるでしょう。
▼この記事でわかること
▼こんな方におすすめ

前提として、「書類送検」はニュース番組などの報道で用いられる民間用語であり、法律や制度上の名称ではありません。
書類送検とは、警察官が犯罪の疑いがある「被疑者」の身柄を拘束せず、事件の捜査資料のみ検察官へ送る手続きを指します。
刑事訴訟法第246条により、警察官が事件を捜査した際は検察官へ捜査資料を送致するように定められています。
『司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。』
(e-Gov:刑事訴訟第246条より引用)
上記の手続きのうち、「被疑者の身柄を拘束していない」場合に限って民間では書類送検と呼ばれています。
したがって、書類送検されただけでは前科はつきません。

書類送検と混同されやすい言葉に「逮捕」があります。
ここでは、書類送検と逮捕の違いについて解説していきます。
「逮捕」とは、警察官などの捜査機関が被疑者の身体を拘束する強制的な処分です。
被疑者は警察署にある留置場に拘束され、捜査機関による取り調べを受けるよう求められます。
逮捕は身体の自由を制限する強力な手続きであるため、刑事訴訟法で明確にルールが規定されています。
一方の書類送検は民間用語であるため、法律上の定めはありません。
「身体拘束の有無」も、逮捕と書類送検の違いです。
書類送検は、被疑者の身柄を拘束せずに捜査資料のみ検察官へと送ります。
対する逮捕は被疑者の身柄を拘束し、逮捕後に捜査資料を検察官へと送致する仕組みです。
つまり、逮捕後は書類送検と同じ手続きをするわけですが、捜査資料とともに被疑者の身柄も検察官へと引き渡します。
そのため、逮捕後の手続きは書類送検とは言われません。
なお、逮捕後に釈放や微罪処分となれば検察官へ事件は送致されず、前科はつきません。
逮捕は強力な処分であるため、警察官はむやみに被疑者を逮捕できるわけではありません。
警察官が被疑者を逮捕する際は以下2つの要件を満たし、「逮捕状」を発行する必要があります。
つまり、被疑者が逃亡や証拠隠滅をするリスクが低い場合、逮捕されずに書類送検のみで充分と判断される可能性があります。
注意点として、上記はあくまで逮捕状が必要な「通常逮捕」における要件です。
「現行犯逮捕」や「緊急逮捕」は逮捕状が不要なため、書類送検の判断外となります。
書類送検で済んだからといって、必ずしも逮捕されないわけではありません。
書類送検された後、検察官は被疑者を起訴または不起訴にするかを決定します。
起訴された場合でも、逮捕せずに行う「在宅起訴」であれば身体拘束をされず自宅で過ごせます。
しかし、こうした処分の決定までに被疑者の逃亡や証拠隠滅といったリスクが上がれば、逮捕される危険性が高まります。
また、余罪が発覚した場合も、書類送検後に逮捕される可能性があります。

書類送検される場合、前提として「在宅事件」として扱われます。
在宅事件とは、被疑者を逮捕せずに捜査や裁判を進める刑事事件を指します。
書類送検が適用される事件のように、比較的軽微な犯罪に用いられることが一般的です。
ここでは、書類送検される在宅事件の流れを見ていきましょう。
在宅事件において、警察官は「在宅捜査」を実施します。
在宅捜査とは、被疑者を逮捕せずに行う取り調べや捜査です。
被疑者は逮捕されないため、通勤や通学といった日常生活を送る中で警察官の在宅捜査を受けます。
警察は被疑者に出頭要請を行い、警察署での取り調べに応じるよう求めます。
出頭要請に応じるかは任意ですが、頑なに拒否すると逃亡や証拠隠滅の恐れが高いと判断されかねません。
警察官の心象も損ねて逮捕されるリスクが上がるため、意味もなく拒否することは避けましょう。
在宅捜査が一段落すると、警察官は書類送検を行います。
警察官から検察官へ捜査資料が送られ、事件が引き継がれる仕組みです。
次に、検察官は被疑者への出頭要請などの追加の在宅捜査を進めます。
警察官の在宅捜査と同様に出頭の義務はないものの、拒否すれば書類送検後であっても逮捕されやすくなるでしょう。
検察官は捜査資料や在宅捜査の結果から、被疑者の起訴または不起訴を判断します。
不起訴となれば、被疑者に前科はつきません。
なお、被疑者が逮捕される身柄事件と比べ、在宅事件の起訴・不起訴の判断にかかる期間は長い傾向があります。
身柄事件は、逮捕・勾留を含めて最大23日間のうちに起訴・不起訴を決定しなくてはいけませんが、在宅事件は期間の定めがありません。
必要な捜査が終了するまで処遇が決まらないため、被疑者は不安を抱えながら長期間過ごさなくてはいけない場合があります。
起訴されたとしても、ただちに前科がつくわけではありません。
前科の有無は、刑事裁判の判決によって決まります。
有罪判決が確定した場合のみ、前科がつきます。
被疑者は起訴されると名称が「被告人」へと変わり、刑事裁判を受けます。
通常の起訴であれば、被告人は裁判所へ出廷して刑事裁判を進めます。
一方、「略式起訴」になると、裁判の手続きは書面で完結するため出廷する必要がありません。
略式起訴は、罰金刑などの比較的軽微な犯罪に適用されます。
なお、「在宅起訴」という表現もありますが、在宅起訴=略式起訴ではありません。
在宅起訴は「在宅事件を起訴すること」であり、通常起訴と略式起訴のどちらも含まれます。
刑事裁判で有罪判決が確定した場合、執行猶予とならない限り刑罰が執行されます。
刑罰には、拘禁刑、罰金、拘留、科料といった種類があります。
刑罰の重さにかかわらず有罪になれば必ず前科がつくため、書類送検後の逮捕・起訴はできる限り避けたいところです。

万一、書類送検をされた場合は弁護士への早期相談が大切です。
弁護士へ相談することで、書類送検後の逮捕や起訴を避けやすくなります。
書類送検をされても日常生活は送れるため、弁護士とともに次の3つの対策に取り組みましょう。
被害者がいる事件であれば、できる限り早く被害者との示談を成立させましょう。
示談書に「加害者の減刑を望む」といった文言を記載してもらえれば、不起訴になる可能性が高まります。
ただし、多くの被害者は被疑者との直接交渉を望みません。
無理に示談を迫れば、かえって処罰感情を高めてしまうおそれがあります。
弁護士が被疑者の代わりに接することで、被害者の心情に寄り添いながら建設的な交渉を進められます。
弁護士に依頼すれば、在宅捜査の長期化を防ぎやすくなります。
書類送検後、検察官による在宅捜査が長期化するケースはめずらしくありません。
在宅捜査に期限はないため、犯罪の公訴時効を迎えるまで「逮捕・起訴されたらどうしよう」と怯えながら生活しなくてはいけないおそれがあります。
弁護士に相談していれば、捜査機関に対して逮捕や起訴の必要性がない点を主張してもらえます。
事件を早期解決できれば、逮捕・起訴の不安に悩まされずに日常生活を送れるでしょう。
万一の起訴に備えて、あらかじめ弁護士と起訴後の解決方針を決めておきましょう。
弁護士に依頼しても、100%の確率で起訴を避けられるわけではありません。
事前に方針を決定していれば、慌てることなく刑事裁判を進められます。
無罪を主張するのであれば、無罪を裏付ける証拠集めも任せられます。
もしくは執行猶予付き判決や、罰金刑といった比較的軽い判決を目指すことも可能です。
軽微な判決を目指す場合は、情状酌量を求める方向で最適なアドバイスをもらえます。
自分一人で的確な対応方針を練ることは難しいため、法律のプロである弁護士への相談がおすすめです。

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書類送検とは、被疑者の身柄を拘束せず、捜査資料のみ検察官へ送る手続きです。
被疑者は逮捕されないため、書類送検されたとしても通常通りの生活を過ごせます。
とはいえ、書類送検後に起訴されれば、前科がつくかもしれません。
前科を避けるためには、書類送検だからといって甘く考えずに弁護士へ相談しましょう。
弁護士が被害者との示談や捜査機関への働きかけを行うことで、逮捕や起訴をされづらくなります。